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【メディア解剖連載 Vol.3】ZDNET Japan編集長 國谷武史さん

現在、B2B企業向けに広報部門立ち上げコンサルティングを行うリープフロッグ松田純子PRコンサルタント高橋ちさ、ライターとして参加してくださる企業広報の3名(橋尾日登美さん、前田弥生さん、堤はるなさん)が共同で、【メディア解剖連載】を行っています。

※本連載の趣旨は、第1回記事の冒頭をご覧ください。

毎回、松田と高橋が専門とするBtoB分野のメディアの方をお招きし、
以下のような項目を中心にヒアリングしてnoteにインタビューを掲載
していきます。各社の広報の方に、ぜひお仕事の参考にしていただければと思います!

・媒体コンセプト、ターゲット読者
・取材の注力分野
・広報担当者との関り方
 など


第3回は、ZDNET Japan 編集長の國谷武史さん

にお話を伺います!


・ZDNET Japan:
https://japan.ZDNET.com/
読み方:ズィ(zの正しい発音で!)ーディーネットジャパン
表記:23年初頭よりZDNetからZDNETにリニューアルされました。
 
ZDNET Japanの媒体資料
https://aiasahi.jp/media/2014/corp/mediasheet/ai_media.pdf
 
プレスリリースの送付先
フォーム:https://s.aiasahi.jp/contact/contact.htm#inquiry
メール:tips-inq@aiasahi.jp


ZDNET Japan編集長 國谷武史さん

プロフィール
朝日インタラクティブ株式会社 ZDNET Japan 編集長
2001年よりエレクトロニクス業界紙の記者として地方市場や家電流通、デジタル放送分野の取材を担当。2006年よりIT系のWebメディアで、モバイルやセキュリティを中心にエンタープライズIT分野の取材、編集などを手掛ける。2017年2月、朝日インタラクティブに入社。2018年9月より現職。


■ZDNET Japanのコンセプト・ターゲット読者

 
Q:まずZDNET Japan(以下、ZDNET)の媒体コンセプト、ターゲットを教えてください。
 
主に、企業の情報システム部門の方向けに、IT活用事例や最新ニュース、トレンド情報などを発信しているメディアです。技術やトレンドに関する解説、各種特集記事やコラムなどを通して、企業の競争力強化に貢献したいと考えています。
 
読者は、6割が事業会社のIT部門に所属しているマネージャー職やプログラマー、システムエンジニアの方々で、残りの4割がIT企業で営業やマーケティング、広報、システムエンジニアなどに従事している方たちです。

Q:BtoB向けIT系Webメディアがたくさんあるなか、ZDNETの特徴について教えてください。
 
ZDNETでは、企業の経営戦略とITトレンドがどう結びつくのかという視点を重視しています。また、米国のニュースサイトZDNETの日本版として運営しているので、米国でのニュースを取り扱うことも多いです。ITトレンドに関わる重要ニュースなどがあれば、一両日中に翻訳して掲載しています。
 
最近では、経済系メディアにおいてもビジネス視点を中心にITに関する情報を取り上げていますが、私たちはCIOなど専門的な職業の方々をターゲットとしているので、より技術を深掘りしている点が異なります。

Q:CNET Japanとはどのように棲み分けていますか?
 
CNET Japan(以下、CNET)は、BtoC領域も含めたITのビジネストレンド全般をカバーしているのに対して、ZDNETはより専門性の高いBtoB向けの情報を扱っています。コンテンツや取材対象、テーマの幅はCNETの方が広く、ZDNETが深くというイメージです。
 
ZDNETは、IT部門に所属する方たちを意識しているので、CNETではコンシューマユーザーの視点なども取り入れているのに対して、ZDNETではITサービスの裏側にあるシステムがどうなっているのか、といった観点になります。


■編集部の体制・担当領域


Q:現在の編集部の体制を教えていただけますでしょうか。

 
現在、国内の編集チームは私を含めて5人です。また、米国のCNETとZDNETの翻訳記事を担当するチームがいます。国内編集チームと翻訳チームが連携しながら日々記事やコンテンツの発信を行っています。
 
担当領域は、ITインフラやサイバーセキュリティ領域、データ活用、ビジネスアプリケーション、デジタルマーケティング、人材活用など幅広く、各編集者、記者が複数の領域を担当していますが、場合によっては担当領域を跨ぎながら取材することもあります。

Q.どの領域の担当の方にご連絡しても問題ないんでしょうか?
 
そうですね。ご連絡いただく際は、ZDNET編集部へのご案内として情報提供いただいた方が、その時のリソースや内容によって振り分けができるのでありがたいです。

Q.ZDNETで公開しているプレスリリースの送付先はありますか?
 
CNETと共通でプレスリリースを受け付けているアドレスがあります。多い日だと1000通くらいのプレスリリースが届くので、まずはタイトルから編集部の取材テーマに関連性があるところをグルーピングしてチェックします。ですので、メールのタイトルでどの媒体宛か、大まかな内容が分かるようにしていただけるとありがたいですね。
 
また、Webサイトでは、問い合わせのフォームも用意しています。
(松田注※連絡先は記事冒頭に記載)

■ZDNET Japanの注目分野やトレンド


Q:BtoB向けのテクノロジーはC向けと比べて変化がゆっくりです。ZDNETではどのようなタイミングで新しいテクノロジーの取材を検討し始めるのでしょうか?

 
企業が扱うテクノロジーやトレンドが1〜2年単位で変わることはないため、ITシステムやサイバーセキュリティなど、ZDNETが扱う大局的なテーマは基本的に変わりません。そのなかでの細かいトレンドの変化が数年ごとに起きているイメージです。
 
そのため、「何か事象が発生したタイミングですぐ取り上げる」という動きはあまりしていません。もちろん時事ニュースとして取り上げることはありますが、数年単位で動くテクノロジートレンドについては足掛け3〜4年といったイメージで追いかけています。周辺情報も集めながら取材タイミングを判断していきます。
 

Q:ASCII.jpの大谷さんも同じようにおっしゃっていました。ある程度、結果が見えたものを取り上げていきたいと。
 
そうですね。今でいうと、BtoC向けの一般メディアがメタバースに注目していると思います。取り上げ方としては、オンラインマーケティングやカスタマーエクスペリエンスなどの文脈ですね。
 
一方で、メタバースの要素技術は実は20年くらい前からあります。これを企業が本格導入し、どういう使い方をしていくのか?というところでは、まだまだ未知数だと思っています。
 
BtoBにおけるメタバースの活用事例としては、メタバース空間のなかで製品のコンピューターグラフィックスのデータを見ながら自動車や飛行機のような機器の設計を検討するような「産業メタバース」があります。ただ、そこだけを取り上げるのではなく、本当の意味で今後企業がメタバースを活用していくのか、その動向や活用例の広がりを継続してウォッチしていく感じです。


■取材提案をする際に気をつけるべきこと


Q:では、そうした取材の仕方をするZDNETに、自社のサービスについて取材提案をしたい場合どういったことに気をつければ良いのでしょうか?

 
例えば、大手企業が自社の基幹システムに新しいテクノロジーを採用したという情報であれば、新しいテクノロジーの話であってもその時点でニュースになると思います。
 
ただ、すでに普及しているテクノロジーに関しては、山のように事例があるなかで「採用しました」だけでは、正直取り上げにくいですね。
 
すでに普及しているテクノロジーやサービスの導入事例の場合は、導入から数年経った後に「実際にどのくらい仕事が効率化されたのか」など、具体的な成果を教えていただけるとありがたいです
 
「大量の煩雑な業務が年間に何百時間も削減されて、浮いた時間を他の業務にあてたら生産性が大幅に高まった」、「新規事業に取り組めるようになった」などの付加情報があると、読者にとっても大いに参考になります。
 
ほかにも、数十万人規模の大企業が「ハンコ申請からツールへの置き換えをたったの3ヶ月でやり切った」などの事例は、規模のインパクトがあり読者にとって驚きがあります。また、50人〜100人規模の中小企業の事例でも、「本来、成果が出るまで3ヶ月ぐらいかかるものが2日で出来た」など、革新的な変化があれば、同様に読者に驚きや中身などをお伝えしたくなりますね。
 

Q:今ZDNETで取り上げたいと考えているのは、どんな分野やトレンドでしょうか?

基本的にはサイト内のカテゴリ(以下、キャプチャ参照)にあるものが中心になります。大きく分けてテクノロジートレンドビジネストレンドの2軸があり、さらにそれらを掛け合わせたものもあります。
 
ビジネストレンドとしては、企業のITやデジタルの「戦略」から、それらを推進する組織や人材、また事例などがあります。例えば、「働き方改革」というキーワードに関連して、それを支えるクラウドサービスやソフトウェア、サイバーセキュリティの話なども取り上げています。



ZDNET Japan



カテゴリー一覧



テクノロジートレンドにおいては、例えば、コロナ禍でテレワークに対応せざるを得ない企業が増え、PCを自宅に持ち出せるようになりました。そのために必要な「通信環境の変化」などを追いかけています。
 
テレワークが始まる前はPCの持ち出しが禁止だったので、仮想デスクトップ基盤(VDI)が主に使われていましたが、コロナ禍で再びPCを活用するという動きも出てきています。
 
ZDNETでは、さまざまな背景のなかで、「今このテクノロジーが企業に必要になっている」という観点から取り上げますので、単純に「今このアプリやサービスがバズっています!」というような取り上げ方はしません。

Q:その意味では、単純に広報が「こんなサービスが出ました」と提案しても意味がないんでしょうか?

切り口としてはサービスでも全然構わないのですが、そのサービスが生まれた背景を知りたいですね。どのサービスにも、ユーザーにこんな課題があって、それを解決するためにこのサービスを開発したという本質的な情報があるはずなので。ビジネス上の狙いも含めて、サービスを取り巻く全体的なストーリーがあると取り上げやすいです。そうした情報の方が読者の役に立つと考えています。

Q:ちなみに、ZDNETでは「ストレートニュース」(プレスリリースをそのまま記事にする)はあまり見かけませんね?

大手のIT企業の社長交代や革新的な技術の開発、テクノロジーの先進的な導入発表といった業界に影響力があるものに関してはニュース速報としてリリースベースで掲載することがあります。また読者にとって参考になる情報が豊富な場合も補足しながら掲載していますね。
 
松田注※ZDNETでは、上記のような話題性のある内容を除いてプレスリリース内容をそのまま掲載することは多くなく、情報収集の一環としてプレスリリースを読んで取材先探しなどに生かしているとのこと。


■広報からの望ましい情報提供方法


Q:広報からの情報提供について、して欲しいこと、しないで欲しいことはありますか?

 
一番困るのは、ざっくりとしたテーマだけで「取材しませんか?」とご連絡をいただくことです。それだけで、さらに「質問状を先にください」と言われることもあり、情報が少ない上にこちらのリソースも限られているため戸惑うことがよくあります。それでも取材してみたいと思える会社やサービスであれば、思いつく範囲で質問状を送ります。
 
広報さんからたくさんの取材要望をいただくなかで、なかなか全てにお応えするのは難しい状況です。ただ、いただいたリリースにはなるべく目を通していますし、そのタイミングで取材に至らなくても別のタイミングで取材させてもらうこともあるので、引き続き情報提供をいただけるとありがたいです。

 
Q:プレスリリース以外で良いなと思った情報提供の形式はありますか?
 
形式は気にしていません。ただ、「添付ファイルを見てください」とだけにされるよりは、シンプルでもメールの本文に箇条書きでいただけると内容をすぐに理解できてありがたいです。
 
あと、稀に広報さんの中で取材や記事のイメージまでしっかり固めて、「この内容でお願いします」とご提案をいただくことがあります。私たちも読者へ役立つ形で情報を届けたいと思いますので、その方向性が合致すれば良いのですが、内容によっては「ゴリ押し」というケースがあります。もしそうした形の内容をしっかりコントロールしたい場合は、広告としてご出稿いただいた方が発信したいメッセージをそのまま読者に伝えることができるのかなと思います。

 
Q:電話でご連絡しても迷惑ではないでしょうか?
 
個人的には、電話はご遠慮いただきたいです。在宅で仕事することもあるので、自宅の環境だとなかなか込み入った話が難しいですね。これはタイミングが難しいですが、記事作成や公開の作業に集中しているところ、電話で15〜20分と時間を取られてしまって記事を発信するタイミングを逃してしまうこともあります。

 
Q:リマインドメールについてはいかがでしょうか?
 
記者会見や取材に関してのリマインドメールに抵抗はありません。単純に「プレスリリースを送ったのでご覧ください」は、ご連絡しなくても良いのかなとは思います。

 
Q:コロナ禍でコミュニケーションの取り方が変わってきましたが、広報担当との新しいリレーションをどのように築いていますか?
 
弊社と何も接点がない場合だと、情報提供をいただいた際に興味があったら返事をさせていただいてヒアリングから繋がるケースがあります。あとは広報さんやPR会社さんからの繋がりが多いですかね。また、最近では広報さんが副業でこんなこともやっているのでご案内させてくださいと、他の企業さんの情報をいただくこともあります。

  
なるほど。より良い情報提供の方法など、今回も深く色々と学べました。
ありがとうございました!
(本記事は23年1月時点の情報です)



※過去の連載記事はこちら


(ライター:前田弥生 Twitter
三重県熊野市出身。思い立って沖縄に移住後、未経験でローカル雑誌の編集として取材・ライティング・撮影・ディレクション等を経験。最終的に女性誌の編集長となり、ローカルインフルエンサーの立ち上げ等も行った。現在は東京で、IT企業の広報業務やコンテンツ・SNSを担当している。プライベートでは、保護猫施設でお世話や・広報業務をボランティアで行っている。趣味はキャンプ、サウナ、旅行、赤提灯飲みなど。

(編集・構成:リープフロッグ 代表 松田純子)
B2B企業向けに、伴走型・人材育成型による広報部門の立ち上げ支援コンサルティングを実施。「広報の目的=企業成長」と捉え、新人、ひとり広報でも最速で効率よく広報部門を立ち上げ、企業成長に資する広報活動が行えるよう支援。各種メディアでの執筆、登壇多数 
リープフロッグHP 



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