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みんなのフォトギャラリー繋がりnote

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みんなのフォトギャラリーで使って頂き ご縁が広がり繋がったnoteを集めてます。 私がUPしている画像は、「leche」または「むかいだ」「ナツコ」で検索できるようにしています。…
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#小説

【連作】クリームパンの問い

『来ないはずの明日』→『食文化』→『リア充失敗』→『バーター』→『親愛なる、いちごジャムパン』→『被害妄想』→(本記事) 「『知らない』より『知っている』方が幸福なことって、なーんだ?」  唐突に謎々じみた問いを投げられて、私は朝食兼昼食のクリームパンに齧り付こうと大口を開けた状態で一時停止した。私から先生へ質問する事は多々あるが、その逆は大変珍しいことである。況してや謎々なんて、珍事中の珍事だ。  何故、突然謎々を? 「『知らない』より『知っている』方が幸福なこと」とは

掌編小説071(お題:付箋が足りない)

想いが日々募るばかりなので、あるとき、ミルクのように甘やかな白の便箋に克明に残る黒のインクで僕はきみの愛しいところを書きつけた。無垢の上に隙間なくしたたる生真面目な愛を気恥ずかしくも感じながら、それを町のポストへ投函する。 スコンと呑みこまれていった手紙の感触が消えぬうちに、鳥たちがさえずる朝、きみから一通の手紙が届く。 さっきの手紙のご用事、なあに? 生真面目な愛が溶けたミルクはどんな味がするのだろう。僕はきみの舌先にまだ残るその味を想像しながら、先のそれと寸分違わぬ

ある意思を受け継いだ僕は、筆を手にした。 《承》 13日目

以下の文章は、今から約12時間前。 時間にして、9月10日24時ごろまでに、 何者かによってまとめられたものである。 その文章に、少し私が筆を加え、完成させたものを皆に公開させていただく。 これは、昨日から今日の物語。 何故、昨日更新できなかったのか、そして、本日昼まで、何があったのか。 この文章を残したのは何方か。 その、誰かとこの私によって作られるエッセイ。 今、家は争いの渦中にある。 我が家の争いとは、それすなわち世間では論争と言われるものだ。 当事者は兄と妹

ビーズアクセサリー

2004年6月。レンタルショーケースって千葉県にないの? そう思ってネットサーフィン。 そしたら見つけたぜ。JR八柱駅から徒歩数十分の場所にあるぜ。 見つけた後ソッコーで出発進行。那須のおしんこう。 縮毛矯正かけているから、髪のセット1分で終わったぜ。 チリチリ天然パーマの時は、ヘアアイロン使って1時間くらいかかっていたからな。 金だけじゃなく時間もゲットだぜ。 イトーヨーカ堂八柱店を左に見ながら直進。横断歩道を渡った先に緑色の屋根の店を発見。 「レンタルボックスひぐらし

【小説】一ヶ月監禁生活2

学生時代書いた話のリメイク、2話目です。 物騒なタイトルですが、R-18要素はございません。 前回はこちらから。 今回は6000字くらいです。 いつもの注意書きも、念のため。 この物語はフィクションです。 実在の人物・団体・事件とは一切関係ありません。 「はい、これ」 状況が理解できず茫然としたままの桐華に微笑むと、タカフミは目の前のテーブルに一枚の紙を置いた。 視線を落とす。そこには『誓約書』を大きく手描きの字で書かれていた。 誓約書 私は以下の事項を厳守することを

文学の散歩道 (BU1J-3)「大つもごり」(樋口一葉)

目次(表紙) 前回の 文学の散歩道 (BU1J-2) 「義血侠血(滝の白糸)」(泉 鏡花) 2 に関連しまして、 ◆ こういう「筋書」はよくあるわけですが、例えば、樋口一葉の「大つもごり」もそうです。 せっかくですので、「あらすじ」です。 ・「金持ちの家(山村家)」に奉公する、娘「お峰」は、養父同然に世話になった「叔父」の病気難儀のため、「金の工面(二円)」を頼まれます。 「お峰」は、お上さんに「前借り」を頼みますが、反故されてしまいます。 それに怒った「お峰」は、こ

【交換小説】#自家製 1

この時期はジャムを作ることにしています。一年分を作ります。紅茶と一緒に飲むためのジャムなので、可能な限り甘くします。市販のジャムは甘さ控えめを謳うものばかりで物足りないのです。外国産には甘いものもありますが、いかんせん少量で高いうえに売っている店も限られるので、自分で作ったほうが早いのです。 そんなわけで今年もイチゴを手に入れました。近くのスーパーで二パック五百円。探せば四百円を切るものもありますが、時節柄、動き回るのも気が引けるのでよしとします。とりあえず六パック買いまし

劣等星

年中無休24時間営業で朝昼晩のレイヤーをひとつずつ、ただ静謐に重ねるだけの人生においても、ある時突然、自分だけが惑星の軌道を外れたような感覚を覚えることがある。 集団生活で文字通り孤立したとき。浪人が決まったとき。就職活動で、これだけ祈られたらそろそろご利益があってもいいだろうというくらいの数のお祈りメールを貰い続けたとき。友人が相次いで結婚したとき。 懐かしさからふらりと顔を出した同窓会でただただ一方的に聴かされる、愛と成功と明日への希望に満ちた人生プレゼンテーションの数

物語を作るのにそこまで深く考えてない

仕事をする上ではきちんとプロットを作る方がいい。 ソシャゲのライターとかは、原作(というか原作付案件ではなくとも、基本的にこういう話を書いて欲しいという相手の明確な要望)があるので、そのオーダーにそって書くし、そこに自分の書きたいものとかは基本的に入れないので別にいい。キャラや設定がめちゃくちゃブレてますけど?というオーダーだったら確認はするけども。 でも、オリジナルを書く時は、基本的におおまかな設定と最後のオチ以外はろくすっぽ決めないで書く。というのも、プロットをつめす

=6=

次の日時を決めて終わると ふぅっと肩の力を抜いて深呼吸 止めはしないけど呼吸が違う 先生やっている間には どこかに空気が溜まってるようで 終わると一気にそれを抜きたくなるのだ 息吐き切って宙をみて ぽけっとしながら遠くの雲が ゆっくり流れてるなぁなんて思いつつ 空(くう)の時間 何も感じず何も考えてない そんなエアポケットみたいな一瞬の中を ふわふわと漂ってた なのにいきなり突然に おい! え、何? 目の前で大きな風船が ばぁんと破裂したみたいな 衝撃で ふらつ

繋ぐもの

 橋の上では川のせせらぎが耳に心地よく、美しい新緑に癒されていた私のそばで、父上は意を決したように私の名を呼んだ。 「これをお前にわたす時が来た」  私が振り向くと、父上は懐から細長い藍色の箱を取り出した。そばに立っていた家来がすかさず父上のそばに歩み寄る。彼は父上から藍色の箱を受け取り、私に中身が見えるように開けた。  私は息を呑んだ。それは我々王族に代々受け継がれる翡翠の首飾りだった。 「父上、これは」 「そろそろだと思っていたのだ」  いつかやってくるこのときを、私は待

音のないふたり

「そのネックレス」と同僚がふと切り出したので顔を上げた。 二画面あるパソコンには数字がずらりと並んでいる。その向こうの同僚とぱちりと目が合うと、彼女は薄い笑みを浮かべてとんとんと自身の首元を指したように見えた。 「かわいいね。新しい?」 「はい。よく気付きましたね」 「なあに。彼氏から?」 「いえ。ボーナスも出たし、自分で」 「なるほど」 彼女に薄っすらと笑顔を返し、ペンダントトップを触る。 彼と先週お別れをした。 しばらく付き合っていったんすれ違いで別れたもの

殺人依頼の手紙

D様へ はじめてお手紙差し上げます。 三浦美幸と申します。 D様のお噂はよく聞いております。 このたびはお頼みがあってお手紙差し上げることとなりました。 その前につまらないでしょうが、少しわたしの話をお聞き願います。 わたしは小学生の頃、 「協調性がない」と先生によく言われました。 どうも、協調性というのは人間が人間であるための条件であって、 そして、生まれつきの能力だったようなんです。 わたしは人間にはなれませんでした。 わたしは人間ではなかったようでし

手紙を書くよ

樋口には文通相手が居る。淡野という四十代半ばの同性だ。元々は樋口が通う大学に特別講師として招かれたエッセイストで、文筆業を志す者として猛アピールした末に、何故だか文通を始めることになったのだった。令和の時代に手紙を書くなどというまどろっこしいコミュニケーションを取りたがる人間は居ないと踏んだのかもしれない。樋口は諦めずに食らいついていったのだが、淡野は筆まめで月曜日の昼に投函した手紙の返信が週末には届く。 土日に書いた手紙を月曜日に出して、金曜日の夜に返信を読む。煙草を嗜む