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檸檬読書記録 『雲神様の箱』 『秘密の花園』

今日の本は
円堂豆子『雲神様の箱』(全3巻)

古代日本を舞台にしたファンタジー小説。

山を移動し毒を操る一族、土雲に生まれたセイレンは、双子は災いをもたらすという習わしから、姉である石媛は敬われるが、双子の妹であるという理由だけで「災いの子」と虐げられていた。

ある日、セイレンは姉の石媛の身代わりに、罪を被り処刑させられそうになる。
散々我慢してきたが、自身の身が危なくなったことで、一族から逃げ下へと降りることに。
末に出会ったのが、大王に叛逆を目論む若き王・雄日子という男で、セイレンは仕方なく雄日子の元で彼を守る者として留まることになる。

セイレンはあらゆる理不尽に怒りを抱えながらも、雄日子やその周りの守り人と出会い接することで、心情を変化させていく。
一族から離れ視野が広がったことで、一族の異質さを知り、セイレンは自分の一族に疑問を持ち初め、次第に土雲の一族や一族が使う雲神様の箱についての謎に迫っていく。


といった内容で、なかなかに壮大で壮絶な話だった。
最初から最後まで、主人公であるセイレンがとても不憫で、読んでいて辛くなることも多々あった。
だけどそれ以上に、それでも立ち向かって考え続け、悩み苦しみながらも答えや自分の道を見つけていく姿に、読む手を止めることなどできなかった。胸を突かれまくってしまった。
純粋なところも愛らしく、読み進めるにつれて惹かれ、好きになっていた。

設定もしっかりとしていて、歴史を見ているような読み応えがあった。
土雲一族とは一体何なのか、一族が祀る神とは、そして毒を生み出す雲神様の箱とは何なのか、気になる謎や設定が盛りだくさんで、飽きさせない。最後まで気が抜けないものになっている。

特に、盲信している神について、疑問に持っていく箇所が興味深かった。
例えどんなに素晴らしいものでも、周りが信じているから間違いないと思わずに、疑問を持って少し考えてみることは大事だよなあと思わされた。
盲目的なものには、やはりどこかしらの穴があるのかもしれない。なんて、思ったり。

それだけではなく、人間模様も興味深く魅力的で、どう変化していくのかも見ていてわくわくさせられた。

3巻で終わってしまっているのだが、3巻で終わってしまったのが惜しくて、もっと見ていたかったと、名残惜しさを感じさせる作品だった。

そして読んでいて思ったのだが、内容は全く違えど、萩原規子『RDG  レッドデータガール』シリーズを好きな方は、もれなく『雲神様の箱』シリーズも好きなのではないかなと感じた。
ファンタジーであり、古代日本であったりする部分が似ているかな、なんて思ったり。(『RDG  レッドデータガール』の方は、現代日本が舞台だけど)



もう1冊は、
バーネット『秘密の花園』

両親を亡くした女の子が、引き取り先で閉ざされた庭園を見つける。
女の子・メアリはその庭園を気に入り、世話役の娘の弟で、植物に知識があるディコンと、存在を隠されていた屋敷の息子・コリンと共に、庭園を蘇らせようとする話。

この本を読んで、最初に驚いたのは主人公であるメアリの性格だった。かなりの有名作品故に、少し問題のある少女だとは認識していたけど、思った以上の我儘娘だった。主人公としては、なかなかに珍しい性格。だが、その性格だからこそ、この本はここまで有名になったのではないかと、読み終わった後に感じた。

我儘だったメアリは、自然に触れ、あらゆる環境の人と出会い、変化していく。その変化の過程を見ていくのも、この本の見所だと思う。
それだけではなく、その性格だったからこそ、難しい性格の人とも打ち解けたりと、我儘だから駄目だとか、元からそんな性格ではなかったかのように消したりしないで、きちんと生かしている。物語だけど、現実に近づけているようなところに共感が持てた。

そしてこの本で何よりも素晴らしいのは、やはり自然だと思う。自然の持つ力や影響力を伝えてくれているところだと思った。
自然と共にあり、自然に学ぶことで人は成長し変化すると教えてくれている気がした。
だからこそ自然を大切にしなくてはと、再認識させられた本だった。

自然はやはり素晴らしいなと思いつつ、今回は閉じようと思います。
ここまで読んでいただき、ありがとうございました。
ではでは。




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