朝野
不定期更新の創作BLのまとめ読み用
氷に触れる ⚠️若干の他殺表現を含みます 俺ってハーゲルのこと好き、らしい。 らしい、というのはフェニが「誰かを好きになる、気に入った特定の人物がいる」という状態を今まで経験したことがなかったためでもある。実例がなにぶん現在の地点しかないのだ。 ただ、あの男に名前を呼ばれて喉をくすぐられたり、エラを逆撫でされたり、頭を撫でられたりすると途端に甘えたくなってしまって仕方なくなってしまう。もっと言えば、この身の内を全てあの男に暴かれたいとさえ感じてしまう。ここだけを切り取れ
信ずるものこそが 「なぁ、人間で言う『彼氏』ってなんだ?」 「ッブボバファ!!ゲホッ!」 汚いわね…と少女の呟きを背負いつつ、ルキフェルは知己の男から問われた内容に理解が追いつかず目を回した。額に手を当て、一旦沈黙を返す。今この男は何と言った? 「それを知ってどうするんだい」 「坊がこの前そんなこと言ってて…でもその単語?にもあんま聞き覚えなくて…どういうのを指すんだろうなと」 ルキフェルなら人間との関わりもあるし、知ってるんじゃないかと思って。そう話す男はこの話題に
花に酔う ⚠️ややR18表現を含みます アダムスとイーヴァの2人が帰ってから、ハーゲルは部屋の奥で保存食の整理をしていた。本来午前中に終わらせるつもりであったのが、予期せぬ来訪者のせいで遅れてしまったのである。春先のうちに集めた草花や蕾のついた枝木、咲き盛りを過ぎた花々を微細な氷でコーティングしたハーゲル専用の保存食である。 その中から去年の金木犀の枝木を手に取り、何本か手折る。その途端に折れた箇所から芳しい香りが立ち上った。 「……いい香り」 すん、と少し息を吸い込
赤に誓い、復讐に燃ゆ ハーゲルが自発的にフェニを住処へ呼び寄せることは非常に稀であり、大体そういう時は用事を言いつけられることが多かった。だから今回も何か頼まれごとだと思っていたのだが。 「出かけるのか?俺は留守番しとけばいいのか?」 「馬鹿言うな、僕の持ち物になったんだったらお前もそのうち関わることになる。来い」 どこにいくだとか、何をしに行くだとか、聞きたいことは沢山あったが、フェニは大人しくハーゲルの後をついて行った。主人の足が止まったところは住処からそう遠くない
愛は冷たく熱を持つ 双方の同意のもと、フェニが名実共にハーゲルのものとなってからそう何日も経たないうちに、ハーゲルの住処には客人が訪れていた。 「待って?俺がこの前ハーゲルにちょっかいかけた日からいつのまにこんな深い関係に??」 「顔が近い」 「いや……そんな冷静にツッコミするとこ?だって考えてもみろ!そこらの暴れん坊共を片っ端からのして叩き潰して壊しまくって遊んでたような男を手駒にしただァ?本気かよ」 「本当にそう思っているなら少しはその口元の笑みを隠したらどうなんだ」
全て我が手中に 冷えた空気が朝の雪山に浸透する。昇ったばかりの朝日が白雪の肌を仄かに温めていく。そして薄橙の光の帯が青白い地面を横断していく。その様は毎日見ても飽きることなどなく、時を忘れたかのように見つめてしまう。 「……綺麗だろ」 「お、起こしたか」 「いや」 背を隠す金糸のような髪をさらりと片側の肩に束ねて避けると、晒された肩に手をつきハーゲルも洞の外を見つめる。 「全ての時が止まったように…静かで美しい」 こちらを見つめるフェニの視線を横顔に受けつつ、かつて
悪魔化の夢小説です。 いいか!?!!夢小説とは何かを知らない人は絶対に読むな!!! 責任なんて取らない!!!! 批判をするな!!!!読んでからの責任なんか知ったこっちゃねえ!!!! 取り乱しました。真実です。 悪魔化の中の赤髪の人形、マザーグースちゃん(通称マザグ)の現代芸能人パロと悪魔化世界線の派生軸魔女化パロ(正しい名称が今のところない)の2作を収録しています。元ネタを作っているフォロワーには既に中身を確認してもらっています。ご安心ください。 普段BLでどちゃどちゃの
2人の悪魔の元設定・オリジナルの世界観(共通)の中での話です。3作まとめ 偽りの演劇 悪魔ルキフェルは美しきものを愛している。 囲んで、愛でて、輝きがそこにある限り最大限の敬意を持って美しきものを愛している。 だからこそ、ルキフェルは定期的に人間の多い場所へ赴き、目に留まるものを探す。そうしていることで見つかるものはとても少ないが、その中でも時たま目を引くものが見つかるのだ。 月の見える深夜、丁寧に植栽された植木を通り過ぎた先に噴水があった。噴水は珍しく2段も3段も連
蕩けた真意 ⚠️ややR18表現を含みます。 ただただ、衣擦れと熱い吐息と微かな水音だけが響く。 ハーゲルは手当たり次第にフェニの肌に触れていく。男は咄嗟のことに抵抗しようとするが、ハーゲルによって今し方貫かれた大穴のせいで思うように体を動かすことすらままならない。そのため今のフェニができることといえば、大人しくハーゲルから与えられる刺激を外へ逃そうとするくらいだった。 「…ハハ、首まで真っ赤」 「こ、こんな…!こと、されてたらっ、当然だろ…!」 「そういうもんか?僕には
欲 ハーゲルはフェニの大腿部を貫いた後、一度寝ぐらへ戻って簡易的な包帯を取りに帰っていた。前の首を引っ掻いたのとは訳が違うためである。手に包帯を持って再度フェニの元へ現れた時のあの男の顔と言ったら。 「ハーゲル?!え、いやさっき帰って……え?トドメ刺しにきたとか?!お前がその気なら考え、ッう"……ぐぅ……」 「おい馬鹿か?動くんじゃねえよ。死にてえなら止めやしないが」 呆れてものも言えないとはこのことだと思っていると、流石に死にたくはないらしく、荒く息切れを何度も繰り返
その男に焦がれて どうしてこんなことになってしまったのだろうか。 ハーゲルは治ったばかりの頭でそんなことを考えていた。男の住む雪山は基本的に他人が出入りすることはとんとなく、概ね1人か2人を除いては来訪者などないのが常であった。はず、なのだが。 「いや〜、お前のところにも人が来たら賑やかになるだろ?俺ってばやっさし〜!まあこれも快復祝いみたいなもんだよ」 「気でもおかしくなったのか?…ああいや、前からだな、すまない」 「やだ!ハーゲルったら俺に厳しくない!?!俺のことそん
フォロワーの描く一次創作に目が焼かれて勝手にキャラに一目惚れして夢女として男性サイド/女性サイドの小説を書く許可を土下座して許諾をもらったのはいいものの、まさかそれが フォロワーさんの人生初・夢小説になる なんてことが起きてしまうとは全く予想もつかないわけである。ふたつ分投稿前に推敲していただいて掲載許可もいただいたので以下に記すものとする。 ひとえに感謝感激。続編を書くことを誓う。 ⚠️攻略対象が男性のため、BL/NL表現を含みます 読了後の責任は持ちません 共通設
炎を踏み締める みし、と硬いものが軋む音がする。 フェニは己の頬ツノの上からかけられる圧力に密かに怯えていた。ハーゲルの足は薄いのだが男性型なりに大きい。その足の面全体でフェニの頬を覆う外郭を踏み砕くのではと思うほどの力がかけられている。微かに見上げた先では、深淵に浮かぶ緑がやけに楽しそうに揺らめいていた。 * 事の発端は、いつものように土床に座り込んだフェニが椅子に座るハーゲルに足が綺麗だなと褒めた事から始まったように思う。一瞬虚をつかれたような表情をしたのも束の間、
朝露のくちづけ フェニがハーゲルの無意識意思に導かれて雪山を越えている間、当のハーゲルは珍しく体を壊していた。というのも、己の意思のままに槍を奮ったことが堕ちきっていない精霊の意思を刺激したことで己の中での意思達が反発しあったのが原因である。精霊はもちろん、悪魔も人間のような病気や熱に脅かされることはない。だが、似たような症状はこうして訪れることがある。これも人間の症状に例えるならば、偏頭痛と二日酔いのあとの気だるさに似たものといったところだろうか。ハーゲルはジャンヌと共寝
夢に雪降る 魔界というものは、基本的に天候に左右されることのない特殊な環境に置かれている。月の満ち欠けさえ稀なもので、時折悪戯好きで気まぐれな創造主たちによって多少齧られたような跡が残ったりする程度だ。だというのに、なんとも不思議な現象が起きた。 「…雪だわ、冷たくて…きれいね」 「ああ、こうして人間界でなくこちらで見ることになるとは思わなかったが…」 いつも通りの満月の夜に、なんの前触れもなくはらはらと小さな真綿が満遍なく空から降り注いだのだ。人間界へ赴くことのない悪
幸福は氷像となりて ハーゲルはかつて精霊であった。 冬を司る大精霊に仕える護衛騎士のような役を担っていた。男は雹を操る力を持ち、生まれ持った能力とは別に、自らの努力で手に入れた高い戦闘能力を携えていた。 彼が奮う力は同胞には細雪のように柔らかく降り注ぎ、敵には突き刺さる氷柱のように厳しく冷たいものであった。大精霊は男を含む同胞達をいたく愛していたし、雪を冠する幼き精霊の子らの隅から隅までを把握し、共に手を取り遊んであげていたくらい、冬の精霊一族は大変仲睦まじい「家族」であっ