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食雑記

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日々の食卓、食卓での会話、食材やレストラン、食に関する本や映画、イベントなど、食にまつわることだけ書く日記のような「食雑記」。節気毎に更新。
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記事一覧

完熟トマティーヨの衝撃

8月頭に蓼科で、トマティーヨという野菜に出会った。メキシコ原産のトマティーヨは、トマトの小さいの、みたいな意味だと思うが、実は食用ほおずきの一種らしい。 直売所のワゴンには、蓼科のレストランによる、トマティーヨについてのポップがあって、そこには未熟だと酸味が豊かで、完熟になると甘くなり、状態にあわせていろいろな料理に使っているとあった。 買ってきてすぐは、確かに酸味が強くて、柑橘のかわりにサラダにいれたり、セビーチェのように、生魚とあわせたりが、直売所のポップのメニューを参

乳製品との距離感

関西に来て、北海道で生まれ育った私の乳製品との距離感は、本州、特に関西においてはかなり特異なのではないかと思うようになった。牛乳は学校給食に必須のものだし、食材へのなじみという意味では、日本全国変わらないはずだ。でもやっぱり違うな、というのが、関西に移住して4年近くなって、確信に変わってきた。 きっかけは何だったか。二日酔いの日の朝食だったか。なぜだかとても牛乳を飲みたくなって、小さい頃、母がよくつくっていたミルクがゆ(雑炊)のことを思い出した。その時、関西の家庭で朝食にミ

ザリガニ、赤紫蘇、クミンー「至福のレストラン 三つ星トロワグロ」

フレデリック・ワイズマンの新作、「至福のレストラン 三つ星トロワグロ」を観た。4時間の長編。「公共図書館」もそれくらいだったか。 トロワグロは、フランスの老舗三つ星レストラン。デパートの食品フロアの店舗を通して、特に首都圏の多くの日本人にとって、初めて聞くフランスの星付きレストランの名前のひとつだったはず。その後、ハイアットリージェンシーにレストランができたが、私は行く機会がないまま、閉店してしまった。 こういうドキュメンタリー、しかもワイズマンのような、なにげない会話が

何度目かわからない、お好み焼き考

お好み焼きはだんだん好きになってきた。ただ、いまだ、お好み焼き定食には抵抗がある。 お好み焼き自体の理由ではない。お好み焼きは一品料理で主食と主菜を兼ねている料理という認識なので、そこにさらに主食がくるのは受け入れられない。ラーメン定食(ラーメンとチャーハン)、そば定食(そばと五目ご飯とかいなり寿司)も同じだ。 昨日の夕飯、お好み焼きにしようとなった。私は今、食事コントロールをしていて、たんぱく質をきちんと摂ることは、常に課題だ。夕食がお好み焼きでは、なかなか必要量までい

赤い万願寺唐辛子の味

食べたことがないものを食べるのが好きだ。 先日、スマイル阪神で買ってきたのは、真っ赤になった万願寺唐辛子だ。ラベルには、「完熟、甘い!」と書いてあった。完熟ということはつまり、種ができあがるということだ。完熟のピーマンや甘唐の、あの種が口の中で主張しまくる感触を思い出して、一瞬躊躇したけれど、真っ赤な万願寺唐辛子を食べてみたい、という欲求が優った。 初めて食べるものは、できるだけそのものの味がわかるように料理する。唐辛子系といえば、フライパンでの蒸し焼きだ。オリーブオイル

オクラは花の香り

オクラに花のような香りがある。 気づいたのは、昨日の昼食につくった味噌汁だった。親子丼に合わせる、オクラと豆腐のお味噌汁。 いつもなら、小口切りにするところを、船のように浮かべたくて、縦切りにしてみた。豆腐は小さめの角切り。味噌は、最近買った三田の黒大豆の味噌。大豆の粒が残っている田舎味噌で、ふつうに溶いただけでは、完全に溶けきらないから、汁自体はあっさりしている。 オクラを口に入れて、噛んだ瞬間、ふっと香気が鼻に抜ける。気のせいかと思うくらいの微かなものだけれど、味噌

冬至|2023.12.22-2024.1.5

12月23日(土) 丸鶏のロースト、ラムのビリヤニ詰め クリスマスシーズン恒例の丸鶏ロースト。今年はなんと、鶏のお腹の中に、ラムのビリヤニを詰めてしまった!謎の背徳感。 12月26日(火) 恋人の誕生日ディナー 苺とウドのサラダ、オレンジのサラダ、タコ・イタヤガイ・アサリのパッケリ、アグー豚のファルソマグロ(詰め物入りローストポーク)にカッサータ。ドリンクは、前半は山椒酒のソーダ割り、後半はネロ・ダヴォラ。私の調子が悪くて、いろいろ思い通りにはいかなかったけれど、恋人は

大雪|2023.12.7-2023.12.21

12月7日(木) いつもの食卓に友人夫妻を招く  夕食に、ご近所の友人夫妻を食卓に招く。料理は私が担当する。春菊と柿のサラダ、蕪の丸ごと焼き、豚スペアリブと玉葱の煮込み、ブロッコリーのオレキエッテ、手づくり苺アイスといただいた苺。 12月12日(火) いつもの料理を友人の台所でつくる 午後から東京。久しぶりに友人宅に泊まらせてもらう。居心地のいい友人の家でゆっくりおしゃべりをしたくて、ワインを持っていくから、一緒に料理つくって食べない?と提案する。せっかくだから普段つく

小雪|2023.11.22-2023.12.6

11月23日(木) アイヌ料理の調理体験 「ポロトキッチン」 白老のウポポイで、アイヌ料理の調理体験「ポロトキッチン」に母と一緒に参加する。博物館ではどのように食の体験を実施しているのか興味があって、いつか参加してみたいと思っていたのが、ようやく叶った。 11月のメニューはチェプオハウ(鮭と野菜のスープ)とチポロラタシケプ(イクラとジャガイモのあえもの)、シプツケプメシ(イナキビごはん)、ボツボツ(カボチャと豆の混ぜ煮)風蒸しパン。デザートはアレンジ料理だけど、他はよく知

立冬|2023.11.8-2023.11.21

11月12日(日) ワインを買う楽しみ 堺にココイマさんの「アップサイクル・ファッションショー」を観に行った帰り、梅田で明日のディナー用のワインを買おうとしたら、阪急うめだでイタリアフェアをやっていたので、せっかくだからと催事場にあがる。早速ワインコーナーに行って、いくつか試飲させてもらうがピンとくるものがない。あるインポーター売り場で、フリウリのワインが3000円程度で並んでいて、へえと眺めていると、やや頬があからんでいる販売員のお姉さんが、カジュアルに話しかけてきた。「

霜降|2023.10.24-2023.11.7

10月26日(木) 新しい果物の見方 今週は毎日朝食に無花果を食べている。恋人がしみじみと、朝に無花果食べるの、ほんと好き、果物の中で一番かもしれない、と言うので、どこが好きなの?と聞くと、ちょっと考えたこともない答えが帰ってきて驚いた。無花果は、固形分の割合の多さと、1回に食べる量(無花果の場合は1個)のバランスがすごくいい、という。つまり、食べ応えの話。例えば、柑橘は、水分の割合が多いので、結局ジュースを少し飲むのと同じ。西瓜だと、ほとんど水分だけど、食べる量が多いので

寒露|2023.10.8-2023.10.23

10月8日(日) 「食」の話の交換所 KIITOが主催するクリエイティブマルシェイベント「ラ・フェス♪」に出展する。東遊園地に隣接するみち広場という屋外スペースでの開催。 本を売るだけだとつまらないし、ちょっとひねって、「『食』の話の交換所」と題して、お客さんの食の話と、私の本(食の話)とを物々交換するというのを試してみた。 神戸で生まれ育った人、海外生活を経て神戸に戻ってきた人、別の土地から神戸へ引っ越してきた人などから、それぞれ、いろいろな話が聞けた。 パンの話をしてく

秋分|2023.9.23-2023.10.7

9月24日(日) 新開地商店街と『ちいきいと』 朝から新開地へ。午後に新開地アートひろばで行われる『ちいきいと』と観に行くことにしていたので、せっかくなので、少し早めに行って「神戸の台所」と言われる商店街に行ってみた。 なんとなく、長く続く1本の商店街をイメージしていたけれど、全然違って、いくつも商店街が、角度や高さを変えながらつながっていくような感じ。生鮮の市場は東山商店街。話には聞いていた「ひやしあめ」なる飲み物を初めて飲む。これは、炭酸なしのジンジャーエール。 奥

白露|2023.9.8-2023.9.22

9月8日(金) その土地を象徴する料理 netflix『シェフのテーブル』、今日はインド料理のガガン・アナンドと、イタリア料理のマッシモ・ボットゥーラの2本立てで観る。 インド人シェフのガガンは、エル・ブリのフェラン・アドリアがスペインの食文化において重要なオリーブオイルを液状球体にしていることから、インド料理では何がそれに値するのかと考えて、ヨーグルトを使っていたのが、面白かった。インドの食文化にとって、ヨーグルトがそこまで重要な食材だなんて考えたこともなかった。という