霞みがかった山々から、優しい笛の音が降りてきた。木々や民家の、そして住宅やビルの合間を縫って、宙に大地に充ち満ちていた。湿度のように気圧のように、太古から僕らを包みながらも、いまだ名の付かぬ音がある。光り、香る、甘い滑らかな音よ。取り戻そうか、名を呼ばなくとも感じられる身を。

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