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太陽の塔/森見登美彦

森見登美彦さんといえば?夜は短し歩けよ乙女で有名な作家さん。

初めて森見登美彦さんの作品を拝読したときは、正直よくわからなかった。初めて出会う語り口調と完全に1人称「私」から構成される物語など森見さんの特徴といえる部分が今までの小説になく、内容が入りずらかったのが正直なところ。

ところがどっこい。読んでいくうちにこの語り口調なしでは物足りなく感じる中毒性。

今回は第15回 日本ファンタジーノベル大賞 大賞を受賞した「太陽の塔」を読み終えた。


振られたことを「私を袖にした」と表現したり、平凡な同じような毎日を「どの時点をとってみても金太郎飴のように同じ光景」と屈折した表現が「私」の心の屈折を表しているようだった。そして、森見さんの屈折表現力、語彙力の高さに感動する。

太陽の塔を読み終えた今となっては遊び倒したことでリア充を演出し、満足していた(したふりをしていた)大学時代を少し悔やみ、主人公が羨ましく感じるのは私だけだろうか。(いや、私の大学時代も決して悪くはないが)

金太郎飴のような毎日でも、彼らのように意味のわからないことに熱心になったり、物事を違う角度から見ることで、鬱々としながらも崇高な生活を送るのも悪くない気がしてくるのは森見さんの力なのか。。

恥ずかしさを乗り越え、過去と向き合うことが太古の生物たちの市街が石油となり現代の~省略~プラスチック製品は生まれないなどとスケール感が多き過ぎて思わず笑ってしまった。

ところどころにちりばめられている「夢玉」や「ゴキブリキューブ」などの印象的な言葉とどうしようもない事件にクスクスと笑い、ええじゃないかとつぶやきながら太陽の塔を見て、「なんじゃこりゃあ!」と叫ぶ日が近い未来に来ることを願いながら読み終えた。

森見さんの作品を読むたびに猫ラーメンや4畳半などお馴染みのボキャブラリーを見つけてはニヤニヤしていたら、もうあなたはシノラーならぬ森見登美彦ラーであだろう。

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