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【イベントレポ】(本編)IT業界記者主催「広報PRが知るべきIT記者のリアル」

現在、BtoB企業向けに広報部門立ち上げコンサルティングを行うリープフロッグ代表 松田純子PRコンサルタント/SPRing代表 高橋ちさが主催し、ライターとして企業広報の3名(橋尾日登美さん、前田弥生さん、堤はるなさん、野内遥さん)、宣伝担当として広報コンサルタント村田知左さん、フリーランス広報PR 奥野絵里奈さんに参加いただき【メディア解剖連載】を行っています。 ※本連載の趣旨は、第1回記事の冒頭をご覧ください。

今回の【メディア解剖連載】は番外編の第2弾です。2023年11月30日(木)に行われたIT業界記者有志主催の広報担当者向けイベント「広報PRが知るべきIT記者のリアル」~広報との関わりから編集会議までのすべての裏側~の中から話題を抜粋してレポートとしてお届けします。

※前回のイベントレポート


本企画は、IT業界記者の皆さんが「記者の日常業務」「読むプレスリリースを選ぶ基準」「参加する記者発表会を選ぶ基準」「取材ネタの見つけ方」など、広報担当者の仕事に役立つ“IT記者の業務の裏側”を教えてくれるイベントです。

「日頃の広報活動の質をさらに高めるためにメディア側の視点を得たい方は必見です」(イベント告知文より)とのこと。広報担当者にとって垂涎ԅ(¯﹃¯ԅ)のイベントをしっかりレポートさせていただきます!




イベントはアリル会場と配信を実施


モデレーター

登壇者

TECH.ASCII.jp

※編集長 大谷さんへの「メディア解剖連載」インタビューはこちら

TECH+/マイナビニュース


ZDNET Japan

※編集長 國谷さんへの「メディア解剖連載」インタビューはこちら


■記者の日常の仕事とは?


(司会)谷川さん:まずは、記者の日常の仕事についてご紹介します。國谷さん、我々エンタープライズ向けITメディアだと月曜日はリリースや発表会が少なく、水・木に発表会が多いですよね。発表会がない日の仕事はどんな感じで始まりますか?

國谷さん:まず溜まっている取材の原稿を書きます。企業からのプレスリリース投稿は午前11時が1回目の山です。一通りそれを確認したり、社内的な事務仕事をやったり、午後から夕方にかけてライターさんから送られてくる原稿を翌日公開用に編集したりします。そんな感じで1日があっという間に過ぎますね。

(司会)谷川さん:岩井さんはあまり取材がない日は、何時くらいから仕事を始めますか?

岩井さん:うちは出社時間が選べるので、10時を選ぶことが多いです。特に用事がなければ雑務をしながら溜まっている原稿を書きます。

(司会)谷川さん:昔は下手すると1日に10本くらい記事を書いていた時代もあると仰っていましたが、今はどうですか?

岩井さん:1、2本ぐらいですね。昔はプレスリリースの記事化がメイン業務だったんですが、今はそうではない(※取材をもとに原稿を執筆する)ので。

(司会)谷川さん:逆にプレスリリースを中心に書かれている記者さんは、1日どれくらい書くんでしょうか?

岩井さん:それこそ本当に10本とか20本だと思います。基本的にプレスリリースの内容を要約して組み立てて掲載します。

※【メディア解剖連載】編集部注:メディアによってプレスリリースを記事化する所とそうでない所があります。

(司会)谷川さん:大塚さんの日々の仕事はどんな感じですか?

大塚さん:だいたい朝9時くらいから仕事を始めます。午前中に会見や打ち合わせがない時は、頭が冴えている時間帯に原稿を書きます。そのほかは、先ほどもみなさんが仰っていたように11時頃にプレスリリースのチェックをしたり、社内の連絡事項を確認したり、といった感じですね。

(司会)谷川さん:五味さんは今どんな感じで仕事をされているんですか?

五味さん:今はリアルの発表会も増えていますが、個人的にはリアルの発表会の参加は週に2回くらいに抑えています。発表会に行かない日は、メールチェックといった雑務の他に、ニュースチェックを必ず毎日行います。大体午前中がそれで終わっちゃう感じです。

オンラインだといつも通りのルーティン(メール・ニュースチェックからスタート)で進められるんですが、発表会がある時は外出に合わせて1日のスケジュールを組みます。たまに急な会見の連絡などがあって、どうしても行かないといけないときがあるんですが、ルーティンが崩れてしまうのは正直辛いですね。


■記者がプレスリリースを読むかどうか決めるポイント


(司会)谷川さん:國谷さんの場合、記事として取り上げるプレスリリースをどのように選ぶんですか?

國谷さん:弊社にはプレスリリースを一括で受けつけるメールアドレス(※下記)があって、それを編集部全員で見ています。先ほど、プレスリリース投稿の一回目の山が午前11時頃とありましたが、11時だけで5、600通くらい来ます。
 
13時、15時と山となるポイントがあります。おそらく、新しい期の始まりで多くの企業が新しい施策をPRし出すタイミングだと1,000通くらい来るかもしれません。そのなかからうちの編集部に関係あるものをタイトルだけで選びます。
 
そこから絞り込んでいく感じです。選ぶポイントは各メディアさん、記者さんで違うと思いますが、個人的には事業会社のITサービス活用事例のなかから、数値的な成果がある話や新規性のある導入の話、導入時の苦労話など、(ITサービスの)ユーザー企業のエピソードが伝わるものを取り上げたいと思って選んでいます。
 
(※)プレスリリースの送付先
フォーム:https://s.aiasahi.jp/contact/contact.htm#inquiry
メール:tips-inq@aiasahi.jp


(司会)谷川さん:膨大なプレスリリースのなかで、目に留まりやすいものってあるんですか? やっぱりトレンドになっているキーワードや企業名が目を引く?

國谷さん:そうですね、企業名は目にとまりやすいで すし、どういった導入効果や苦労話があったのか、ということが分かる単語が入っているとピタッと目に留まりますね。

(司会)谷川さん:岩井さんはどうですか?

岩井さん:大手企業ごとに担当が決まっているので、まずは 担当企業のプレスリリースをチェックします。あとはフィルターを使います。例えば、「発表会」など色々なフィルターを作っています。そのなかでも、自分のメールアドレス宛に来たものは絶対目を通しますね。

編集部宛てだと、放っておくと1日で2,000~ 3,000件(プレスリリース受付用のアドレス経由のものも含むIT以外のマイナビニュース全体での数値)は溜まってしまうので、フィルターを使って選別しています。あとはタイトルを見て判断をするので、余計な情報はタイトルに入れないで欲しいです。
 
例えば、「〇〇様」とか「重要」などですね。目を引くタイトルにしたいのであれば、記者が注目しやすいワードを入れるのが良いです。読者もタイトルを見て読む記事を決めると思いますが、僕らも一緒です。タイトルさえ良ければ、中身をチェックして面白そうだったらそのまま原稿にします。

(司会)谷川さん:その意味では、プレスリリース以前にメールのタイトルが重要だということですね。大塚さんは、何を基準にプレスリリースを読むかどうか決めていますか?
 
大塚さん:これは秘密にしておきたいですね(笑)。うちの編集部でも取材するジャンルやベンダーの担当がざっくりと決まっているので、まずはその情報を追いかけます。
 
個人的な選択ポイントとしては、すでにある程度情報が蓄積されているジャンルや企業のプレスリリースは読むことが多いです。ずっと追いかけているジャンルだと蓄積された情報があるので、そこに新しい情報が入ってくるとそのニュースの意義を理解しやすいですよね。ベンダーさんも同じで、前から知っているベンダーさんなら、市場の中で大体何位くらいか、どんな強みがあるのかなどをすでに知っています。そういった情報があるかどうかがすごく大事です。

(司会)谷川さん:そこを判断するのは、メールのタイトルですか?

大塚さん:そうです。ただ一応、全部開いて見てはいます。うちは、ビジネス系のプレスリリース窓口(※)が独立していて、1日150から200本くらいですので開いて分類しています。

(※)プレスリリース窓口
news@nmag.jp
 

(司会)谷川さん:五味さん、フリーランスですと1日に来るメールは100件くらいですかね?

五味さん:そうですね。ただ、申し訳ないのですが書いている記事の特性上、プレスリリース単体で記事にすることはほぼないです。プレスリリースは資料として使わせていただいています。

(司会)谷川さん:なるほど。僕もプレスリリースから記事を書くことはないですが、いただいたプレスリリースは何年前のものでも保管していますね。


■発表会に参加するかどうかは、何を基準に決めているのか?


(司会)谷川さん:次に、発表会に行く、行かないの判断基準を教えてください。國谷さんいかがですか?

國谷さん:過去に取材した時の記事のPVが良かった企業やSNSで注目度が高い企業などは、読者が注目しているということなので優先的に行きます。
 
発表会は特に火・水・木が多く、同じ時間帯に複数社が重なることもよくあります。この場合は物理的に難しいので、読者の反応が良い企業や業界、編集部が特に力を入れているテクノロジー分野や業界のものを選びます。

(司会)谷川さん:岩井さんどうでしょうか。

岩井さん:うちの傾向で言うと、非IT系の企業さんのデジタル戦略やDXは面白そうなので行きたくなります。やっぱり読まれるので。みなさん同じ業界の他社さんの動向が気になるんだと思います。その他にもご面識ある方のご連絡であれば検討します。

(司会)谷川さん:大塚さんは何があったら参加しますか?

大塚さん:うちでビジネス系をカバーしている編集部の人間は3名しかいないので、すべてをカバーすることは最初から諦めています。私の場合は半分くらい勉強のつもりで 会見や発表会に行っているので、内容に興味があれば行きます。うちの編集部では、Googleカレンダーにその週の発表会の予定を全部入れて、その中から各自が興味あるものに参加しています。

(司会)谷川さん:五味さんはいかがですか?

五味さん:私の場合、発表会に行く、行かないを4つのTier(レベル)に分けて管理しています。Tier1は、オフラインでもオンラインでも絶対行く発表会です。Tier2は、オンラインはほぼ参加する、場合によってはオフラインでも参加するもの、例えば海外からのエグゼクティブが来ているとか、自分にとって勉強になる内容、あとは編集部から取材依頼があったものなどです。Tier3はオンラインで予定が合えば出るもの、Tier4は参加しないものです。
 
フリーランスで、かつ都心にオフィスを構えているわけではないので、オフラインで参加するなら移動のコストに見合う価値があるものでないと、なかなか行く気にはならないですね。

(司会)谷川さん:皆さんのお話を聞いていると、もともとお付き合いのある会社の発表会によく行くようですね。今まで取り上げたことのない会社を取り上げるきっかけは何なんでしょうか?

岩井さん:そうですね、外資系企業が日本法人を設立したとか、資金調達をしている面白そうな会社の場合などですかね。

(司会)谷川さん:國谷さんは、知らない会社の発表会に行くきっかけって何ですか?

國谷さん:長く同じ領域を取材していると、例えば今アメリカで流行っているとか、ユーザー企業の方が話していたな、という感じで情報が蓄積されていきます。そこに新しくいただいた情報がハマると、「前に聞いたことあるぞ」となって一気に取材してみたくなります。

(司会)谷川さん:大塚さん、全然知らない会社が取り上げられるためには、記者発表会以前の関係構築が大事なんですかね。

大塚さん:そうですね。まずは名前だけでも先に知っている状態だといいですよね。あとは、その会社の業界での位置付けを知りたいです。そのあたりの情報を知って初めて、プレスリリースや発表会をどうするか考える土俵に乗る感じです。名前も位置付けも知らない企業からのプレスリリースは検討のしようがないですね。プレスリリースの出来映えにこだわって一生懸命書く前に、メディアとのコミュニケーションの仕方を俯瞰して見直すと良いかもしれません。


■記者は「取材ネタ」をどうやって見つけているのか?

 

(司会)谷川さん:最後に、「取材ネタの見つけ方」について伺います。國谷さんからお願いします。

國谷さん:プレスリリースや導入事例などについて個別に メールやSNSで受け取ることが多いですね。最近はいろんなツールがあっててんやわんやですが、 この辺の情報を取材ネタとして重点的に確認します。

(司会)谷川さん:岩井さんはどこからネタを拾いますか?

岩井さん:企業の広報さんやPR会社さんが提案してくれるものが面白ければ取材しますし、あとはX(元Twitter)でバズっている情報も参考にしています。

(司会)谷川さん:大塚さんはいかがですか?

大塚さん:今お二方がおっしゃった方法のほか、テレビ、新聞などマスメディアの情報もふつうに参考にします。それ以外で言うと発表会後の雑談も意外と重要です。本筋とは外れるけど参考になる話題や各業界の動きを知ることができる ので勉強になりますね。

(司会)谷川さん:五味さんは海外情報をチェックされることが多いですが、ネタ元はなんですか?

五味さん:海外のITニュースサイトやベンダーのブログ、プレスリリースなどをチェックしています。日本は海外と比べて祝日が多いので、祝日通り休んでいるとニュースチェックが追いつかなくなってしまいます。なるべく祝日は平日とカウントしてニュースチェックするようにしています。

(司会)谷川さん:ニュースチェックで生成AIを使ったりしますか?

五味さん:それはしないですね。あんまりまだ信用していないです。
 

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以上、「広報PRが知るべきIT記者のリアル」~広報との関わりから編集会議までのすべての裏側~より、一部話題を抜粋してまとめました。

本イベントはこの後、質疑応答タイムに入りますが、その内容もとても参考になるので(後編)で書かせていただきます。お楽しみに!


※イベント自体はすでに4回開催済みで、今後も開催されるかもしれません。ご興味のある方はこちら(Peatixアカウント)をフォローしてくださいね。


そのほかの記事は以下からお読みになれます。


今回も最後までお読みいただきありがとうございました!ヽ(`・ω・´)ノ



(ライター:野内遥/
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新卒で株式会社スープストックトーキョーへ入社。店舗勤務、販促の経験を経て広報業務に従事。広告会社に転職し広報・マーケを担当したのち、現職である株式会社Asobicaへ一人目の広報専任として入社し日々奮闘中。休日は推しのアイドルの応援に全力を注いでいる

(取材・編集・構成:リープフロッグ 代表 松田純子)
B2B企業向けに、伴走型・人材育成型による広報部門の立ち上げ支援コンサルティングを行うリープフロッグ代表。新人、ひとり広報でも最速で効率よく広報部門を立ち上げ、企業成長に資する広報活動が行えるよう支援。コンセプトは「外から来る広報マネージャー」。各種メディアでの執筆や登壇多数 (お問い合わせ先)リープフロッグHP


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