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立冬|2023.11.8-2023.11.21

日々の食卓、食卓での会話、食材やレストラン、食に関する本や映画、イベントなど、食にまつわることだけ書く日記のような「食雑記」。節気毎に更新。

11月12日(日) ワインを買う楽しみ

堺にココイマさんの「アップサイクル・ファッションショー」を観に行った帰り、梅田で明日のディナー用のワインを買おうとしたら、阪急うめだでイタリアフェアをやっていたので、せっかくだからと催事場にあがる。早速ワインコーナーに行って、いくつか試飲させてもらうがピンとくるものがない。あるインポーター売り場で、フリウリのワインが3000円程度で並んでいて、へえと眺めていると、やや頬があからんでいる販売員のお姉さんが、カジュアルに話しかけてきた。「赤のこれは、もう飲んでから喉の奥で、ドーンと爆発する感じがもうほんとすごい」「白はね、もうほんと桃がジュワーーー!って感じ」初っ端からテンションが高い。フリウリのワインにしてはお手頃で気になって、と言うと「現地での上代は6000円くらいなんですけど、ワイナリーの方がほんといい方で、日本の方にぜひ飲んでもらいたいからって、頑張ってくれていて!」と言う。さすがにそんなわけないだろう、と思いつつ、お姉さんのノリにこちらも面白くなってきて、こっちの赤だったら、何を合わせたくなりますか?と聞くと「鹿!鹿です!もう、ジビエ食べたくなりますーー!」とテンションがあがってくる。赤肉を使う可能性はないので、明日は豚か鶏、あと栗のリゾットもつくろうと思っていて、と言うと「それなら、絶対こっちの白です!栗と合わせるなんて!想像するだけで!ヨダレでてきますーーー!!!」とついに爆発したので、「じゃあ、これお願いします」と決めた。こんな風に買い物するのはほんと楽しい。このエピソードだけで、もう半分くらい美味しさが約束されている。

11月13日(月) 立冬の買い出しと友人のためのディナー

朝はスマイル阪神に買い出し。葉物が充実してくる。サラダ用にルッコラ、カーリーケール、わさび菜、菊菜などたんまり買い込む。夜にやってくる友人の夕食のリクエストが「宝塚名産のあたたかいもの」で、ひとつは熟成させた銀寄でリゾットをつくろうと思っていたけど、旬島に、傘が開いてずっしり重い、宝塚産の巨大な原木椎茸が売っていたので、ポタージュをつくることにする。名産かはわからないけれど、昨晩、宝塚に降った雨の味は少し入っているかもしれない。

久しぶりの友人のためのディナーは、宝塚産無花果のサラダ、栗のリゾット、豚スペアリブと里芋の煮込み、無花果と柘榴シロップのパフェ。昨日のフリウリラーノは栗のリゾットと完璧な組み合わせだった。恋人が、自分も歓迎の気持ちを表したいと、つくってくれたチーズや卵などの燻製は、乾杯の「リンゴとベルガモットのブリュー」にも、よくあった。

11月14日(火) 世界最高の朝食と椎茸のパスタ

恋人とふたりで「世界最高の朝食」と自画自賛している、いつもの朝食を友人に食べてもらう。恋人は「フレンチトーストにしたほうがいいんちゃう?」と耳打ちするが、全然わかっていない。世界最高の朝食は、極めて普通の朝食であるからこそ成立するのだ。トースト、目玉焼き、ベーコン、サラダ、果物、コーヒーにヨーグルト。トーストは超熟だし、目玉焼きの卵は最近ずっと高いからMサイズ。ただし、ベーコンは恋人のお姉さんから送られてきた日大のベーコンで、サラダは友人がお土産で買ってきてくれた柿酢をドレッシングに使おうと決めて、春菊とわさび菜、和の葉っぱを組み合わせて。果物は地元の無花果、ヨーグルトは恋人が繋ぎ続けている自家製、ジャムは恋人のお母さんがつくったブルーベリーと夏みかん。こんなにもいろいろなものが並ぶけど、私が用意しているのはサラダだけ、あとは全部恋人が用意している、と友人に説明する。でも、サラダに集中するからこそ、私は毎日、その日のインスピレーションで違うサラダをつくれるし、恋人も日々違うサラダを食べるのは楽しいと言うので、お互い得意なことを生かしあって成立している。

友人は、午前中にみんぱくに寄って帰る予定だったけど、やっぱりおしゃべりのほうが大事!と言って、結局ランチも一緒に食べる。昨晩は出すタイミングがなく、今朝も出し忘れてしまった椎茸ポタージュのペーストをソースにしてパスタをつくる。ポタージュ用に完全に滑らかにしてしまったので、胡桃をフライパンでいって、刻んで、混ぜる。彼女のためにつくった料理だから、やはり彼女のお腹に収まる運命だったのだろう。彼女が目をつぶりながら料理を味わっている姿を久しぶりに見て、これまで彼女と囲んできた、いろいろな食卓が浮かぶ。人生の変化とともにお互いに住む場所を変え、その時その時の生きることの悩みや迷いや嬉しさや喜びや、あるいは、どうでもいいことをしゃべって、食べて、飲んで。こんなことをずっとくり返して、生きて死んでいきたい。

11月16日(木) 「柿の種」のような柿の種

夕食後のデザートに、島根出身の方からいただいた柿を食べる。細長くて4つに割れている柿だ。調べてみると西条柿というものらしい。外側の果肉はまだしっかりしているが、中心部分はトロトロ。形が細長いから、トロトロ部分がたっぷりある感じ。繊維も長いような気がする。まさか実の長さのせいか。ひとつだけ種が入っていたのだが、それがまさにあの「柿の種」とそっくりだった。細長い三日月型の種。いやいや逆だ。柿の種に似ているから「柿の種」という名前をつけたはず。とはいえ、考えてみれば、これまでの人生で食べてきた柿の種は全部コロンと、丸(というか三角)だった。だから「柿の種」と柿の種をつなげて考えたことは一度もなかった。こんなにもはっきりとそれを指し示した名前なのに。「柿の種」の発祥を調べてみると、意外と偶然の産物だった。それがこんなに長く、全国区どころか、いまや海外進出もするようなお菓子になるとは。金型を踏んづけたお菓子屋の奥さんも想像してなかったはず。

11月19日(日) 立冬の買い出し2

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