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レントよりゆったりと〔随想録〕

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2020年9月の記事一覧

エッセイ/中秋の名月まで ③ そらなる悲しみを虚空まで

エッセイ/中秋の名月まで ③ そらなる悲しみを虚空まで

明日は十五夜。平安時代に活躍した月の歌人、西行法師にちなんだエッセイも今回でラストになります。とはいえ①では上田秋成の『雨月物語』について、②は出家遁世について仏陀に絡めてお話したので、肝心の西行自身の和歌についてはあまり触れられていませんでした。今日こそは、有名作品についてちゃんと読解したいと思います。

ところで皆さん、悲しいときーってありますよね。個人差はあれど、悲しいという感情を経験したこ

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エッセイ/中秋の名月まで ② 出家遁世

エッセイ/中秋の名月まで ② 出家遁世

家出(いえで)したい、と思ったことはありますか? 幼少期の家出願望とは不思議なもので「本当に家を出たい」というより、「構ってほしい」「分かってほしい」という気持ちの現れのような気もします。武器として、交渉道具としての家出。もしくは「何もかもイヤになったのは家のせいだ」といった、スケープゴートを捧げる儀礼としての家出。

(もちろん、本当に家族がヤバい人たちで、自分の身を守るための真の家出というもの

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エッセイ/中秋の名月まで ① 雨月物語

エッセイ/中秋の名月まで ① 雨月物語

今年の「中秋の名月」は10月1日のようです。日本人が月を愛でる気持ちは『万葉集』から盛んに詠まれてきましたが、月が秋と結び付けられたのは平安後期頃だそうです。
平安後期から鎌倉初期に活躍した歌人に西行法師という方がいます。勅撰和歌集に照らし合わせると『千載集』『新古今集』の時代です。西行の詠んだ月の歌は、おおよそ400首あるそうです。そのうちの一首

願わくは花の下にて春死なむ
そのきさらぎの望月

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