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任期満了を迎える現職市長をトップに持つ私たち公務員が気をつけること

市役所、区役所、町役場、村役場、都道府県庁、
トップが選挙で選ばれる行政組織で働く私たちには、
身近なはずなのに
あまり浸透していないのが「公職選挙法」

少なくとも私は
組織的に具体的に教えてもらったことはありません。


ただ、選挙が近づくと、
副市長とか総務部長とかの「依命通知」「依命通達」として、
「公職選挙法、地方公務員法などの法令遵守」という
さらっとした一言が通知されます。


みなさんの職場ではいかがでしょうか。

少なくとも私は、今まで、
公職選挙法に関する組織的な研修、説明は
受けたことはありません。
マニュアル的な、逐条解説なものも、見たことはありません。

たぶん、影響が大きすぎて、
誰も責任を持って話せないからかな~と思います。

だから、私もこのnoteで判断のようなものは
無責任に話せません・・・

でも、まもなく市長選を迎えるにあたり、
広報を担当する立場にいることもあって、
気をつけようと思うことをnoteしようと思います。


政治的中立

私たち公務員は「政治的中立」が求められています。
公務員の服務規律のひとつです。

・・・政治的中立

政治って?

私の今の時点での理解、あくまでも私見ですが、
ここでの政治的とは、選挙的だと思っていて、
特定の政治家を推すことだと解釈しています。

「世の中をいい方向へ導くことが政治です!」
みたいなことを言ってしまうと、
私たち公務員の仕事も、世の中すべての仕事が
政治です✨ということになり、
政治的中立とは、公務員の仕事の中立、
仕事を、前にも後ろにも進めない、
右にも左にも動かさない(右派左派ということでなく)、
みたいな意味にもなってしまいそうなので、
あえて、ここでは「政治とは」で、
こういう解釈はしないこととします。

政治家を推さないこと

この「政治家」という前提も定義が難しいです・・・

ひとまず、
選挙に当選した人、
選挙に出ようとしている人、
のことだと私は理解しています。

世の中に上から目線で発言するような、
あんた、総理大臣かい、みたいな、
「政治的発言」する、それだけでは
政治家に当たらないと思います。

阪神タイガースのファンでよくあるのは、
日本一監督の岡田監督がいる今、
監督気分で発言する人はあまりいないかもしれませんが、
負けが混んでくると、
監督気分で発言する人はたくさんいます。
それが「監督」でも「監督候補」でもないのと同じです。



政治家とは、に戻ります。
まず、選挙に当選した人はわかりやすいですね。
当選証書を受け取って、任期期間中である人です。

選挙に出ようとしている人、というのは少し難しいです。

たぶんですが、
選挙に出ようとしていることを
「知っている」か「感じている」という、
なんとも主観に近いと思います。
選挙に出ようと思っているかどうか、
本人が口に出さない限り、
出馬表明していない限り、
政治家とは断定できませんが、
伝え聞いたとか、なんか準備してるように見えるときは、
政治家だと思っている方が無難かなと思います。


政治的中立というのは、
選挙で当選した人、選挙に出ようとしている人を、
当選すればいいのにな~という気持ちで
おすすめしたり、
よく見せようとしたり、
紹介したりしないことだと思っています。

落選すればいいのにな~という気持ちで
ディスることも「政治的中立」ではないかもしれません。
ディスるのは、自分自身の品位とか、
誹謗中傷に値することを気をつけるべきかな。

つまり、
「政治的中立」とは、「選挙運動の禁止」
なんじゃないかな~と思っています。

6ヶ月前のポスターの掲示

特に規制されるのは、ビラの配布、ポスターの掲示です。
インターネット、ウェブ上ではわりと緩和されていますが、
「紙」という印刷物になってしまうと、規制されます。
(公職選挙法第142条文書図画の頒布)
(公職選挙法第143条文書図画の掲示)

「選挙運動」は「選挙期間の前」には禁止されていて、
「○○さんに投票してください!」というような、
当選を目指した言動は「選挙運動」とされていて、
立候補の届け出をしないとできません。
(公職選挙法第129条)

これを見ると、公務員じゃなくても
選挙期間中以外に、候補者を推薦することはかなり難しくなります。

できることは、
候補者の名前を出さずに、
公約、マニフェスト、方針っぽいものを伝えていく、
問題提起、集会告知のような
団体的なサークル的準備的行動だけかもしれません。
それも、気をつけなければ、
選挙期間中以外の選挙運動、「事前運動」との解釈が
されてしまう可能性があるので、
公務員もですが、特に政治家当事者は主体的に自らの責任で判断をしなければなりません。

なかでも、ビラの配布、ポスターの掲示は、任期終了前の6ヶ月間は
特に厳しく規制されていて、罰則もあって要注意です。

特に候補者が定員より多く、
落選する人がいると考えられるとき、
落選陣営から告発を受けないように、
法律等を読み込み、反論できるように
公務員も我が身を守る上でも
準備や知識が必要かと思います。

選挙前の公務員が気をつけなければならないこと

私たち公務員は、なんとなく、
選挙から距離を置くように、先輩方から言われているので、
個人的な行動で「政治的中立を欠く」人はほとんどいないと思います。

まさか、
ビラ配りや街頭演説に、業務の警備目的以外で近寄り、
ビラを配ったり、応援に見えるような、積極的関与をする公務員はいないと思います。

気をつけなければいけないのは、
任期満了が近づいた現職の市長のつかい方、扱い方です。

市長とは、会社で言えば社長に当たる人ですが、
その人の取扱、世間への出し方について、
特に任期満了の6ヶ月前からは
気をつけるべきだと思います。

市長は選挙の6ヶ月前から「選挙運動」、ポスター掲示の規制の対象になる人です。

聞いた話ですが、
東京地域のメディアでは、選挙の1ヶ月前から
現職含めその選挙に関わる政治家の出演は
自主規制しているそうです。
「事前運動」になる可能性があるからです。
時に、生中継なんて、危険きわまりないですね。
放送局だと、放送法なんかも考慮する必要があるのかもしれません。

関西地域では、選挙の3ヶ月前から自主規制するそうです。

ケーブルテレビはその辺りのルールがないこともあるようです。

このことを考えると、
市のSNSやYouTubeもどこまで出演するか。
写真や名前入りの印刷物をいつまで配布するか。
こちらで用意する市長の挨拶文をどうするか。

選挙期間中に広報誌の発行が重なり、
そこに現職の市長名と顔写真が入っていて、
裁判所から回収命令がされ、回収したという
判例があります。

選挙期間中に写真、名前入りの印刷物を配ることは、
「選挙運動」に値するわけです。

ということは、
選挙期間中以外、特に直前は「事前運動」にならないよう
十分な配慮が必要、とうことです。

この、配慮、が難しい。

ある大きな公的組織では、
選挙前の1年間は、見学者配布用のパンフレットに、
首長の名前と顔写真は印刷しないそうです。
それ以外の3年間は、名前入りと顔写真入りだそうです。

なるほどね~

広報担当のみなさん、
出馬表明記者会見も要注意ですよ。
それこそ「選挙」です。

秘書や広報を担当している方は特に、
現職の市長の言動、印刷物、タイミングに
十分配慮して、判断が必要ではないでしょうか。

究極的には、
政治家である市長の責任になるとは思うものの、
このあたりは十分に理解して、
君子危うきに近寄らず、で、
市役所の仕事をすべきかな、と思います。

この人を推してるという、
誤解を与えない、
そして疑われないことが肝要です。

私は自分に与えられた所掌事務のなかで、
ポカをしないように、気をつけています。
「依命通知」の「法令遵守」の中身について、
仮にも行政、法律のプロであるべきですもんね。
方針だけは決めて、
何か気づいたら私に相談するよう、
組織内で共有しています。

そして迷ったときは、
選挙管理委員会事務局に相談です。


選挙運動に関する違反には判例が少ない印象です。
判例がこれだけ少ないと、
なにがどうならダメなのかも
明確にわからないということです。
ただ、
知らなかったでは済まされないと思います。
「法令遵守と指示していた」と言われ、
組織は守ってくれない可能性もあります。

違反となると、かなりのペナルティがあるのが
公職選挙法、地方公務員法です。

気をつけます。気をつけましょう。

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