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大学教員の労働者としての権利がちっとも守られていない件

4月から現任校に着任して、どの大学も同じだなと痛感したのは、大学教員の労働者としての権利がないがしろにされているということです。

元々、有給休暇が取れない、裁量労働制という名目であたりまえに長時間労働を強いられるなど、大学教員の労働者としての権利はないに等しいのですが、特に、コロナ対応に追われるようになってから、それが顕著になってきたと実感しています。

この点について少し書いてみたいと思います。


学生>実験動物・家畜>大学教員

大学教員の皆さんにお尋ねしたいのですが、大学ではだいたいこのようなヒエラルキーではないでしょうか?
ちなみに大学職員はこのヒエラルキーからは外れています。

新型コロナの感染拡大にともない、緊急事態宣言が発出されたとき、ほとんどの大学で、学生の校内立ち入り禁止、オンライン授業の実施などの対応が取られました。

理系の大学では、実習や実験のために実験動物や家畜が飼育されていますが、多くの場合、実験動物や家畜の世話は学生が担当しています。
基本的に動物の世話は毎日です。
魚類の飼育では、朝・夕の1日2回の世話が必要です。

では、学生の校内立ち入りが禁止となった期間、動物の世話は誰がおこなっていたのでしょうか?
動物の世話のための学生の入構は例外として認められたのでしょうか?

当時、私が勤務していた大学では、「動物の世話は教員がやるように」とのお達しが来ました。

動物の世話もしながら、慣れないオンライン授業の準備をせよということです。

なかなかの無茶ぶりです。
コロナ対応という新たなタスクのおかげで、大学教員の労働時間は拡大する一方です。

感染対策は学生の感染リスクを下げるためであり、教員の感染リスクは二の次どころかほとんど考慮されず

大学の感染対応では、学生の感染リスクを下げるために、いろんな枠組みやルールが整備されていきましたが、そこには教員の感染リスクについてはまったく考慮されていませんでした

たとえば、これまで1クラスの学生をまとめて実習をおこなってきましたが、実習室に対して学生の人数が多すぎ、密になるという理由で、1クラスを2~3グループに分けて実習をせよ、でもあまり教育の質を落とさぬように配慮せよとのお達しが来ました。
つまり、これまで15回おこなってきた実習の内容は極力減らさずに、かつ、各グループに対して実習をおこなうので、結局、同じ日に複数回実習をおこなうわけです。

学生にしてみれば、実習中の密度も低く、接触する人数も減るため、感染リスクは明らかに下がるでしょう。

しかし、教員の立場から見ると、確かに1回の実習の感染リスクは下がりますが、同じ実習を複数回おこなうわけですので、トータルとしての感染リスクはそれほど下がりません。
しかも、1日に同じ実習を2~3回行うのですから、通常よりも時間がかかり、疲労度も半端ありません。
確実に免疫力の低下を招き、感染リスクはぐっと上がるでしょう。

大学のコロナ対策が教員の感染リスクを上げるという逆転現象が起きているのです。


大学教員だって労働者なんです
奴隷じゃありません

そもそもコロナ禍だろうが、なんだろうが、大学教員は裁量労働制だからといって、働かせ放題していいというわけではありません。

裁量労働制で働く従業員に対して、労働基準法を超える労働時間を強いることは法律違反となるのです。

「学生のため」「学生の学びの機会を守るため」「学生に不利益のないように」などのスローガンの下に、大学教員はこれまで以上の長時間労働を強いられています。
コロナ禍での大学教員の裁量労働制は現代の奴隷制なのではないかと思っていまいますね。


皆さんの大学ではいかがでしょうか?
もう少し教員を大事にしてくれる大学に勤務したいものです。


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