田村 拓

一般社団法人EDAS(イーダス)理事長、インクルシティ研究所 所長。 「お互い様(OT…

田村 拓

一般社団法人EDAS(イーダス)理事長、インクルシティ研究所 所長。 「お互い様(OTAGAISAMA)」で「多様性」と「受容性」の溶け合う「インクルシティ」社会の実現を目指し、就労目的で来日する外国人と受入れる日本企業や地域コミュニティを繋ぐ活動をしています。

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文化学院の再評価~100年前の教育革新

姿を消したリベラルアーツ・スクール「文化学院」文化学院は、1921年(大正10年)に「楽しき住家(じゅうか)」を著した建築家の西村伊作により創立され、「大正新教育」をけん引した非常にユニークなリベラルアーツ・スクールでした。 創設者には、西村のほか、与謝野晶子、与謝野鉄幹、版画家・洋画家の石井柏亭(いしい はくてい)らが名を連ねました。   明治に入り、殖産興業を目的に、よく言えば「粒ぞろい」、悪く言えば金太郎飴的な人材の「大量生産」を指向する学校令に対し反旗を翻したのが彼ら

    • 中国~遂に視界に捉えた人口ピークアウトの衝撃

      中国の人口について、2020年の国勢調査結果が出たそうです。 総人口は、14億1177万人。 高齢者の数は、10年で6割増加したとのこと。 そして、先日も報道されていましたが、人口オーナス期に入ったと見られているわけです。日本と同様に、従属人口比率が高まる局面、すなわち働く人よりも支えられる人が多くなる状況です。(その反対が「人口ボーナス」。) 次の国勢調査は2030年だと思いますが、その間、遂に人口のピークアウトが起きることは確実になったと感じます。 人口問題の怖いところは

      • タケヤリニッポン~「このままじゃ、政治に殺される。」

        今朝の日経新聞、宝島社の痛烈な風刺を効かせた見開き2面広告が話題ですね。朝日新聞、読売新聞にも掲載されているとか。 この広告の「政治」に対するシンプルなメッセージには異論をはさむ余地がありません。 「タケヤリ」という言葉は、父母や祖父母に降りかかった太平洋戦争の悪夢を想起させ、今の日本の問題点に刺さる十分な力を持つ言葉と感じます。 若い世代が、どれほど「タケヤリ」を知っているかは不明ですが。   新型コロナが惹起する具体的問題と社会的な歪みを取り上げると、責任の所在が不明確

        • 論理と感情

          あることのために、三木清の「人生論ノート」を引っ張り出して再読しているところです。 戦前の哲学者である彼の人となりについては、ほとんど知らず、西田幾多郎の弟子くらいにしか考えたことがありませんでしたが、今回調べていたところ、妻・喜美子が農業経済学者の東畑精一の妹で、26歳で三木と結婚し、33歳で早世したことを知りました。 三木は妻の死の翌年、追悼集「影なき影」を編んだそうです。 国会図書館のデジタルアーカイブで探し、追悼集に収められた「幼きもののために」を読みました。 三木

        文化学院の再評価~100年前の教育革新

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          リベラルアーツを武器にするための2冊

          私のような年齢になっても、知的探求心を失わずにいれば、さまざまな発見があり、現在取り組んでいるテーマを前に進める上での力を与えてくれます。その時羅針盤になるのは、情報ではなく名著です。 ところで、最近出版されたこの2冊は、高校生から大学生くらいの若い方々にぜひペアで読んでほしいと感じます。 一冊は「探求する精神」(大栗博司著、幻冬舎新書)、そしてもう一冊は「読書大全」(堀内勉著、日経BP刊)。 リベラルアーツ「ブーム」の昨今ですが、中には「?」と感じるものも見かけます。

          リベラルアーツを武器にするための2冊

          ランドマークとは何か

          久しぶりに西新宿に足を運びました。 転職した1997年から2003年まで、「住友三角ビル」に通っていました。 当時の自宅が代々木公園の近くで、職住隣接ということも手伝って週末も出社することが多く、私にとって西新宿の高層ビルは生活の一部でした。 「新宿副都心」。 今ではそんな呼び名も忘れられたかのように、聞くことがなくなりました。 東京都庁舎が丸の内からここに移転したのは1991年ですが、おひざ元が副都心というのもイメージに合わなくなったからかもしれません。 三角ビルそのもの

          ランドマークとは何か

          沈黙は容認、沈黙は共犯

          森喜朗氏の発言の時も、米国で深刻化するAsian Hateについても、「もちろん」ミャンマー問題に対しても、日本の大企業の多くは沈黙します。 そしてメディアが意見表明を迫ればしぶしぶ答えます。それもかなり控えめに。 だから私は、森発言の際のトヨタの勇気に喝采を送りました。 自分でも経験がありますが、大企業は政治的発言をしないという、ある種の不文律が存在するのだと思います。 先日巨大企業トップだった方と話していて、何かを言おうとすると広報が止めに来るんだよねという話を聞きまし

          沈黙は容認、沈黙は共犯

          外国人技能実習制度の抱える構造的問題

          今日(3月24日)の日経新聞朝刊の私見卓見に、「技能実習制度の段階的廃止を」という論考を寄稿しました。 構造的な問題を抱える外国人技能実習制度を段階的に廃止し、2019年にスタートした特定技能へ非熟練現場労働者の受入れを一本化するべきという主張です。   技能実習制度は、「実習」という建前のもとでの就労という矛盾をはらんできました。それが低賃金、長時間労働、パワハラといった問題を構造的に生む温床になっています。 他方、建前という問題はともかく、本制度を活用して外国人と日本企

          外国人技能実習制度の抱える構造的問題

          赤いスーツを着た還暦オヤジたち

          「赤い服を着たオジサン」の写真に、予想以上の反響をいただき有難うございました。(注:この投稿は、Facebookからのスピンオフです。) 種明かしをすると、この話は、畏友・佐藤裕久(通称「ヒロポン」←ヤバいクスリのことじゃないですw)の壮大な野望から始まりました。   還暦=赤いちゃんちゃんこは社会の定番で、干支が一巡し、人生の第二ラウンドに入る時に、「赤ちゃん」→「赤い」「ちゃんちゃんこ」を着て祝ってもらうという感じかと思います。 でも、中には天邪鬼がいて、こんなふうに赤

          赤いスーツを着た還暦オヤジたち

          【note再掲 3.11に寄せて】「Fukushima 50」を観てきました。多くの方に観ていただきたいです(2020年3月)

          (注)この記事は、2020年3月17日にFacebookに投稿したものに加筆したものです。 映画「Fukushima 50」はAmazon PrimeやU-NEXTなどで配信されています。2021年3月10日(水)18時45分からWOWOWシネマで、3月29日(月)21時30分からWOWOW 4Kで放映されるそうです。 「Fukushima 50」とは何か原発事故発生後も残った約50名の作業員に対し国外のメディアが与えた呼称。 "Fukushima 50 battle ra

          【note再掲 3.11に寄せて】「Fukushima 50」を観てきました。多くの方に観ていただきたいです(2020年3月)

          代替肉は世界を救うか

          代替肉のバーガーパティを取り寄せて食べてみました。 ネットでヒットしたNEXT MEATS社のサイトにはバーガー、「牛丼」、「カルビ」、「ハラミ」と銘打った食材が並びますが、今回はバーガーを選びました。 特に美味しいとは感じませんが、そういう料理なのだと思えば、問題なく食べられます。マルシンハンバーグみたいと言えば、ある年齢以上の方はお分かりになるでしょうか。 マルシンのホームページを見ると、主原料には鶏肉、豚肉、牛肉をミックスし、粒状大豆たん白の表記も見えます。蛇足ですが

          代替肉は世界を救うか

          今だからこそ議論したい「多文化共生社会」の姿

          私は、日本が外国人を受け入れるインクルーシブな社会の実現を活動の中心にしています。 ところで、世界には「移民」が建国した国(移民国家)や、陸続きの大陸で歴史を通じて版図が大きく変化を続けながら今に至る国々があります。日本とこれらの国々では、国家の骨格が全く異なり、外国人受入れを同列に論じることは難しいと考えています。他の国々との比較で、日本にはまだそれほど多くの外国人はいませんが、日本の歴史において、かつてないほど多くの外国人が居住するようになったという感覚の話としてならば

          今だからこそ議論したい「多文化共生社会」の姿

          ダイバーシティの象徴的存在としての大坂なおみ選手

          全豪オープンを制した、プロテニスプレイヤーの大坂なおみ選手。 中米・ハイチにルーツをもつアフリカン・アメリカンの父親と日本人の母の子として生まれ、小さい頃から祖父母の住むニューヨーク・ロングアイランドで育ったそうです。日本にルーツをもつミックスで、日本と米国の二重国籍の中から、選択したのは日本国籍。主に使用する言語は英語、日本語はマイナー。女性。北海道生まれの母方の祖父は、ロシアサハリン州の勇留島生まれで根室漁業組合の組合長をしておられるそうです。名前は大坂なおみ。日本を代表

          ダイバーシティの象徴的存在としての大坂なおみ選手

          大坂なおみ選手の快挙とお笑いネタ・「マサラ王国の落語家 ヨギータ」~外国人に対するアンコンシャス・バイアスについて

          大坂なおみ選手の全豪オープン優勝に感動し、素晴らしい優勝スピーチの余韻もさめやらぬ中、直後の「ENGEIグランドスラム」という番組で芸人・徳井義実(チュートリアル)が「マサラ王国の落語家 ヨギータ」というネタを披露しているのを見かけました。   とにかく、ひどい。 「外国人の拙い日本語」の真似をしながら、下ネタまがいの品の無い言葉を連発します。 会場の他の出演者も(また視聴者の中にも)、それを聞いて笑う人がいます。   外国人をステレオタイプで演じる芸は過去枚挙にいとまがあり

          大坂なおみ選手の快挙とお笑いネタ・「マサラ王国の落語家 ヨギータ」~外国人に対するアンコンシャス・バイアスについて

          ノーサイド精神とフォロワーシップ~橋本聖子会長就任で考えること

          ノーサイドの精神とフォロワーシップ。 私は、青山学院大学で学部学生にワークショップデザイン実践を教えていますが、学生に必ずこのふたつについて話をします。   「ノーサイド」は、ひとたび戦いが終わったら、互いの健闘をたたえ合う精神を表す言葉として知られます。 「紳士のスポーツ」、ラグビーに語源があると言います。 さらに遡ると、キリスト教の教えに繋がっているという見立てもあるようです。   ところで、日本は「リーダーシップ」が足りない、などと言われます。 その通りかもしれません。

          ノーサイド精神とフォロワーシップ~橋本聖子会長就任で考えること

          本当に必要なのは「熟議力」、今すぐ必要なのは合目的的判断

          森会長辞任による後任選び。   手続きの透明性実現を望むにしても、議論という不慣れなコミュニケーションを乗り越えられるのかという問題が横たわっていて、かなりの時間を要するに違いありません。 ところが、残された時間は非常に少ない。開催するかしないかの判断のタイミングは、目前に迫っています。   組織委員会の機能不全なわけですから、ここはまず、東京都と政府(とJOC)がイニシアチブをとり、IOCと協議の上「やるのか、やらないのか」、「もしもやるなら、どのようにやるのか」の基本方針

          本当に必要なのは「熟議力」、今すぐ必要なのは合目的的判断