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RIPPLE〔詩〕

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2019年5月の記事一覧

海を望む小さな書店で運命的に出会った人。イヤイヤ連れていかれたダンスフロアーで、忘我の渦に舞っていた人。もし、同じ木の同じ花の同じ蜜から産まれ出たなら……わたしだって、どこかへ行けそうだ。そこで誰かになれそうだ。友であるつむじ風にまかせて、いつか燃え尽きた灰を集めて。

霞みがかった山々から、優しい笛の音が降りてきた。木々や民家の、そして住宅やビルの合間を縫って、宙に大地に充ち満ちていた。湿度のように気圧のように、太古から僕らを包みながらも、いまだ名の付かぬ音がある。光り、香る、甘い滑らかな音よ。取り戻そうか、名を呼ばなくとも感じられる身を。

衛星のごとき白き雲が降りてきて、もみの木に突き刺さろうとしていた。潰されるのか、大爆発か。いずれにせよ無事では済まないだろう。君ならどんな結末を望む?ごめんね僕は離せないんだ。木にしがみつく泣き虫の手も、君の手を握る弱虫の手も。

大人の領分

大人の領分

小雨を降らすに飽きた雲が散る

散った子どもらはまた群れる

空と大地の緩い法則

雲がまた群れる

子らは散らない

雷鳴に呼応して騒ぐ椋鳥

冷めた夕風に脱力する蝶

被造物としての正しさ

かの人が身を潜めれば

うねりはじめる価値の色合い

ようやく取り戻せそうだね

この小汚いワンルームへと

愛する人よ、ちっぽけな人よ

         (出番だ)

ああ、また光が射してきた

いつ

もっとみる
去った鳥は今も

去った鳥は今も

飾り気のない鉢植えに

舞い降りて散った花を見たくて

きっとまた見たかったから

カーテンの前と机の上を

何度も往復させていた あなたは

陽の射す時間

示す砂時計の 落ちきる最期の一粒さえも

惜しむみたいに

よれたシーツと転がったままの わたしは

えらいね とも

ムダだね とも

言えなくて ただ口を開いたら

つい 好きだ と飛び出してしまった

あの日 窓からデネブを目指した

もっとみる
うららかな日に

うららかな日に

古びた部屋の隠された棚

コップに挿した一輪の野草

枯れない、枯れた花の声に

耳を澄ませてみるといい

「水を替えてください」

ーもう咲かないのに?ー

軽く花瓶を指で弾けば

鈍い音に重なる錆びた僕の声

突如、差し込んだ春の陽光

心を揺らす陽炎が立つ

踏みにじられた想い溢れて

僕はひざをつく

うずくまる

誓う

この花は捨てない