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中国~遂に視界に捉えた人口ピークアウトの衝撃

中国の人口について、2020年の国勢調査結果が出たそうです。
総人口は、14億1177万人。
高齢者の数は、10年で6割増加したとのこと。
そして、先日も報道されていましたが、人口オーナス期に入ったと見られているわけです。日本と同様に、従属人口比率が高まる局面、すなわち働く人よりも支えられる人が多くなる状況です。(その反対が「人口ボーナス」。)
次の国勢調査は2030年だと思いますが、その間、遂に人口のピークアウトが起きることは確実になったと感じます。
人口問題の怖いところは、予想通りに危機が訪れる点だと理解しています。坂を転がり落ちるように、勢いがついていく。

私の経済学部生時代のゼミでのテーマは中国経済の近代化で、1984年11月に北京の人民大会堂で開催された第一回日中経済シンポジウム(日本経済新聞、人民日報共催)に参加して、初めて訪中したことは以前に書きました。
当時は中国各地に設置され、農村の経済生産単位だった人民公社の解体が進みつつありました。
一方、全国には文化大革命の爪痕が残っていたはずで、製造業は著しく遅れた状態であり、国内の交通インフラ、通信インフラも、まさにこれから整備が進む、とば口にいたわけです。
今の中国からは想像もつきません。
少子高齢化の原因とも言われる「一人っ子政策」も、1979年以来の改革開放政策とともに始まりました。
 
都市部に定住する人口は63.9%とのこと。10年前から14.2ポイント高まったそうです。

中国には、国民の管理に農村(農業)戸籍と都市戸籍というふたつがあり、かつては人口の移動は厳しく制限されていました。
その後、農村と都市の一体化が政策的に進められたことを以て、国内の人口は流動性を増したと理解しています。
日経新聞の記事を読んで、結果として現在では6割以上が都市部に定住するまでに変化が進んでいたことを改めて認識しました。
工業化が進むことで起きる現象は、世界のどこでも同じといえばそれまでですが。
因みに、日本の農村地域人口は2割くらいだと思うので、都市部には8割くらいが暮らしている可能性があると思うと、我が方は驚くというより、深刻です。
 
記事には、合計特殊出生率が1.3とも書かれていました。
日本の2019年のそれは1.36。
統計に表れるこのような数字が、全く同じ定義に基づいているかどうか、詳しくないので分かりませんが、単純比較すれば、少子高齢化に悩まされる日本よりも低い点に驚きます。
 
日本の少子高齢化問題が一向に解消されないのは、それが構造的な問題により引き起こされていて、原因と結果の負のスパイラルに陥ったことにあると考えています。
工業化の伸展、都市部への人口集中、都市部の物価水準やジェンダー平等の潮流による生活と就労コストの変化、結果としての少子化。
少子化による企業・経済成長の停滞、給与の伸び悩み(低い労働分配率)。
共稼ぎは、女性の社会進出の伸張を示唆する一方で、夫婦双方が働かなければ暮らしが成り立たないことも意味します。
多くの子どもを持つことが、環境的にますます難しくなっていきますが、日本の大きな失敗は、この問題に早く手を付けなかったことにある、問題を先送りしたことにあるのではと、今となっては感じます。
 
65歳以上人口比率によってWHOが高齢化の進行度合いを定義していますが、高齢化社会(aging society 7%超)→高齢社会(aged society 14%超)→スーパー高齢社会(super-aged society 21%超)の移行期間の短さにおいて、中国は日本と同じくらいの急速な高齢化の道を辿っているように見えます。もしかしたら、今後の少子高齢化加速のスピードは、中国の方が速いかもしれません。
人口が多い分、地球に与えるインパクトも大きいはず。
 
人口問題は、最も確実な未来予測が可能であると理解しています。
日本は1990年に、いわゆる「1.57ショック」として、出生率の低下と子どもの数が減少傾向にあることを「問題」として初めて認識したわけですが、その後「少子高齢化対策」と声高に銘打ちながら、何ら成果を上げられず、現在に至っています。
当時のムードを振り返ると、人口は増え続けるものであり、減少に転じると言われても、私自身現実的な指摘とは感じにくかった記憶があります。
私は外国人政策に関わる仕事をしているわけですが、外国人労働者を招きたいとする声も、この実効性を上げられなかった少子化対策に呼応して大きくなってきた経緯があります。
 
日本がそうであるように、「やったふり」の少子化対策では成果は上がりません。起点となる出生率が大幅に改善したとして(しないと思いますが)、労働生産人口に「寄与」するまでには20年近くの時間がかかるわけです。
労働力供給の改善は、少子化対策ではなく、従来就労していなかった女性や、「人生100年時代」ということで高齢者を取り込むことで実現したのは当然だと思います。
 
中国もこの問題の恐ろしい現実に直面することになるわけですが、強権的な政府は、自国民に、多数の出産を義務付けたりするのでしょうか。
だとしても、少子化と高齢化は同時進行的に起こり、現代では長寿化という非対称の減少を含んでいます。問題の解決は容易ではないはずです。
 
私にとって、中国は身近な国です。
父は出版人として中国との関係が深く、出版業界の代表として何度も訪中していました。
2000年代にはオフショアビジネスと研究開発で中国の企業や大学と仕事をしていました。また現在は外国人政策関係の仕事をしています。
中国の科学技術レベルやビジネスものダイナミズムも、刮目して見ています。
停滞する我が国と引き比べて、学ぶべきこと、研究すべきことも多いと考えています。
何より、内外に尊敬できる、親しい中国の友人が少なからずいます。
 
けれども、近年の中国政府の覇権主義的な膨張政策はとても看過できません。
政府の素早い決断と強権的なリーダーシップは、良くも悪くも、彼の国が日本と大きく異なる点です。
いずれダイナミックな意思決定と政策が実行される可能性は高いと思います。
ここで「いつもの」リーダーシップが発揮できなければ、問題解決は先送りされ、一層深刻の度を増す恐れがあります。
 
けれども、人口減少に端を発してこれから間違いなく顕在化する多数の問題から国民の目をそらすために、領土拡張の動機が生まれたり、紛争、戦争などに繋がらないことを切に願います。
中国の人口問題は、私には近い将来の世界平和の攪乱要因に対する心配と表裏一体に見えます。
日経記事の最後は、共産党関係者の気になる言葉で締めくくられています。
「共産党の先人が主導してきた政策は急転換できない」。
心配のタネは尽きません。


#中国 #人口増加ピークアウト #人口オーナス  #日経COMEMO

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