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RIPPLE〔詩〕

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#詩歌

膨れる 薄まる 【詩】

膨れる 薄まる 【詩】

青空に見限られた心は
まだオレンジの香り
消えないように薫き染めた
A6用紙の世界に栞

行間から洩れ入る光の
かすかな熱で
蒸発させた情念を
多動症として生みなおす

ロッカーはリミッターを外せと歌った
詩人は超感覚の世界を勝手に覗いた

凡庸な病人のわたくしは
比較的調子の良かった数日を
一生にまで延長する

夢を「夢」として見たら終わり

限られていた 何かが 開かれてゆく
かつて 情念だっ

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四行詩 30.

四行詩 30.

  戦友の姿が見えない
    ずっと傍にいたはず

  僕が戦うべきでなかったものを
    僕の代わりに

  掴み 拐い
    去っていったか 虚空へと

  息吹と笑顔を感じている
    歴史とは心のことだ





今年も大変お世話になりました!
どうぞ良い年をお迎えくださいm(_ _)m
#詩 #詩歌 #ポエム

四行詩……か?

四行詩……か?

  「四行詩???」

 心臓に腕 腎臓に目玉 などと書かれた

 メモの旅立ちを見送る窓辺

 歳月に裁断される言葉たち 赤らんで

 ──歩み出す── 背を飾る花吹雪




#詩 #ポエム #詩歌 #文芸 #創作

詩「最後尾のダンス」

詩「最後尾のダンス」

  「最後尾のダンス」

 僕を見る僕、を見る僕、を見る僕──

 ──最後尾だね

 名もない小惑星に立つ

 僕から遠いところで僕らが

 勝手気ままに踊っている

 サンバ、ロックに、あれはゾンビか

 膝を抱えて眺めていると

 独りでに口が尖ってしまうよ

 誰にも知られず肩を揺らす

 銀河に深く沈み込む振動

 これは、いつまでもやまない音だ

 僕だけずっと眠れないのか

 なあ、

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詩「恥じらいのあらわ」

詩「恥じらいのあらわ」





「恥じらいのあらわ」

流行りのシャツに袖を通して
裸になっていく少年少女
夕闇にいちど溶け
朝日に散りゆく
逆光のシルエット
粒子がたなびいて代弁した
かの人の健勝と
かの人への羨望を
裸になれないわたしは
恨めしそうに衣を脱ぎ去り
草をまとって 朝露の羊水へ……

空よ あなたに
甘えるように仰向いた
誰も
わたしの背中を見ませんように


#詩 #詩歌 #ポエム #文芸

暗室に潜む【詩】

暗室に潜む【詩】

  黒曜石の乳房が睨んだ

  唐突に無数の手が伸び彼を囲んで

  思い思いに金粉を塗れば

  針葉樹を象った僕だけが取り残された

  あらゆる「触れられない」を集めて

  いちど限りの宵に酔うひと

  美しくない、などと云うのは誰か

  僕の声をした僕じゃない声

  閑寂の方に耳をすますと 壁が

  銀食器を敷き詰めた壁が闇に溶け出す

  床が迫り上がり 天井は墜ち

  両性

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