彼を愛して、僕は変わった。(序章)
滴り落ちる桜は、もうその役目を終えているのに
何かの始まりを感じさせずにはいられない。
僕が社会人となり、働き始めてすでに1か月が経過する。
慣れない仕事に、厳しい上司、とても苦手な満員電車に
異常なまでの早起き。
僕は疲れているのかもしれない。
いや、非常に狼狽しているにちがいない。
それはだれがみても明らかだったと思う。
だからあれは何かの間違いだと思いたかった。
もしあの夜の出来事を認めるということ、
つまり同性という存在に惹かれていることが
僕にとって事実なのだとしたら、
今後の人生が台無しになってしまうかもしれない。
それは合理主義者の僕にとって、適さない。
だからあの夜の出来事は間違いだ。
絶対そうだ。
ぼくは自分自身を必死に弁明していた。
自分がバイセクシャル、いや同性愛者という事実を
「どうしても認めたくなかったから。」
「人類って実はみな同性愛者なんだってな。だからお前もいつか目覚めるかもよ?」
大学時代の友人・たかゆきがそんなことを言っていたのをふと思い出す。
でも僕が人口のうちの13人に一人に当てはまる存在だなんて、
ありえない。。。。。
当時の僕はずっとそう思っていた。
この事実を、つまり自分が同性愛者であることを認めることは
すなわちある意味での社会的な死を意味していると。
でも、
今の僕はちがう。
自分が異性愛者ではなく、
同性も愛せるということを認めたことで、
自分の人生が各段に煌びやかなものに変わったことを、
僕は知っている。
だからいま、
自分がマイノリティの立場にある人に聞いてほしい。
この物語を。
一部の人間からは決して認められない、この事実を。
それがあなたの望むことであるのならば、
絶対にそれを追求すべきだと。僕は思うから。
この物語は、まだはじまったばかりだ。