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共に泣き歌うミューズ―モーパッサン「最初の閃光」論
詩人が想いを寄せる相手を様々なかたちで作品の中に登場させる例は枚挙に暇がないが、その内でもとりわけ、実際には詩人と極めて近い距離にいるとは限らない不在の人物を想像において主題とするとき、その姿や振る舞い、存在が言葉によって象られていく一方で、そうした全ては移ろいゆく詩人の想像力が生み出し続ける幻影に他ならないため、幻影と戯れる詩人の自意識も必然的に揺るがされるという特徴がみられる。こうして自意識
もっとみるシュペルヴィエルにおける詩人の死と海の表象
ジュール・シュペルヴィエル(1884-1960)の作品を概観したとき、海は重要なモチーフであり続けるのみに留まらず、作品の中でポエジーが何らかの変化や効果を生ぜしめる場、或いは、そうしたポエジーそのものとも重ねられる生成する運動体として、各場合に様々な意味を与えられている。同様に、不眠や心臓病を背景に持つ詩人の身体と、その終焉である死も、モチーフとして、ポエジーの場として、或いはポエジーそのもの
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