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Libya Updates #31: November 2020 Week 1


こんにちは🕊
今週1週間のリビアをめぐる動きを整理しました。

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■リビアのこれまで
40年以上続いたカダフィによる独裁体制が2011年に崩壊。新たな政府樹立を巡り、衝突が続いてきた。
現在は首都トリポリを拠点とし、国連の仲介で2016年に樹立した国民合意政府 (GNA)と、東部の都市トブルクを拠点とする政府 (HoR) が分裂している構図だ。
HoRが支持するハフタル将軍率いる勢力が2019年4月、トリポリへの侵攻を開始した。GNA側の民兵組織らが応戦し、武力衝突に発展。GNAにはトルコ、ハフタル勢力にはUAEやロシアなどがつき軍事支援などを行ってきた。
6月はじめにGNA勢力がトリポリを奪還し、ハフタル勢力は同地域より撤退。停戦へ向けた協議が進む一方、現地での戦闘が続いてきた。

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1. 国内の動き

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国連リビア特別ミッション (UNSMIL) は、3日にGNAとハフタル勢力がそれぞれの軍やその後ろにつく外国勢力を撤退させるためのロードマップ策定に合意したことを明らかにした。
ステファニー・ウィリアムズUNSMIL暫定特使によると、両勢力の軍部は近く、前線のシルトで会談を行い、さらなる交渉を進める予定だという。

UNSMILは先月23日、GNAとハフタル勢力側が「永続的」な停戦合意に達したことを発表。3ヶ月以内に全ての軍勢力や外国の傭兵が撤退することを決定した。リビア全土で封鎖されている道路の開通や空の移動も再開することなども定めた。
9日からは、チュニジアの首都チュニスで両勢力により政治部門の対話が行われることも予定されている。

ただ、合意ではトルコ軍がリビアに残ることなども決まっており、正式な内容は続報を待つ必要がある。


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一方、現場では課題も山積みだ。

56歳のハリル・ゴゼルさんのトルコ出身で、リビアのシルトでトルコのデザートのお店を経営していた。だが今年2月以降、ゴゼルさんの足取りは分かっていない。
ゴゼルさんが行方不明になったのは、ハフタル勢力がシルトを一掃した時期と重なる。同勢力がGNAを支援するトルコ出身者を連れ去ったと見られている。

Middle East Eyeが関係者に取材したところ、ゴゼルさんは3人のトルコ人とともにベンガジの刑務所に送られたという。



またGNA政府は5日、ロシアの傭兵がシルトの小学校に潜伏したことを発表している。

ロシアはワグナー・グループを通してハフタル勢力に対して傭兵や軍用運送機などを提供してきた。同国政府は否定しているものの、国連のレポートなども複数回に渡り関与が認められることを指摘している。


さらに国際NGOのヒューマン・ライツ・ウォッチによると、スーダン人男性少なくとも270人ほどがUAEの企業に「警備員」の名目で雇われ、リビアで戦闘に参加させられていることが分かった。

UAEはハフタル勢力を支援し、ドローン武器などの提供などを行ってきた。

この他にもタルフーナでは集団墓地が見つかっているなど、人びとの犠牲も計り知れない。


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石油の生産量は今週、日量85万バレルを記録。順当な回復傾向にある。

ハフタル勢力は今年1月から9月までの8ヶ月間、油田につながる港を封鎖しており、以前は日量120万バレルだった生産量が10万バレルにまで落ち込んでいた。石油・天然ガスの輸出国であったリビアではディーゼル燃料などを輸入する状態が続いていた。
この結果、同国では停電が頻発し、最大で1日に16時間停電していた地域もある。8月末から9月には、北西部や北東部で市民の抗議運動を引き起こした。


2. 国際社会の動き

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エジプトのサーメハ・シュクリ外務大臣は2日、リビアの和平に向け、ロシアや米国、欧州、UNSMILなどと調整を行っていることを話した。
一方、トルコとは協力しないと宣言。同国を念頭に、外国勢力の軍事介入を許さないことを強調した。

エジプトはハフタル勢力側を支援しており、これまでに両勢力は会談を行うなど、接近する動きも見られている。

GNAのファティ・バーシャーガー内務大臣は4日、エジプトの政府関係者と話し合うため首都カイロを訪問している。両国のメディアが伝えた。

停戦へ向け、エジプトとも交渉を進めているものと見られる。


3. 新型コロナウイルス

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リビアでは5日 (現地時間) 時点で、累計64,587人の感染者が確認されいている。1週間の新規感染者数は5,713人。日に平均約800人以上の新規感染者が確認されている計算。累計死者数は900人で、1週間で77人の増加。


リビアでは5月頃まで、感染者数は数十人規模で推移してきた。爆発的な感染拡大が始まったのは6月で、新規感染者数は増加の一途を辿っている。

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リビアの人口は689万人ほど。

国際連合人道問題調整事務所 (OCHA) によると、10月中旬の時点で感染者数の最も多い地域は首都トリポリ。続いて第3の都市ミスラタ、トリポリ西部のズリテン、第2の都市ベンガジで多くの感染が確認されている。

情勢不安の続いてきた同国では、パンデミック以前より医療保険制度がきちんと整備されていない状態。感染者に対応するための病床や医療器具なども不十分だ。
4月から5月にかけて、医療施設への攻撃も多発。6月から7月頃には市民が地雷の爆発に巻き込まれる事態が相次いでいた。


4. 移民・難民

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リビアを経由する移民・難民も同国が抱える問題の一つだ。
IOMは先週、バングラデシュ出身の移民154人をベンガジから飛行機で母国に送り届けたことを発表した。
送還にはEUが支援を行ったほか、バングラデシュやインド大使館が調整を行った。

カダフィ体制の崩壊後の混乱で、サブサハラアフリカ諸国よりリビアを経由し、欧州を目指す移民・難民が急増。EUなどとの協力のもと、同国は移民・難民が地中海を渡るのを阻止しようとしてきた。
リビアに留め置かれた移民・難民らの一部はGNA政府や武装勢力により収容施設へと送られることがある。収容施設では生きるために必要なものへのアクセスも絶たれ、外へ助けを求めることもできない。難民・移民から金銭を巻き上げるために脅しをしているほか、リビア人が暴行行為を行なっていることも分かっている。


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