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LDB出版部#4 書籍『カラーデザインの教科書』取材こぼれ話 /建築家谷尻誠の「からだを細胞からデザインする」お話

「色を知れば、世界は変わる」。

書籍『カラーデザインの教科書』(日本カラーマイスター協会著)は、各界の第一線で活躍するイノベーターの色彩論も収録した「色の教科書」です。
色を知ることは、知識が身に付くだけでなく、家のなかを彩ったり、心身を癒したり、自分自身を美しく魅せたり、身の回りにある色を少し意識するだけで、暮らしは豊かになっていきます。
本書は、各界のイノベーター12人のカラー戦略と、色の仕組みや機能、人への影響力などお話しいただいた内容を収録しています。
その中で建築家 谷尻誠さんの取材こぼれ話をお伝えします。

からだを“細胞からデザイン”する

この印象深い発言をされたのは建築家の谷尻誠氏。
建築事務所「SUPPOSE DESIGN OFFICE」を設立し、広島と東京の2ヵ所を拠点に、住宅、商業空間を始めとする様々な分野で活躍が目覚ましい若手建築家です。
先日のTV「カンブリア宮殿」にも出演されていました。


氏は、自社の東京オフィス内に「社食堂」という、一般にも開放した社員食堂を作られました。これは、働く場所と食べる場所の同居。スタッフが仕事をしている側で、社外の人、知らない人が食事をしている、この混ざり合った空間が面白いのだそうです。

「社食堂」で提供する料理のコンセプトは、毎日食べ続けられる「おかんの料理」です。
普通に、でも丁寧に作られた料理を社員に食べてもらいたい想いから。そして、コンビニ弁当を禁止したかったからと氏は言います。

コンビニ弁当を食べると、体の細胞がコンビニ弁当で形成されてしまう。
人間は食べたもので出来ているので、「細胞からデザインする」ことをやろうと思ったのです。
食べ物が体の細胞を作って、その細胞が健康を司り、脳を作り、アイデアを生み出すのです。
だから、社員がちゃんと考えられる会社にしたかった、ちゃんとした食事を摂れる環境を作りたかったと話します。

混ざり合った“同居”の空間が新たな価値を生み出す


氏の建築で、渋谷の若者のランドマークとなっていた「hotel koe Tokyo」(コロナの影響により2022年1月閉館)も、ホテル、アパレル、レストラン、イベントスペースといった複数の顔を持つ施設を、働く場、暮らす場、食事をする場を分けずに“混ざり合わせた”空間にしていました。

「昔は働くことと暮らすことが一体でした。でも、社会の合理化が進むなかで、目的や役割が分かれて整理されていった。しかし、目的が混ざった昔ながらの「同居」と言える空間が、新たな価値を生み出すと考えます」と氏は語り、コロナ禍で常態化したリモート生活の「暮らす」と「働く」の同居生活を予言したような考えです。

氏の、きちんと考えるための基本に立ち返り、混ぜることで新たな発想を育む場づくりは、新たな付加価値を生んでいくことでしょう。
谷尻さんの今後の化学反応を起こす活躍が楽しみです。
そして、情報だけでなく食べ物もしかり、自分がインプットするものは、アウトプットを生み出す源であることを改めて感じ入りました。
皆さんも谷尻さんの「おかんの料理」食べてみてください。ほっこりします。

「社食堂」代々木上原
住所:東京都渋谷区大山町18-23 TEL:03-5738-8480
営業時間:11:00~21:00 定休日:日曜日(祝日不定休)
カラーデザインの教科書』
著者:一般社団法人日本カラーマイスター協会
定価:2000円(税別)  B5判オールカラー136ページ

『カラーデザインの教科書』    色を知れば、世界は変わる。
言葉を紡いで何かを伝える機会が減ってきたいま、色は言語を使わずにメッセージを伝える、もっともシンプルでもっとも魅力的なコミュニケーションツールです。本書はグラフィックの第一線で活躍する各界のイノベーター12人のカラー戦略と、色の仕組みや機能、人への影響力をわかりやすく解説したカラーデザインの教科書です。

最後までお読みいただきありがとうございました。

文・長谷川千登勢
株式会社ジャパンライフデザインシステムズ 「ライフデザインブックス」発行書籍の数々の出版をプロデュース、メディアの企画・編集を担う。他に、経営セミナーの企画・コーディネート、コンセプトワークに関する企業サポートを行う。