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それぞれが自分の人生の主人公でいられるよう、「自立」を大切にしています|小林祐輔(にじのき保育園・園長)

千葉県市川市・行徳駅にある「にじのき保育園」。0歳から2歳までの子どもたち17名と10名の職員がのびのび過ごしている。
「当園の理念は『笑顔のために…』。今笑顔でいるだけではなく、将来笑顔でいるためには? と考えて過ごしています。子どもたちが過ごす、これからの社会はこれまでのように組織に依存するのではなく、自分の人生の主人公として、個人個人が自立して、そのうえで協働し合うことが大切になります。そのための生きる力として、『考える力』と『対話する力』の基礎を育む保育を行なっています。」そう話すのはにじのき保育園の園長の小林祐輔さん。運営会社である株式会社にじいろキャンバスの代表も務める小林さんに、自立を大切にする保育の秘密を伺ってきた。

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「子どもの頃に感じた『ヒマの向こう側』…
今日は何をしようかと毎日自分で決めていました」

栃木県の自然豊かな場所で生まれ育った小林さん。「子ども時代を振り返ると、学びって“ヒマの向こう側”にあるのかなと思います。今日は何をするか、毎日自分で決めて過ごしていました」。
「両親の教育方針が『やりたいことをやらせる。ただし最後まで本気で取り組むこと』だったため、中途半端にやりたいと言うとのちのちツラくなることもあり、『本気でやりたいことか?』と考えるクセが身につきました」。
こうした原体験を持つ中で、保育士になってから受け持った2人の子どもの姿が保育園の考え方に大きく影響している。家族の関わり方によって、自発性や自立心が育まれやすい子とそうでない子の違いを発見し、自分自身が自分の人生の主人公であれる子どもたちを育みたいと思うようになった。
この人生の主人公であるための「自立」は保育園のキーワードとなっており、組織のキーワードでもある。

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「子どもたちの目線だと好きなコトをしているので、自然な動作の中で生き方を学んでいるんです」

この「自立」を大切にする思想は、保育園の環境にも表れていた。

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まず、子どもたちの目線や手の届くところにおもちゃや絵本が並べられている。つみきやブロックなどの構成コーナーやおままごとなどのごっこ遊びコーナーなど、子どもたちが自分でやりたい遊びを選ぶことができるようになっている。子どもの目線で見ると、コーナーごとに空間が区切られ、目の前の遊びに集中できそう。一方でほかのコーナーでも遊びが展開されているため、様子を見て興味が湧いたら別の遊びに切り替えることもできる。自分のやりたい遊びを自己決定することが、まさに日常になっている。

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また、不思議なことを発見。保育室の手洗い場の水栓は押しレバーになっているのに対してトイレの洗面台の水栓はひねるタイプ。その秘密は…

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「発達上、手でひねる動作の練習が必要な子どもたちに対して、そのための活動を用意するのではなく、一日のうちに数回利用するトイレで生活に必要な動作として自然に学べるよう、わざと変えているんです」と小林さん。

子どもたちの自然な動作を通じて、自分で決めたり、必要な身体発達を身につけたりすることで、教えられる・やらされるのではなく、自らの「やりたい」という気持ちの中で学ぶ体験が提供されている。


「自分の行動がどう園の理念・コンセプトにつながるか、やり方は人それぞれですが全員で意識し続けています」

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にじのき保育園では、園の理念の実現のためには職員一人ひとりが常に意識して保育に臨むことが必要と考え、日々の活動の「意図」を対話することを大切にしている。毎月園長から職員一人ひとりにあてた手紙を給与明細に同封したり、個人面談をしたりする中で、少なくとも月に2度、園長と理念・コンセプトを軸にした振り返りの機会を設けている。
「それに加えて職員には『教育のプロ』になって欲しいと話しています。従来の発達や保育のプロではなくて、保育の現場ではまだなじみが薄く、正解がない『教育』という言葉を用いることで、どうすればいいか? と常に考え、行動してもらうことを目指しています。自分で考えて、それを周りと対話しながら協働するという、まさに子どもたちが目の前で学んでいることを、自分たち自身も実践できる大人でありたいと思っています」(小林さん)。

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にじのき保育園での実践そして研究を行ない、それを外に発信していくことや、自園に通っていない子どもも含めた地域の子育て支援のためのカフェづくりや写真展、保育の仕事着づくりなど施設運営だけでなく、株式会社だからこそ可能な事業展開も視野に入れている。
「自分たちの保育は絶対の正解ではなく、あくまで方法のひとつ。それでも、子どもたちの自立の基礎をつくるための活動や仕組みをきちんと確立して、そして保育園の中で生まれた知見や価値を外に、別の場所に届けるといったモデルをこれからの乳幼児教育のスタンダードにしていきたいと考えています」(小林さん)。

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「自立」をキーワードに、保育園の活動、そして組織づくりを行なっていたにじのき保育園。用意した型にあてはめるのではなく、子どもたち自身が「こうありたい」という姿を探し、自らデザインすることを目指し、また、そこで働く職員も自らそうあろうとする姿に、教育施設のあるべき姿を見た。

また、言葉ばかりでつい置物になってしまう組織も多い理念やコンセプト。それを理解した上で、常に意識し、行動と結びつけて考えるためのしかけとして、毎月の面談や園長からのお手紙、日々のコミュニケーションや研修がデザインされている。ささやかとも思えるこうした丁寧なマネジメントの積み重ねが、コンセプトを理解し、体現する組織には重要であることを改めて考える機会となった。

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訪問先:にじのき保育園
所在地:千葉県市川市行徳駅前1-24-1(東西線「行徳」駅徒歩1分)
Webサイト:https://nijinoki.ed.jp/
運営法人:株式会社にじいろキャンバス
https://nijiirocanvas216.pro/

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