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素直とわがままの境界線

イタリアから帰ってきました。
1週間あっという間だった!
本当は今日、旅行記的なものを書こうかと思っていたのだけれど、それなら写真の整理もしたいし、とてもじゃないけど帰って数時間でできることではないって気がついた。ので、それはまた別に書くことにします。

イタリアは、美しいところを選んで行ったこともあって、とても気持ちよく過ごせたのだけれど、やっぱり旅だったり同じ人と長時間一緒にいることだったりは、小さな違和感を発見することも多くて、その一つ一つが、若干棘のように残って消えない。

同行者(あだ名でもつけたい)とわたしはお互いに一眼レフを持って行っていたのだけれど、写真を撮る瞬間の違いも、その違和感の一つだった。
「パスタ 軽食 デザート テイクアウトOK」と書かれたお店の屋根を、同行者は面白がって撮影していた。わたしはそういうものを見ると、ふいと目をそらしてしまう。なんなら、写真を撮りたい場所にその日本語が入ってしまうとがっかりするし、日本語で呼び込まれる店にはそれだけで視線すらも背けてしまう。

「ヤスイヨー、チョットダケ、チョットダケ」
そういう、商売っ気みたいなものが苦手だ。親切にされているというよりも、カモられるんじゃないかという気持ちの方が先に立つ。そこまでいかなくても、日本語で話しかければ来るだろう、と思われているような気がするのが苦手だ。
若干イライラしている自分に気づいて、つい語気が強くなった。
「なんで写真撮ってるの?」
「いやー、それだけ日本人がいっぱい来るんだなあって思って」
わたしの中ではその答えが「理由」として繋がっているように思えなくて、「?」と思ったまま次の言葉が継げなかった。
そこで自分の気持ちを素直に言葉にすれば「変なの」だったけれど、誰かの行動を制限する権利はないから、押し黙る。
黙りながら、自分はなんでこんなに小さなことにイライラしているんだろう、と思って途方に暮れた。

そうやって撮影していたりすると今だとばかりにお店の人が出てきて、「ジャパン!」とか言われる。
ああ、ほら。だから脇目も振らずに通り過ぎたかったのに。
袖を引いて「ねえ行こうよ」と言うけれど、同行者は「イエス、ジャパーン!」と言えてしまう人なのだった。そのまま数分間捕まる。苦しくて、先に歩き出す。感じ悪い自分。
だけど、脳裏には、20年ほど前に見てきたヨーロッパでの注意喚起が再生されている。市場ではスリに気をつけて。「ヤスクスルヨ」は信じないで。日本人だとわかると狙ってきますよ。当時のバスガイドさんの言葉だった。

ヨーロッパに住んでいて、周辺の国もたくさん旅行してきて、10歳前後だったわたしにとってすら、ヨーロッパは大好きで愛すべき場所であると同時に、常に信用ならない場所だった。
気をつけるに越したことはないのだということを肌で感じていた。
お金をくださいと伸びて来る手。市場を通過するときの、視線、視線。

「媚び」を感じる瞬間が嫌なのと、
できるだけ時間を無駄にしたくないのと、
信用しない方が安全だということを知っていること。

その3つが、わたしを偏屈にしている。けれど、安全にもしていると確信できる。わたしは美しいものを見て、ゆったりとした時間を過ごすために、大好きなヨーロッパに来たのだから。

同行者は「水、1ユーロ」みたいな道路にいるおじさんの呼びかけにもいちいち反応する。わたしはよほど正面から話しかけられない限り、無視して通り過ぎる。
でも、この「素直」な感じの悪い反応も、自分本位で優しさのない行為なのかもしれないとどこかで思う。嫌なことを無理して頑張らない、と決めていたら年齢を重ねるごとに加速していて、実は、洋服屋さんでも、話しかけられ方が苦手だと欲しいと思っていたものすらやめて足早に店を出てしまう。やってしまってからいつも後味が悪い。

接客もサービス、と言えばそうなのかもしれないけれど、だからと言って感じの悪い態度をとる権利はないし、それはわがままだし、偏屈になっていくように思える。でも、自分の好きな距離感やコミュニケーションに素直でいたい。苦手なものを好きにはなれないし、面白くないものを面白いと思う必要も、ないとも思う。

こういうことの、上手なバランスの取り方ってないのだろうか。


日本に帰って来たらいきなり台風が来ていて、布製のキャリーバッグと持ち上げるだけで精一杯のボストンバッグを持って、一眼レフを守りながら、サンダルで視界が白いほど強い雨の中を歩くという試練にぶつかった。そしたら、サチコさんが応援リプライをくれて、それが今日一番嬉しかった。
実際に知っている人、好きな人を大事にする「半径5m」はやっぱりとても大切で、自分でもそこそこ重視できていると思うのだけど、一期一会の他人に対する自分の顔をもう少し上手に持ちたい。

なんだか毎週反省ばかりしている!
次は「最高〜〜!」みたいな記事書きたいな。

読んでくださってありがとうございます!あまくておいしいものか、すてきな本を探しにゆきます。