見出し画像

空間

最高だった。

駅から少し歩いてほとんど住宅街になる、随分辺鄙な場所にあるんだなぁと思いながら入ったけど、2階の展示を見て、その静かさがとても心地良くて、だからここなのかぁ、と思えた。実際どうしてそこに場所を構えたのか聞いてみたい気持ちはあるけども。

部屋に入ると、コンクリートブロックがまるで道を成すように敷かれていて、それが敷かれていない部分の床に、展示物が置いてある。入ってきた人みんな、わぁ、とか、おお、とか言っている。

スイスのデザインの展示。
ポスター、招待状、本。
カラフルなペンを収めた特殊な箱もあった。

良く見ると、その展示物が置かれた床の端っこに、解説文を印刷したカードが置かれていて、まるで、四角く区切られたその範囲が、雑誌の1ページのようなレイアウトだなぁと思った。

映像では、なぜデザイナーになったかとか、デザインと生活のバランスとか、クリエイティブをするための習慣とか、クリエイティブを育てるための教育とかのインタビューが流れていた。

「小さい頃から物の形を見るのが好きだった」「絵を描くのが好きだった」

「ポスターデザインがいちばん好き。通行人の反応が分かるから。」

「デザインと生活は完全に分けられない」
「生活のどこにでも優れたデザインはあるから」

「私たちは幸いなことに、自分たちがやりたいと思い楽しんでいる仕事が80%ある。20%は商業的な仕事だ」

「自分のクリエイティブをすることは大事だと思っていて、大学でデザインを教えながら、自分のクリエイティブも並行してやっていた」

「ディレクションに関わる1番の目的は、クリエイティブの大切さを伝えるため。印刷という素晴らしい技術を伝えたかった」

「アニメーションも増えているけれど、紙と相関している。印刷の手触りは、人に影響を与える」

彼らはそれぞれ快適な場所に住み、自然に癒され、考える時間をたっぷり設けながら仕事をしている。そしてとても楽しそうだった。

楽しいまま続けるには?
ペライチのやりがい?
ディレクションの有用性。
デジタル化の中の印刷、紙。
技術の存続。

わたしの最近の考えごとと通ずるものがあり、興味深く観ることができた。

1階ではゆったりした空間に大きな本棚とたくさんの本が並んでいる。
コデックス装、スイス装、ドイツ装、写真集、作品集、図録、タイポグラフィ、ロゴ、雑誌のバックナンバー、活版、製本…
スイスの展示に関連した本もいくつか売っていたようだったが、店内の本をほとんど見て漁った結果、購入したのは結局全部和書だった。

これ、今日持って帰るん???
いや、再び来る日がいつになるか分からんし…

そんなことを思いながら、5冊も買ってしまった。まあ、衝動買いなんてそんなもんだ。


展示という空間づくり、小さなお店の空間。

そういう、意思が伝わってくるような、創られた空間が以前から好きだなぁと思う。自分には出来る気がしない領域だったのだけど、なんだか、小さな空間で期間限定でやるような、個人的な展示のようなものだったら、もしかしたら私にも考えられるかもしれない?なんて思ったのは今回がはじめてだった。

入ってくる人に、わあ、と言わせたり、視線の動きを誘導するような、空間全体で何かを伝える、そういうことを考えるのは難しそうだけど楽しそうだと思った。

ふふふ。また妄想が拡がってしまったな。
いつか実現させてみたいな。絶対楽しいもんな。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?