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赤髪の女と平凡な女

悪魔化の夢小説です。


いいか!?!!夢小説とは何かを知らない人は絶対に読むな!!!
責任なんて取らない!!!!
批判をするな!!!!読んでからの責任なんか知ったこっちゃねえ!!!!


取り乱しました。真実です。

悪魔化の中の赤髪の人形、マザーグースちゃん(通称マザグ)の現代芸能人パロと悪魔化世界線の派生軸魔女化パロ(正しい名称が今のところない)の2作を収録しています。元ネタを作っているフォロワーには既に中身を確認してもらっています。ご安心ください。
普段BLでどちゃどちゃのイチャイチャの話をメインで書いている人間が書いているので、ちょっと(?)甘めです。
記録用と、他の悪魔化を追っている人も読めるようにと思って残します。


Ⅰ:貴婦人とメイド


好みに仕立てて


私はしがないお屋敷のメイドである。
私の仕えるお嬢様は世間でも名のある舞台女優でもあり、淑女でもある。幼き頃よりお仕えしてきた身ではあるが、ある時からおそばに置いていただけるようになった。お嬢様はあまり側仕えを多く置かない方なため、おそばにとお呼びがかかった時は内心とても嬉しかった。あの人形のような白い陶器肌に、陽に透けると暖炉で燃える火よりもずっと赤く木苺のような赤い髪がさらりと溶ける。

「ねえ、こちらへ来て髪をすいてくれる?」
「仰せのままに」

薄い唇から紡がれる声は艶を含みながらも透き通ったもので、とても聴き心地がいい。いまだに慣れないが、震えを隠して赤髪に触れる。持ち上げた髪の下では真っ白なうなじがこちらを向いていて、その白さにうっと目を閉じる。一瞬挙動の止まった私に不信感を抱いたのか、「どうかしたかしら、何か気になることでも?」とかけられた声にはっと正気に返る。

「な、なんでも!大丈夫ですお嬢様、今日はいかがなさいますか」
「そうねえ、……いつも綺麗にしてくれているもの、あなたの好きなようにして」
「んぐ………あの、お嬢様?せめて今日はお出かけなさるんですからお決めになってくださいませ」
「だから言ってるじゃない、私はあなたに好きなようにして、と頼んだでしょう」
「………お嬢様」

こうなったらてこでも動かないし考えを改めないのを知っている。

「わ…かりました、そうおっしゃるなら!今回限り!私の好きなようにさせていただきますね!」
「ええ、うん、楽しみにしてる」

お願いね、と微笑まれた笑みはいとも容易く人間の情緒を破壊していくようなものだということをこの方には自覚していただきたいと常に思う。

くるくると髪に熱を加えつつ最後に型をするりと抜き取れば、緩やかなウェーブを描きながらスグリのような赤髪が落ちる。

「どう、でしょうか」

いざ取り掛かるとなると本気になってしまって、終わるまで気が抜けずにやり切ってしまった。恐る恐る鏡を見る主人を肩越しに見つめる。

「あら、ウフフ」

頬に手を当てて鏡を見つめ、くるりと毛先を巻いた髪に細く白い指をするりと通してはつま先で繊維をすいていく。
あまり見たことがなかった、というのもあってただ欲に従ってハーフアップにしてみたのだ。下へ降りている髪を全て内巻きにし、ハーフにまとめあげた髪を薔薇の形に織り込み、髪が落ちてくるのを防ぐために根元を薔薇の髪留めで止めることも忘れずに。

「あなたは"この私"が好きなのね」
「えっ」
「だって…ほら、言ったと思うけれど。あなたの好きなようにして、と言ったはずよ?私の好みに、とは言ってないもの」
「は、…ワ……」

しゅう、と顔から熱が放出される音がした気がする。きっと耳の先まで真っ赤なんだろうな、と思いながら彫像のように美しい口元が「ありがとう」と優しく笑みを浮かべた。



Ⅱ:舞台を魅せる女と人生を諦めた女


夢主お姉さん
20代後半
大好きな彼氏に浮気されて心身共にボロボロだったが、友人の紹介で知り合ったマザグに心を救われファンになる。その日のうちにFCに登録した。
無邪気な笑顔と時折見せる真剣な顔に夢中になる。恋のようなときめきに内心戸惑っている。

マザグ
20代前半
子役から本格的に舞台女優として活躍している。テレビなどで有名というよりは圧倒的にパフォーマンス重視。仕事によってはモデルなどもこなす。FCメンバーからはマザグちゃんなどと呼ばれることが多い。
舞台始めたきっかけは元々ユエラオがやっていた演目を見に行き、彼女の演技で人々が笑顔になっているのを見て自分もやってみたいと思うようになったから。


その口から聞けるなら


「初めまして…だよね、来てくれてありがとう。…そんなに見つめられたらさすがの私も恥ずかしいよ」
「………ひゃい…」

そんな言葉を、会話を交わしたのはついこの間のことだったかと思う。あの日は暫く放心状態で魂が抜けたかのように仕事も趣味にも没頭できていなかったところを、幼馴染が連れ出してくれたトークショーのイベントで彼女に出会ったのだ。……出会って、しまった。

透き通るような赤髪は染めているとは思えないほど色濃く自然で、優しい顔立ちに乗った無邪気な笑みや、時折見せる色艶のある表情が意識せずとも目を惹いてしまうのだ。

「芸名が…っていうと少し面倒なのだけれど。マザーグース…って言葉からマザグってファンの人からは呼ばれているかしら」

だから気兼ねなく「マザグちゃん」って呼んで、と微笑まれた時にどくりと心臓の奥の奥がざわめいたのだ。彼女が紡ぐ話も、彼女が魅せる表情も、彼女が踊り歌うその表現力も、全てが私を魅了した。狂わせた。夢中にさせた。そしていつかしら、自分を苦痛のどん底に追いやった男のことなど忘れてしまっていた。思い出せば湧き起こるのは喜びを全面に出して微笑む彼女のやり切ったような笑みと、湧き起こる歓声と鳴り止まぬ喝采だけ。

「……マザグちゃん、かわいいな…」

部屋でポツリと呟く。手元のスマホでは先ほど始まったばかりのオンラインライブの通知を告げている。震える手で通知を開けば、ユエラオとマザーグースの2人が可愛らしいパジャマ姿で手を振っていた。

『皆〜、ちゃんとお風呂に入ったかな?僕たちは今日入浴剤入れていー匂いのお風呂に入ったよ』
『少し甘めのバニラの香り?みんなはお気に入りの香りなんてある?よかったら教えてくれるかしら』
「…お気に入りの、香り」
『…柑橘?お花?フーン、確かに定番かも??』
『少し尖った香りも好きよ、そういう役柄の時はそのイメージの香水を吹けば気分だけでも切り替わるから』

手元にある香水瓶をちらりと見やる。部屋に置いているのは女性があまり好まないような『濃い』香りだ。スマホのキーボードを叩く手がふいに止まる。流れていくコメント欄はどう見ても可愛らしいもので埋まり切っていて、どうしようかと心に歯止めがかかってしまう。

『わぁ…たくさん教えてくれてありがとう、みんなのお気に入りがしれて嬉しいよ』
『お気に入りだと他人に教えたくないなってこともあると思うの、…でも私達は誰にも言わないわ、だから教えるのを戸惑っている子もよかったら教えてくれるととっても嬉しい』
「……え」

心を見透かされたようだった。どうしてわかるんだろう、と頭を傾げた。
コメント欄は一瞬固まったものの、ぽつりぽつりとその内容を更新していく。中には自分が過去に使っていた強い香りを候補に挙げている人もいて、ええいままよと普段使っている香水のブランドと香りを書き込んだ。
その途端、わ、と画面の中の2人が声を上げる。ねえ見て、とユエラオがマザーグースの肩をちょんちょんとつついて画面の中を覗き込んでいる。よほど面白かったりしたんだろうかと流れを見守っているとマザーグースがにっこりと微笑んだ。

『コアな香りって…その人そのものを表すようで好き。その強い香りで包み込んで仕舞えば、想い人もその香りで包んでしまいたいという独占欲の現れでもあるでしょう?私、そういうの大好きなの』

ね、と再び人を何人も破壊するような笑みでそんな甘いことを言う。
不思議なことに、なぜかその言葉は自分に向けられたような気がしてぞくりと肌が粟立つのを感じた。

『好きよ、教えてくれてありがとう』

瞬間、ライブ画面は投げ銭の通知で埋まる。囁かれた甘い声は普段よりもずっと重く心の中に飛び散って張り付いて剥がれなかった。気づいた時には唾が飲み込めぬほど、喉の中がカラカラに乾いていた。

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