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Libya Updates #27: October 2020 Week 2


こんにちは🕊
今週もリビアに関わる動きをまとめました。

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リビアのこれまで
40年以上続いたカダフィによる独裁体制が2011年に崩壊。新たな政府樹立を巡り、衝突が続いてきた。
現在は首都トリポリを拠点とし、国連の仲介で2016年に樹立した国民合意政府 (GNA)と、東部の都市トブルクを拠点とする政府 (HoR) が分裂している構図だ。
HoRが支持するハフタル将軍率いる勢力が2019年4月、トリポリへの侵攻を開始した。GNA側の民兵組織らが応戦し、武力衝突に発展。GNAにはトルコ、ハフタル勢力にはUAEやロシアなどがつき軍事支援などを行ってきた。
6月はじめにGNA勢力がトリポリを奪還し、ハフタル勢力は同地域より撤退。停戦へ向けた協議が進んでいるものの、現地での戦闘が続いてきた。

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1. 国内の動き

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GNA側とHoR側が1日から、モロッコで政治的和解へ向けた会談を続けている。
会談は9月上旬にも開催されており、今回が2回目。両政府は詳細を明らかにしていないものの、最終的な合意へ向け進展しているという。

対立する両政府を巡っては現在、国連のほか、エジプトやロシア、トルコなど複数の国や機関が和平交渉を仲介している。


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リビアでは2019年4月にハフタル勢力によるトリポリへの軍事侵攻が開始して以来、市民の生活状況は悪化の一途を遂げてきた。だがこうした状態は徐々に回復の兆しを見せている。

国内の石油の生産量は前週と比較して、日量2万バレル程度増える見込みだという。関係者が5日、ロイター通信社に話した。

ハフタル勢力は今年1月から9月までの8ヶ月間、油田につながる港を封鎖しており、以前は日量120万バレルだった生産量が10万バレルにまで落ち込んでいた。石油・天然ガスの輸出国であったリビアではディーゼル燃料などを輸入する状態が続いていた。
ただ、主要な油田のあるラス・ラヌーフやエッシドルでは輸出が再開していない。


全土で続いている停電の解消へ向けた動きもある。
国連は欧州やアフリカ、アラブの10ヵ国と協力のもと、ワーキンググループを作り停電を減らすことを目指すための提案を策定。同グループのEU代表は国連リビア特別ミッションのステファニー・ウィリアムズ暫定特使とともに5日、リビアの総合電気会社 (通称GECOL) の代表者と協議を行った。

リビアでは燃料不足などが原因で停電が頻発し、最大で1日に16時間停電していた地域もある。8月末から9月には、北西部や北東部で市民の抗議運動を引き起こした。


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一方、市民の暮らしは困難だ。
全土で銀行から現金を引き出すことが制限されている状態が続いているという。リビアは多額の負債を抱えており、特に地方銀行への打撃は大きい。


さらに国連は資金不足のため、リビアの人権問題の捜査の開始を先送りすることを6日に発表。
国連の人権委員会で6月、2016年以降の同国の状況について調査するチームの派遣が決定していた。

2011年と2015年にも捜査が行われているが、いずれも1年程度で終了している。
リビアでは政府や武装勢力などによる武力行使や拷問などの人権侵害が放置されてきた。GNA政府は6月以降、トリポリ南部のタルフーナで少なくとも8か所に集団墓地があることを突き止めており、これまでに女性や子どもを含む100〜200名の遺体が見つかっている。現場では普段、農業を行っている人が捜査へ駆り出されている


2. 国際社会の動き

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トルコ防衛省は2日、Twitterに掲載した声明でリビアのGNAへ引き続き支援を行う意志を強調した。
前日には国連が同国とGNAの間で結ばれた海上境界線の策定と軍事協力を巡る合意を承認している。

同国はトルコとともにリビアの停戦へ向けた動きを進めていたが、この数週間は大きな動きを見せていなかった。アゼルバイジャンのナゴルノ・カラバフ自治区で衝突が激化しており、両国が関与していることが背景にあると見られる。


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EUは2日、HoRのアギーラ・サレハ議長を制裁対象から外すことを発表した。議長に対するEUへの渡航禁止と資産凍結が解かれることになる。
リビアの和平交渉にEUが積極的な役割を果たす意欲を示した格好だ。同国をはじめ地中海地域で影響力を強めるトルコやロシアをけん制したい思惑も見てとれる。


3. 新型コロナウイルス 

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リビアでは8日(現地時間)時点で、累計39,513人の感染者が確認されいている。1週間の新規感染者数は4,988人1日に平均約700人以上の新規感染者が確認されている計算。累計死者数は608名で、1週間で57名の増加。


感染者数は5月まで数十人規模で推移してきた。爆発的な感染拡大が始まったのは6月で、1週間の新規感染者数が前の週を大きく上回る状態が続いてきた。

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リビアの人口は665万人ほど。
情勢不安の続いてきた同国では、パンデミック以前より医療保険制度がきちんと整備されていない状態だった。感染者に対応するための病床や医療器具なども不十分だ。
4月から5月にかけて、医療施設への攻撃も多発。6月から7月頃には市民が地雷の爆発に巻き込まれる事態が相次いでいた。


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今週は久しぶりに、リビアの様子をシェアして終わりにしようと思います。

首都トリポリの様子をモチーフにした作品です。
撮影・加工はリビアの写真家ヒバ・シャラビさん。Libya Updatesのシリーズのサムネイルに使用している写真を提供してくれている方です。


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