かしづくよ星月夜 【秋の30句】
秋祭うらぶれし身にペイントす
秋桜をちぎる男の足泥濘る
泣くことを忘れ見つけた夜の露
太刀魚の狂気のまなこ出社する
碧海の笠間の皿に酢橘かな
子規の忌に筑波は雲を被きけり
たまご二個にがうり半個これ極み
銀粉を散らし版画の名月か
TGC A/W の竜田姫
振らずとも音知っている砂糖黍
オーボエの下り音階鮎落ちる
秋興や荷解き残した箱にUNO
静座して向き合うシヴァの夕月夜
おしろいの草繁り児を飲み込むか
鵯の頬赤らむよ終の恋
似たような不揃いの日々吾亦紅
去りし日に未だ傅くよ星月夜
静物画の前に起きたる有りの実よ
花臭木届かぬ人のEライン
早稲の只なか早逝のひとの唄
ひそやかにキスをホップの蔦の陰
歳月と添水と岩と覚悟かな
虫の音か魔王討伐前夜の火
路地裏に負けが嵩んで弟切草
坂下る背を見届けて秋の雷
人間の熱すり抜けて涼新た
芭蕉の葉ふたり稚拙な雨宿り
鈴虫に祈る輪廻転生
呼ぶ風に常世の薫る秋扇
初秋の皮膚と臓腑の温度差は
ご支援頂いたお気持ちの分、作品に昇華したいと思います!