ファンアートならぬファン小説的なやつ(夢)
フォロワーの描く一次創作に目が焼かれて勝手にキャラに一目惚れして夢女として男性サイド/女性サイドの小説を書く許可を土下座して許諾をもらったのはいいものの、まさかそれが
フォロワーさんの人生初・夢小説になる
なんてことが起きてしまうとは全く予想もつかないわけである。ふたつ分投稿前に推敲していただいて掲載許可もいただいたので以下に記すものとする。
ひとえに感謝感激。続編を書くことを誓う。
⚠️攻略対象が男性のため、BL/NL表現を含みます
読了後の責任は持ちません
共通設定
・攻略対象含む作中の名前は植物由来のため、夢主2人も植物から名前をつけた
攻略対象:シオンくん(18) 190cm
・外見のせいでよく避けられる
・最近はビンテージにはまっている
・大切な母親が死んだトラウマが有り、仮に人を好きになったとしても再び失うことへの嫌悪があるため密接な関係を作ろうとはしていないが、好きになったら積極的になるタイプではある
本人のイメージはドーベルマン(作者曰く)
・髪/瞳/肌:色素薄めの赤毛/金目/褐色肌
瞼と口唇は色素沈着でちょっと暗め
・睫毛が長い(!)、どちらかというと目つきが悪く不器用なタイプだが情には厚い(所感)
・同作の中の少女(おまけにて名前記載有)に心を寄せているが、本人も恋慕か友情かは把握していない
・作中では友人がピンチになった時にしか話に出て来ずスラムのような場所でひっそり暮らしている
(設定はフォロワさんとのやり取りの中から一部抜粋、掲載にあたり修正)
side:G
夢主(女) 設定
スラム街炊き出しお姉さん
ペーレ(ペンタス)
身長:170cm
商店の娘。明朗快活すこぶる元気、好きな人には不器用なピュアガールでもある。
治安が悪く誰もいきたがらないところへ走っていってとことん対応することでスラム街住民たちの信頼を勝ち取った実力派の女。
たまに買い出しに来る男の子がちょっと気になっていたが、のちに自分の弟と同い年くらいと知って「み、未成年…」と半ば諦め気味になっている。ちゃんと恋愛として好き。
*
花は光がなければ育たない
一般的に考えて、うら若き乙女というものは治安の悪い場所に近寄らないもの…であるはずなのだが。ある一帯でやけに子どもたちから人気の店があった。
「ペーレちゃん、新しいお菓子まだー?!」
「この前言ってた本、届いてる…?」
「ペーレちゃんってばぁ!」
「はいはいはい、お菓子はまた今度ね!本は明日届くよ、また明日来てね」
「ペーレちゃん!」
さらりと陽に透けた乳白色が金縁のメガネにかかる。柔らかな菫のような紫苑が子どもたちの笑顔を反射してきらきらと輝いている。
少女というほどの年齢でもないが、彼女は1人でこの店を切り盛りして何年か経つ。スラム街に住む子どもの1人に落とし物を拾ってもらったことをきっかけに、その子達に恩返したい一心で当時進んでやる者がいなかった炊き出し班に立候補した。最初は冷やかしだろうと思って遠巻きに見ていた者たちも、懲りずに毎度炊き出しを振る舞う彼女に1人また1人と折れていき、今ではスラム街の幼い子どもたちは彼女にすべからく懐いていてミルキーカラーの白い花とまで酒の肴にあがるほどの顔ぶれとなった。
そんな人気者の彼女にも年頃と言っていい悩み事があった。
「…注文してたものを」
「はい、お任せくださいね」
月に1度か2度、決まった曜日に現れる少年に心を奪われている。伏せた長い睫毛は金の瞳を覆い隠し、そっとそのかんばせを盗み見る。少し陽に焼けた小麦色の肌に暗赤色がかかっていて、隠れた右目に思わず手を伸ばしてしまいそうになる。
「…なんかあったっすか」
「う、ううん!なんでもないですよ、…あれ、今日いつもより多いですか…?」
「あー…っと、まあ」
いつもならお金だけ置いてすぐに去っていく彼が今月注文したものの中には明らかにサイズ違いの衣服がいくつかと、明るい色の布地が何点か。それから装飾用に加工する鉱石がいくつか。どれも彼1人の生活では全く縁のない代物ばかりだった。それを見て胸の内にじわじわと虫が食い始める。
わかっていたことじゃないか、他の大人たちから若い男に熱を上げてと揶揄われていたじゃないかと。こんなに気立がよく不器用でありながら情に溢れた少年ならば放っておいても引くて数多だろうに。品物を丁寧に折り畳みながら、同時に己の中で密かに温めてきていた柔らかな花たちを静かにぷちりぷちりと摘み取っていく。まだまだ成長する余幅のあった花たちは幼く息絶えた形のまま美しくその生気を失っていく。彼が手元を見つめている。その視線の先が物を包んだり畳んだりする指先に向いていることを自覚して、今このひとときが終わらなければいいのにと心底願った。
最後の1組を畳み終わって、彼の持参した布袋に積み込みながら手折った小さな花束をぎゅうと握りしめる。私がこの子にこの花束を渡すことはきっともうないんだろうな、と真っ直ぐ彼の目を見ながら思った。
「お待たせしました、いつもより重いので…気をつけてくださいね!」
「どもっす」
チャリン、とぶっきらぼうに硬貨の入った布袋が手元に落ちてくる。ずしりとした硬貨の重みは自分がたった今失った恋慕の重さのように感じられてぎゅっと下唇を噛んだ。
再び顔を上げた時には、彼の背中は既に角を曲がろうとしていて、「…待って」と細い声が喉の奥で掠れた。声が彼に届くはずなどなく、彼の姿は瞬く間に角の向こうへ消え、途端にペーレはへなへなと座り込んでしまった。
「う、……っうう…」
泣くつもりなんてなかったはずなのに、涙は出たらそのままとめどなく出続けて膝を濡らした。いつも涙とは縁のないペーレが声を押し殺して泣く様は人目を惹き、いつも彼女を揶揄う子どもたちまでもが彼女を取り囲んで口々に声をかけた。それがまた、ペーレの心を刺激してより一層頬を濡らしてしまったのである。
好きでいるだけならそれだけでよかったはずなのに。少しでも望んでしまったから神が罰を与えたのだろうか。それなら今度は仮面をつけてでもいい子にしますから、どうか。どうか彼をまた見かける時があっても心が傷まないようにしてください。
彼の横に立つ優しそうな少女に醜い嫉妬をしてしまわぬように。彼の顔に暗がりを落としてしまわないように。
side:B
夢主(男)設定
隣人のお兄さん(20くらい)
ヒメハギ(姫萩)
身長:175〜180cm
シオンくんの住居近辺でお助け屋さんみたいなことをしている。表向きはちょっとヘラヘラしてそうな青年(好きになると激重・尽くし型になる傾向があるが好意を隠すのもうまい)
元々いた地区から越してきて現在のところに住まいを置いている。元恋人に刺されそうになったりしているので明るいところに住むのはやめた。右肩から背にかけて植物の刺青がある
シオンくんとお近づきになりたい
*
恋は芽吹き、儚く揺れる
買い出しの帰りに家の前を通ると何度か目にした赤錆色が視界の端を掠める。たまに世間話をする程度の仲だが、最初は「……ス」のような挨拶とは果たして言えるのかどうか、というような感じだったので今の状態としてはかなり良好な方なのではと思う。とはいえ、己は彼の友人ですらないわけであるし、正直なところ一目惚れだったのでなんとかしてお近づきになりたいというのが本音であった。
「はぁ……」
家の中に入って心許ない施錠をする。流石に以前の住居で腹を刺されたのはあまり良くなかった。今回はそういうのは避けたいし、何より隣人である彼に迷惑をかけたくはない。
暗い部屋の中でたったひとつの光源である灯油ランプに火を入れると、薄暗い中に暖かな温もりが灯った。物の少ない部屋の中で、慣れた手つきで先ほど火をつけたランプから煙草の火を拝借し、深く深呼吸する。
男が吸う煙草は蜂蜜のような甘い匂いで、それはかつて不眠だった男をひととき慰める必需品でもあった。
「…あ、やば、今度部屋で不始末起こしたらまた退去になるんだった」
今腰を据えたばかりの膝に手をついてあってないようなベランダに出る。夜の冷気が少しばかり熱気を帯びた肌に心地いい。
「煙い、アンタまた懲りずに煙草吸ってるんすか」
「えぇ〜〜、まあ、未成年受動喫煙になっちゃうよねえ」
「今更でしょ、こんなとこ住んでて」
「確かに」
彼がこの時間に外へ出ているのも珍しい。あわよくば一言二言交わせたらなとは思っていたので内心露店で値切り交渉にキレた親父に感謝した。今日だけは許してやる。
「シオンくんさ、今日はめずらしーね?子どもは早く寝た方が身長伸びるよ」
「これ以上伸ばしてどうするんすか、それよりアンタ俺より身長低いんだしアンタが早く寝たらどうなの」
「あはっ正論」
シオンくんに言われたんなら早く寝ないとねぇ、とベランダに置いている吸い殻入れに煙草を放り入れる。もう少しだけ吸えそうだったそれは、無惨にも暗い底へぶつかってジュウとか細い悲鳴をあげて絶命した。
「シオンくんが俺の体の心配してくれるなんてお兄さん嬉しくなっちゃうな」
「ハ、なんすかそれ。アンタに兄弟がいたなんて話聞いたこと無いっすけど」
「つれないこと言う」
「アンタにとっても、俺にとっても互いに他人でしょ」
そうだね、と答えた声が僅かに落ち込んでしまう。彼のこうした他人を突き放すような態度に何か理由があるんじゃないかと思いはするのだが、そこに無闇に踏み込んで嫌がられるような真似はしたくない。が、そのへりだけでも覗けたなら。
そろそろ肌寒くなってきたのもあり、部屋に戻る前に少しでも顔が見れたらなと悲鳴を上げる柵に無理やり腕を引っ掛けて前のめりになるように力をかける。少しだけ見えていた暗赤色はかすかな月光に照らされて透き通った色味をより濃く映している。
「シオンくんは好きな人とかいないの?幸せになってほしい人とか」
「1番そうなってほしい人はもういないんで。…ていうかそれ、ただの隣人のアンタに教える義理ないっすよね」
声色に苛立ちの色が混じる。彼がそう気性を荒立てることは中々ないと思っているため、もうさすがに探るのはだめかとおとなしく「ごめんね」と引き下がる。ただ、これで彼に少なくとも「そうなってほしい」相手がいるであろうことは推察できた。それがなんとなく胸の奥を苦くした。勝手にこっちが好きになって気になっただけで、彼の負担にならないようにしたいだけで。でもそれでは到底満足できなくて。けれど彼は自分よりも歳が下で。
「………あーあ」
「…?アンタ早起き苦手なんでしょ、いつも怠そうな顔して外出てんだし」
「やべ、見られてた」
不摂生ってやつじゃないの、という言葉を後に隣からの声が途切れる。戸を閉める音など聞こえなかったが、かすかに奥の方へ入っていく音が聞こえて今日はおしまいかあとずるずると己も部屋へと引き下がる。夜風に吹かれていたはずの頬は表面こそひんやりと冷たかったが、長く押し当てた肌はじわりと熱を持っていて壁にかけた小さな鏡に映った己の顔は笑ってしまうほど赤く染まっていた。…それこそ、あの少年の燃えるような赤髪のように。
「…ああくそ、好きだ…最悪…」
やるせない気持ちが肥大化して割れて壊れて仕舞えばいいとさえ思った。やけにちょっかいをかけてくる面倒な隣人だと思われる程度でいてほしい。厄介だと思われたくない。好きで、好きで、勝手に好きになって。
「……おれ、あの子とどうなりたいんだろ…」
絶対にないことだと言い聞かせるものの、「もし」という甘い話が小さく芽吹いてしまった。そうしたらどんなに水をやらずとも勝手に育っていってしまう。除草剤をどんなに撒いても木々は生い茂って豊かな花をつけてしまうのだ。
「考えるな、考えちゃだめなんだってば、」
優しい声で名前を呼んでもらえたら。
目を見てほんの少しでも笑ってくれたら。
「好きだよ」なんて言わなさそうな彼のことだから、肩を寄せて温度を共有してくれたりするんだろうか。
そんな相手はいたんだろうか。
彼が気になる相手が羨ましくて仕方がなくて。
「…シオン、くん」
獲物を射るような鋭い金の目は常に爛々と輝くも、どこか虚げにも見えて、それがまた彼の孤独を感じさせた。
唯一になりたいだなんて我儘は言わない。愛してほしいだなんて面倒なことは言わない。けれど、君の中のスペースに片足だけでも入れてもらえるならば。
「……なんて、夢のまた夢だ」
ため息をつくように吐き出された吐息が嘲笑うかのように、少し離れたランプの明かりを容赦なくかき消した。
おまけ
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