檸檬読書記録 『仙文閣の稀書目録』 『鴎外の恋』
今日の本は
三川みり『仙文閣の稀書目録』
文杏という少女は、恩師が残した1冊の本を巨大書庫・仙文閣に納めるべく、追手から逃げながら向かっていた。
仙文閣とは、そこに干渉し本を損害した場合呪われ王朝は滅びるという伝説の場所で、そこに向かう途中司書である青年・徐麗考と出会う。
無事に仙文閣に到着したものの、青年に蔵書になっても本が永遠に残るわけではないと言われてしまう。
何故残らないのか、仙文閣の秘密を探るべく文杏は留まることに。命がけで本を守ろうとする少女と天才司書の中華風小説。
前半は突起するものもなく、すんなり進んでいく。だが、後半は凄い。前半が嵐の前の静けさのごとく、怒涛に終わっていく。
1つだけ疑問を残す箇所はあるものの、きちんと回収し納得の終わり方。世界観もしっかりしているから、入り込みやすい。自分も仙文閣のようなところで働けたらなと思わされた。
本好きには刺さる物語だと思う。
そして何よりこの本は、本について考えさせられる作品だ。
本当に本は、ずっと残っていられるわけではない。そのことについて、考え深くなる。だからこそ1冊でも多く掬いだして、1冊でも多く読みたいと思った。
今の時代、次々新しい本が生まれて、同時にあっという間に消えていってしまう。だからこそ1冊1冊大切にしていきたい。その中でも原石を探し出して、残せるようにしていきたい。そう、思えた。
本を変えて
六章いちか『鴎外の恋 舞姫エリスの真実』
この本はちまちま少しずつ読んでいて、2ヶ月以上かけて、ようやく読み終わった。
内容はベルリン在住の著者がひょんなことがきっかけで、森鴎外の残した『舞姫』エリスのモデルを捜していく、というものだ。
何より面白いのが、この本は全てが偶然で完成している、ということ。もはや必然のように物事が進み起こり、解き明かしていく。それはまるで推理小説のように。
始まりは、著者がたまたま拳銃訓練に行ったのが始まりだった。
そこでたまたま森鴎外の話になり、その話を聞いた男が言ったのだ。
「オーガイというその軍医、この人の恋人は、僕のおばあちゃんの踊りの先生だった人だ」
その言葉が、きっかけだった。
舞姫の中では有名でも、実際は有名ではない一般女性をあらゆる方面から捜していくことに。
鴎外とエリスの出会いとさせている教会の場所だったり、エリスの生まれた場所だったり、両親だったり…。
それは冒頭に出てくる
「エリスにたどり着くまでの道のりは、蜘蛛の糸をたぐり寄せるような、心許ない作業のくり返しだった」
とあるように、困難な連続で、ことあるごとに壁が立ちはだかる。運命ののような偶然で始まっていても、すらすらと物事が進むわけでもなく、むしろ直ぐに躓いてしまう。
だがだからこそ面白く、小説のように、どうなっていくのか、どうやって謎が解けていくのかが気になって読み進めてしまう。
実際のところ、自分は『舞姫』も、鴎外の他の作品も読んだことがない。ただ『舞姫』は授業で習ってあらすじを知る程度の知識しかもっていなかったのだが、関係なく面白く読めた。
エリスの見方も、豊太郎である鴎外の見方も、この本を読むと変わる。だからこそ、ちゃんと読みたくなった。
鴎外の本は大概文章が独特で避けてきたのだが、これをきっかけに挑戦してみたい。
今年は森鴎外が誕生して160年、没後100年を迎えるらしく、これはより挑戦してみるしかない!と意気込みつつ、今回は閉じようと思います。
ここまで読んでいただき、ありがとうございました。
ではでは。
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