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ウィークエンド世界食堂|ゲルゲイさんのハンガリー料理

2024年9月16日(祝・月)、大阪府豊中市のカフェ・サパナにて「ウィークエンド世界食堂」を開催しました。今回のシェフは、ハンガリーからの留学生、ゲルゲイさん。32名の方が参加されました。今回も異国の家庭料理を通した、普段着の国際交流を、みなさんに楽しんでいただきました。

シェフについて

●ゲルゲイ・ラースロ・ベンス|Gergely László Bence
ハンガリー北東の都市、ニーレジュハーザ出身。大阪大学公共政策大学院の博士課程に在籍中。学業以外に、極真空手をやっている(実家が道場を持っている)そうで、料理は趣味のひとつ。ハンガリー人はもてなし好き(旅すれば、間違いなく料理をごちそうになるはず)で、ご自身も料理を通してコミュニケーションを取りたいと思っているとのこと。様々な料理を通して、自分の国の伝統がどのようなものか、日本の人々に知ってもらいたいと思っているそうです。

ハンガリーについて

ハンガリーは、ヨーロッパのほぼ中央部にある国で広さは日本の4分の1程度。ルーマニア、スロベニア、オーストリアなど7カ国と国境を接しています。内陸性の気候で、夏は温暖ですが、冬は冷え込みます。雨量は日本の3分の1ぐらいですが、川と湖からの豊富な水資源があります。国土の大半は広い平原や丘陵なので、農業や畜産業が盛んであり、ヨーロッパ有数の農業国として知られています。国土の半分以上が農地となっています。(絵本 世界の食事24『ハンガリーのごはん』より)

メニューの打ち合わせ

ゲルゲイさんは、カフェ・サパナの平日ランチでもいろいろな料理をつくってくれています。普段はなかなかチャレンジできない料理で、ぜひみなさんに食べてもらいたい料理は?と聞くと、今回の主菜、プルクルトと呼ばれる煮込み料理を提案してくれました。ハンガリーの代表的な料理、グヤーシュみたいなもの?と聞くと「グヤーシュはスープでプルクルトはシチュー、全く違うものです」と言われました。スープならば前菜、シチューなら主菜で、メニューとしての位置付けも違います。外からみると同じように思えるものが、その国の人にとっては全然違うもの、ということはよくあり、そういう時には、日本とは大きく異なる食文化の氷山の一角に触れたような気持ちになります。
また、果物のスープは、9月中旬はりんごの旬には少し早く、調達に苦労する可能性もありましたが、ゲルゲイさんの出身地がりんごの名産地であり、まさにその土地ならではの料理であるということから、りんごにこだわることになりました。

調理の様子

当日は、つくってから冷たくして提供するりんごのスープからつくりはじめます。キッチン担当の飯田さんが「もっとやわらかくなるまで煮なくてもいいの?」と確認しますが、ゲルゲイさんはこのくらいでいい、とのこと。こういうところは、やはりその国の人ならではの感覚があるんだろうと思います。
プルクルトには、2カップほどのパプリカパウダーを投入。ハンガリーでは焦がさないために、油分のあるところに入れるとのこと。炒めた玉ねぎの上にふりかけます。使ったのはスペイン産のものでしたが、ゲルゲイさんにハンガリー産のものとの違いを聞いてみると、ハンガリーのものは真っ赤なのだそう。確かに彼が自宅でつくったプルクルトの写真を見せてもらうと真っ赤っか!でも、今回は、ワインで赤くなるから大丈夫ですよ、と笑っていました。

そして、一番の山場はノケドリ。生パスタを30人分以上つくるというチャレンジに私たちは戦々恐々。ハンガリーのノケドリ用の器具を参考に、おろし器などを準備して臨みましたが、結局、ゲルゲイさんのアイデアによる、袋にゆるい種を入れて、絞り出しながらお湯に落とすという方法で、大量の麺をつくりきりました。

会場の様子

天井には、ゲルゲイさんが持っているサッカーを応援する時のポンチョだという大きなハンガリーの国旗を飾り、テーブルには黄色のテーブルクロスというシンプルなデコレーションです。
今回は、豊中と大阪在住の方で半数近く、池田や尼崎、箕面など近隣はもとより、神戸や京都、奈良など遠方からもご参加いただきました。
また、留学中のハンガリー人の高校生(!)や、中央ヨーロッパのワインを扱うお店のオーナーさん、語学学習交換などを行うNPOのみなさん、海外旅行のベテラン添乗員さんなど、多様な方々がいらっしゃいました。

料理の説明と参加者の感想

ハンガリーの食事は、他のヨーロッパの国と同様、スープまたは前菜もしくはスープ、主菜、デザートで構成されており、一皿ずつ順番に食べていきます。今回はその習慣にならって、一皿ずつ提供し、配布したメニューの説明に加えて、ゲルゲイさんにお話しをしていただきました。

<スープ>
りんごのスープ|Almaleves
夏の定番料理。デザートではなく食事の一品として食べる。りんごの名産地である ゲルゲイさんの故郷では夏の間に何度もつくる。
「ハンガリーの建国の祖と言われるマジャール人は中央アジア、ウラル山脈からやってきました。りんごの原産地も同じく中央アジアであり、りんごも一緒にやってきて、その後世界中に広がりました。そういう意味では、1000年前から続くレシピといえます」

「デザートではなく、食事として食べるということにびっくりしました」
「とても美味しくて、私もつくってみようと思いました」
「ハンガリーを旅行した際、豆のスープをよく飲んだ(食べた)記憶があり、新鮮な感動がありました」

<参加者アンケートより>

<主菜>
豚肉の赤ワイン&パプリカ煮込み|Sertés pörkölt
パプリカパウダーはハンガリー料理を特徴づけるスパイス。煮込み(プルクルト)やスープ(グヤーシュ)は、牛飼いたちが野外で集うときに大鍋でつくっていた料理がルーツ。
「夕方、羊飼いや牛飼いたちが放牧から帰ってきて集まって、そこから3、4時間、夜になるまで煮込んで、みんなで食べる料理です。豚肉以外に、牛肉や羊肉、馬肉などでもつくります」

「肉がホロホロ。時間をかけてつくる料理、おいしかったです」
「日本のかつお出汁のようなやさしい旨みでとても美味しくいただきました」
「日本人の口にも合う料理だと思いました」

<参加者アンケートより>

ノケドリ(ハンガリーの自家製パスタ)|Nokedli
煮込み料理ができあがるのを待つ間につくるやわらかい卵入り麺。ゆるめにつくった種を細かく湯に落として茹でる。
「屋外の煮込みの鍋の横で、簡単につくれるような麺料理なのです」

「もちもちして美味しかったです」
「昔ドイツに半年いたとき、食べたシュペッツェレを思い出した」
「実家の母がつくる肉汁にも、同じようなものが入っています」

<参加者アンケートより>

キュウリのサワークリーム和え|Uborkasaláta tejföllel
ハンガリーでは日常的に使うサワークリーム。安価に手に入らない日本では、水切りヨーグルトなどで代用。シチューやスープなどにもかける。
「日本のヨーグルトの水を切り、酢を加えると、サワークリームにとっても近くなります」

「暑い中、フレッシュで、ぜひマネしたいと思いました」
「フランスの大学生がつくってくれたサラダと似ていて、なつかしかったです」

<参加者アンケートより>

<デザート>
ココナッツボール|kókuszgolyó
ホームパーティでは定番の菓子。今回はココア風味のシンプルなものだが、ナッツや リキュール入りなど様々なバリエーションがある。
「ハンガリーで一番人気があるのは、中にさくらんぼが入ったものです」

「見た目で、ドーナツだと思っていました。ビスケットをくだいて入っているとは思いませんでした!」

<参加者アンケートより>

参加者のみなさんとの交流

好きな日本の料理は?という問いに「お好み焼きです。でも….広島風が好き….」と答えて、ブーイングを受けたり、ワイン好きの方たちとは「ハンガリーは寒暖差はあるけれど、日照時間が長いので、ブドウが完熟になる」などいった話題で盛り上がったり。また、ハンガリー料理を特徴づける食材の話の流れで、マンガリッツァというハンガリーの国宝になっている、毛むくじゃらの豚のことも紹介してくれました。「なぜ、大阪を選んだのですか?」という質問には「大阪大学国際公共政策大学院は世界でも有名なのと、日本に来たときにいろいろな街に滞在してみて、暮らしてみたいと思ったのが大阪だったから」と答えていました。また、ハンガリー語の文法は日本語と似ているって本当?といった言語についての話題や(ゲルゲイさんにとっては、英語やドイツ語より学びやすいそう)、隣接している国々との関係はどう?といった政治に関わることなど、参加者それぞれのテーマで会話が弾んでいました。

参加者の方からのメッセージや感想

「全部美味しかったです(日本にある食材で工夫してつくってくださって、ありがとう)。シェフの笑顔も素敵でした」
「いつも自分で料理されているのが、よくわかります。学問に空手にそして料理に、忙しい毎日だと思いますが、日本での生活が充実した良き日々になっていることを心から応援したいです」
「ありがとうございます。手間ひまかけていただき感謝です」
「ゲルゲイさん、とてもおいしかったです。新しい世界に出会えますように」
「ハンガリーのいろいろなお酒のことも知りたいです」
「ハンガリーに行ってみたくなりました!」
「りんごスープつくってみます。ココナッツボールも」
「ハンガリーはワインが安いという事しか知らなかったので、ブタのことをもっと日本人に教えてください。説明上手です」
「大阪を選んでくださってありがとうございます。とても美味しかった。また主人と娘と来ます」
「日本にいらっしゃる外国人の方と、お話しすることがあまりなかったので、貴重な体験になりました」

<参加者アンケートより>

終わりに

今回のウィークエンド世界食堂も盛況のうちに終了しました。関西でもなかなか食べられる場所のないハンガリー料理を味わいながら、料理をつくってくれたゲルゲイさんと出会い、料理はもとより、国やその文化についても直接話を聞くことで、ハンガリーと縁がある方も、今回が初めてという方も、ハンガリーという国やそこで暮らす人との距離が、一歩縮まったのではないかと思います。
Life on the tableでは、これからも、こういった「食べて、知る」機会を増やしていきたいと思っています。

今後のスケジュール

2024年10月26日(土)ハシニさんのスリランカ料理
2024年11月30日(土)イさんの韓国料理
※予約方法は、カフェ・サパナLife on the tableのSNSにてお知らせします。ぜひフォローしてください!

基本情報

ウィークエンド世界食堂|ゲルゲイさんのハンガリー料理
日時:2024年9月16日(祝・月)11:30の部/13:00の部
会場:カフェ・サパナ
主催:カフェ・サパナ(渉外・受付:筒井百合子、キッチン:飯田美千代)
企画協力:Life on the table (全体コーディネート・広報:宮浦宜子)

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