朝野

船舶調理師です。(無性別/ノンセク) そしてただのオタクです

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最近の記事

2人の悪魔 #17

全て我が手中に 冷えた空気が朝の雪山に浸透する。昇ったばかりの朝日が白雪の肌を仄かに温めていく。そして薄橙の光の帯が青白い地面を横断していく。その様は毎日見ても飽きることなどなく、時を忘れたかのように見つめてしまう。 「……綺麗だろ」 「お、起こしたか」 「いや」 背を隠す金糸のような髪をさらりと片側の肩に束ねて避けると、晒された肩に手をつきハーゲルも洞の外を見つめる。 「全ての時が止まったように…静かで美しい」 こちらを見つめるフェニの視線を横顔に受けつつ、かつて

    • 赤髪の女と平凡な女

      悪魔化の夢小説です。 いいか!?!!夢小説とは何かを知らない人は絶対に読むな!!! 責任なんて取らない!!!! 批判をするな!!!!読んでからの責任なんか知ったこっちゃねえ!!!! 取り乱しました。真実です。 悪魔化の中の赤髪の人形、マザーグースちゃん(通称マザグ)の現代芸能人パロと悪魔化世界線の派生軸魔女化パロ(正しい名称が今のところない)の2作を収録しています。元ネタを作っているフォロワーには既に中身を確認してもらっています。ご安心ください。 普段BLでどちゃどちゃの

      • 悪魔化SSまとめ

        2人の悪魔の元設定・オリジナルの世界観(共通)の中での話です。3作まとめ 偽りの演劇 悪魔ルキフェルは美しきものを愛している。 囲んで、愛でて、輝きがそこにある限り最大限の敬意を持って美しきものを愛している。 だからこそ、ルキフェルは定期的に人間の多い場所へ赴き、目に留まるものを探す。そうしていることで見つかるものはとても少ないが、その中でも時たま目を引くものが見つかるのだ。 月の見える深夜、丁寧に植栽された植木を通り過ぎた先に噴水があった。噴水は珍しく2段も3段も連

        • 2人の悪魔 #16⚠️

          蕩けた真意 ⚠️ややR18表現を含みます。 ただただ、衣擦れと熱い吐息と微かな水音だけが響く。 ハーゲルは手当たり次第にフェニの肌に触れていく。男は咄嗟のことに抵抗しようとするが、ハーゲルによって今し方貫かれた大穴のせいで思うように体を動かすことすらままならない。そのため今のフェニができることといえば、大人しくハーゲルから与えられる刺激を外へ逃そうとするくらいだった。 「…ハハ、首まで真っ赤」 「こ、こんな…!こと、されてたらっ、当然だろ…!」 「そういうもんか?僕には

        2人の悪魔 #17

          2人の悪魔 #15

          欲 ハーゲルはフェニの大腿部を貫いた後、一度寝ぐらへ戻って簡易的な包帯を取りに帰っていた。前の首を引っ掻いたのとは訳が違うためである。手に包帯を持って再度フェニの元へ現れた時のあの男の顔と言ったら。 「ハーゲル?!え、いやさっき帰って……え?トドメ刺しにきたとか?!お前がその気なら考え、ッう"……ぐぅ……」 「おい馬鹿か?動くんじゃねえよ。死にてえなら止めやしないが」 呆れてものも言えないとはこのことだと思っていると、流石に死にたくはないらしく、荒く息切れを何度も繰り返

          2人の悪魔 #15

          2人の悪魔 #14

          その男に焦がれて どうしてこんなことになってしまったのだろうか。 ハーゲルは治ったばかりの頭でそんなことを考えていた。男の住む雪山は基本的に他人が出入りすることはとんとなく、概ね1人か2人を除いては来訪者などないのが常であった。はず、なのだが。 「いや〜、お前のところにも人が来たら賑やかになるだろ?俺ってばやっさし〜!まあこれも快復祝いみたいなもんだよ」 「気でもおかしくなったのか?…ああいや、前からだな、すまない」 「やだ!ハーゲルったら俺に厳しくない!?!俺のことそん

          2人の悪魔 #14

          ファンアートならぬファン小説的なやつ(夢)

          フォロワーの描く一次創作に目が焼かれて勝手にキャラに一目惚れして夢女として男性サイド/女性サイドの小説を書く許可を土下座して許諾をもらったのはいいものの、まさかそれが フォロワーさんの人生初・夢小説になる なんてことが起きてしまうとは全く予想もつかないわけである。ふたつ分投稿前に推敲していただいて掲載許可もいただいたので以下に記すものとする。 ひとえに感謝感激。続編を書くことを誓う。 ⚠️攻略対象が男性のため、BL/NL表現を含みます 読了後の責任は持ちません 共通設

          ファンアートならぬファン小説的なやつ(夢)

          2人の悪魔 SS

          炎を踏み締める みし、と硬いものが軋む音がする。 フェニは己の頬ツノの上からかけられる圧力に密かに怯えていた。ハーゲルの足は薄いのだが男性型なりに大きい。その足の面全体でフェニの頬を覆う外郭を踏み砕くのではと思うほどの力がかけられている。微かに見上げた先では、深淵に浮かぶ緑がやけに楽しそうに揺らめいていた。 * 事の発端は、いつものように土床に座り込んだフェニが椅子に座るハーゲルに足が綺麗だなと褒めた事から始まったように思う。一瞬虚をつかれたような表情をしたのも束の間、

          2人の悪魔 SS

          2人の悪魔 #13

          朝露のくちづけ フェニがハーゲルの無意識意思に導かれて雪山を越えている間、当のハーゲルは珍しく体を壊していた。というのも、己の意思のままに槍を奮ったことが堕ちきっていない精霊の意思を刺激したことで己の中での意思達が反発しあったのが原因である。精霊はもちろん、悪魔も人間のような病気や熱に脅かされることはない。だが、似たような症状はこうして訪れることがある。これも人間の症状に例えるならば、偏頭痛と二日酔いのあとの気だるさに似たものといったところだろうか。ハーゲルはジャンヌと共寝

          2人の悪魔 #13

          2人の悪魔#12

          夢に雪降る 魔界というものは、基本的に天候に左右されることのない特殊な環境に置かれている。月の満ち欠けさえ稀なもので、時折悪戯好きで気まぐれな創造主たちによって多少齧られたような跡が残ったりする程度だ。だというのに、なんとも不思議な現象が起きた。 「…雪だわ、冷たくて…きれいね」 「ああ、こうして人間界でなくこちらで見ることになるとは思わなかったが…」 いつも通りの満月の夜に、なんの前触れもなくはらはらと小さな真綿が満遍なく空から降り注いだのだ。人間界へ赴くことのない悪

          2人の悪魔#12

          2人の悪魔 #11

          幸福は氷像となりて ハーゲルはかつて精霊であった。 冬を司る大精霊に仕える護衛騎士のような役を担っていた。男は雹を操る力を持ち、生まれ持った能力とは別に、自らの努力で手に入れた高い戦闘能力を携えていた。 彼が奮う力は同胞には細雪のように柔らかく降り注ぎ、敵には突き刺さる氷柱のように厳しく冷たいものであった。大精霊は男を含む同胞達をいたく愛していたし、雪を冠する幼き精霊の子らの隅から隅までを把握し、共に手を取り遊んであげていたくらい、冬の精霊一族は大変仲睦まじい「家族」であっ

          2人の悪魔 #11

          誕生日と家族

          皆さんは自分が生まれた日のことを聞いたことはありますか? 私は今月の7日に無事誕生日を迎えて28歳になりました。身長が174cm近くあって(というのも、なんか地味に縮んできてるからです)、今ではめちゃくちゃ健康優良児なわけですが… 出生当初は出産予定日よりも1週ほど早く生まれてよわよわのベイビーとしてこの世に生を受けておりました。 母はいつも誕生日になると同じ話を聞かせてくれます。 「思ってるより早く生まれちゃったからね、すごく小さかったのよ」 「ご飯も全然食べないし苦労し

          誕生日と家族

          2人の悪魔 #10

          闘気迸る ⚠️今回出てくる「三又の槍」はフォロワーさんにイメージ画像作っていただきました。それを元に描写しています 「ハイ、あーん」 「んあ」 口の中に花の蜜が行き渡る。その生気の余韻を舌で転がしていると、自身の身の丈ほどの匙を抱えた小さな淫魔が「ねぇ」と男に声をかける。 「ハーゲルってば、最近あの炎の悪魔に絆されてきてなぁい…?」 「げほっ!げほ、げほ…っハ、…何を」 取り繕う暇もなく、気管に息が詰まって咳き込む。言われた言葉を正しく理解できずに不覚にも一瞬思考停

          2人の悪魔 #10

          2人の悪魔 #9 ⚠️

          まるで甘露の中 ⚠️ややR表現を含みます。R15くらい またあのきもちよくて冷たくてうずうずするものを与えられると思っていた。…だが、そんな気持ちに反してハーゲルはフェニの背を土に横たわらせると手早く腰帯を解いて薄く開かれた彼の素肌に手のひらを滑らせた。 「…な、ァ……冷たい、ンだけど…」 「siー…」 ハーゲルの体温は低い。悪魔であっても体温はある、その中でもフェニは低温動物の組み合わせが多いにも関わらずかなり体表温度は高い。つまり、フェニとハーゲルでは天と地の温度

          2人の悪魔 #9 ⚠️

          2人の悪魔 #8

          吐息に魅せられて ⚠️匂わせR表現を伴いますが、全年齢向けです フェニは追い払われることもなく、来慣れた雪窟で大人しく床に腰を下ろした。なんの躊躇もなく床へ座り込んだフェニを見てハーゲルは何となく驚いた表情を見せたが、すぐに僅かな笑みを浮かべて言った。 「駄犬、自分がどこのポジションなのかよく理解しているようだな」 「なっ……アンタが毎回椅子に座ると床に引き摺り下ろすからだろうが!」 「それが"よくわかってる"って言ってンだ」 だろ?と意地の悪い笑みでにやにやとフェニ

          2人の悪魔 #8

          2人の悪魔 #7

          仲違い、そして 雪窟から戻ってきた友人がなんとも魂の抜けた生気のない表情であっちをうろうろ、こっちをうろうろとしては何回めかの溜息をつき…といった具合なのが目に余る。さすがに帰ってきて一晩すれば落ち着くと思っていた自分が浅はかだと思い知らされるほど長く続いた。 「なぁ君?あれから何週間経ったと思ってる、ずっとそんな調子だが…いい加減その辛気臭い態度を撤回してくれないか?そろそろ目障りなんだが」 「……ンなこと言われても」 今弱っているらしい、という噂を聞きつけたのか、こ

          2人の悪魔 #7