まえがき

 今年の5月頃からぼくは実験的に始めた事があります。ブログを書くという事です。それとFace BookなどのSNSを再開しました。ぼくは演奏家の傍ら、環境の啓蒙活動や、これから話す地無尺八をライフワークにしていまして、持続可能的な生き方を目指していました。過度なPRなどをなるべく控えて。演奏家としてはかなり致命的な活動方法だったと思います。でも後々色々と見えてくる部分もあって、それはそれで良かったと思っているのですが。去年くらいから、そんな自分を深い底からひっぱり出してくれた出会いがいくつかあり、社会との繋がりを改めて持ってみようと思った次第です。でも初めてみると、なかなか面倒で。ぼくは、この歳になっても、どうしても苦手な事があります。一つ目は、何かを長く続ける事です。ぼくは12歳から尺八を続けていきましたが、如何せん、それ以外の事には興味も湧かず、今でも長く続ける事が難しい性分です。そして、もう一つは執筆作業。字が綺麗でない事と、あとで話そうと思っていますが、なにぶん、言葉にする事がどうも苦手でして。それでも、こうして自分自身の事を知るきっかけができた事に嬉しく思っています。末長くお付き合いいただけると幸いです。

 さて、少し本題に入っていきます。そもそも「地無尺八」というものを知らない人の方が多いと思います。そして、これからお付き合いいただくために、少し、ぼくなりの考えをお話します。

「地無尺八」とは。

 地無尺八は江戸時代、禅の僧侶、普化宗の虚無僧が法器として使用していた楽器です。その作りは竹を取り、節を取り、指穴を空け、歌口(息を入れる部分)を作るというとてもシンプルなものです。これを「地無尺八」といいます。余談ですが、現在、一般的に言われている「尺八」(以下、現代尺八)は、明治以降改良され、管の中に漆を使い、ピッチを正確に、また音が響きやすいよう加工されたものをいいます。ぼくも普段の合奏は現代尺八を演奏しています。(今回、この話は省きます。)

「地無尺八」の魅力とは

 地無尺八の魅力は、一つは竹一本一本で響き方が違うという面白さがあります。竹の出会いで、また曲や表現も変わると言っても過言ではありません。もう一つは禅の哲学性と身体性の追求に繋がるという事です。そのような事にも執筆の中でお話できたら良いなと思っています。

「哲学性と身体性」とは

 もともと、日本文化の多くは哲学性や身体性の追求するものがほとんどでした。芸能と呼ばれるものです。技術を育てるのと同じくらい、心も含めた哲学を磨いていきます。これには、相当時間がかかるものですし、習得は自分次第というところもあります。いかにも日本的で面白いところだと思います。これはある意味、「芸術」とは異なるものです。

「音とは何か。」

 通常、西洋では「楽音」(しっかりた音で倍音が響く音)をよしとしてますが、尺八は噪音(そうおん)といって、雑味のある音がよく使われます。また、メリ・カリといって暗い音・弱い音、明るい音・強い音を使い分けます。その世界観は「空(くう)」に似ています。つまり今この出た音に良い音も悪い音もない。ただ在る。そういう事を教えてくれます。

 不立文字という言葉をご存じでしょうか。真理は言葉では分からないという言葉です。尺八の演奏(以下、吹禅)はもともと口伝で伝わってきたもので、譜面におこしても伝えきれません。音とはそういったもので在ると教えてくれます。時として言葉や文字はとても便利ですが、その背景や無いものを見る感覚が抜け落ちます。私たちが見えているもの、知っている事が殆ど見えていないものと等しいと教えてくれます。

「地無尺八を吹く」

 呼吸を見ると、その人がどんな人かが、すぐにわかります。それは、顔に在る蝶形骨(表情筋と繋がっている骨)が背骨を伝って、仙骨まで連動しているからです。 

「地無尺八と禅」

 「禅」は600年代に中国から伝わったとされるのが通説で、紆余曲折あり定着したのは鎌倉時代以降です。一方、普化宗ですが、1335年に、天外明普が虚竹了円を開山。1871年、廃仏毀釈により廃寺されました。現在は「教法人普化正宗明暗寺」として再興されています。

「地無尺八の魅力 ー 竹と共に生きる ー」

 ぼくは、たまたま11歳から哲学について思考をめぐらせるようになり、また身体性に関しても30代半ばから学ぶようになりました。それが禅の世界観と相まって、尺八の新たな魅力を感じるようになりました。本当にとても幸運です。良い音を奏でる事や技術に集中する事も必要ですが、その先に在る大切なものに触れる気づきと機会をもらえたように思います。

 ここからが始まりなのですけれどね。

 話が長くなりましたが、「地無尺八の魅力 ー 竹と共に生きる ー」は、普化尺八の動向や知識を深めるものではなく、私自身が心から感じている事、経験などを通してお伝えしていきます。感想などコメントも添えていただけると幸いです。

 またブログもそうですが、本格的に地無尺八の活動も始まります。年4回開催する「禅の響 ZEN no OTO」が10月22日から始まります。(チケット)足をお運びいただけると幸いです。

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