#note書き初め
夢の引越し便 #1-①
真っ青な空の中に
形を変えずにたたずむ
白い小さな雲
肌を刺す冷たい空気を
ゆっくりと押しのけてくれる
秋の太陽
流れる車 釣り人の会話
橋を渡る電車
世界がクズであるように
僕もまた無能の人間である
僕は僕を偽り
僕は僕を失い
そして涙を流す
雲は消えていた
【これは私が大学四年の時に、授業を休み、多摩川の土手に腰掛け書いた文だ。
ゆっくりと秋の匂いがしてきていて、草むらから虫の声が聞こえてい
夢の引越し便 #1-②
雲が消えている。
ずっと雲を眺めていたつもりだったのに、いつ空に溶け込んでいったのか分からない。
僕は何か別のことを考えていたのだろうか。僕は大きく息を吸い込み、大学へ行こうと腰を上げようとした。
「ねえ、少しいいかしら?」
それは今までに聞いたこともない声色で僕の耳を、もしくは僕の脳を刺激した。
洋画の日本語吹き替え版を観ていて感じる俳優の口の動きと、聞こえてくる日本語との違和感のようなものに似
夢の引越し便 #2-①
アパートに帰る途中で二人の警官に止められた。
「遅くにごめんねぇ。盗難車かどうか確認させてもらいます。」
痩せた方の警官が僕に話し掛けてきた。呆れて笑いが出るほど本当に今日は特別な日だなと思った
「どこまで帰るの?」
やけに太った警官が聞いてきた。
「もうすぐそこです。」
「何やってたんだ、こんな遅くまで。まさか酒なんか飲んでないよな?」
太った警官はいやらしい声質で僕の方へ近寄ってきた。
話し方
夢の引越し便 #2-②
②
僕は家に着くとコーヒーを沸かし、「ティーンエイジファンクラブ」というバンドのアルバムを聴きながらハムとチーズとレタスを挟んだサンドウィッチと、玉葱と人参と挽肉を入れたオムレツを作った。時間はそれほど掛からず、ちょうど食べ終わる頃にノーマンは「BALLAD」を唄い、アルバムが終わった。
テレビのスイッチを入れると相変わらずため息が出るほど下らない内容の番組ばかりだった。ニュース番組さえも、視
夢の引越し便 #3-①
記憶を食べる怪物の悪夢が頻繁に訪れるようになった。
僕は怪物の存在に気付くとすぐに目を覚まそうと抗い、意識と無意識の境目を漂った。
大きく目を開き、天井の細かい凹凸を凝視して自分の部屋であること、そして起きていることを確かめる。確かめてもすぐに睡魔に吸い寄せられていく。
またもや背後に怪物を感じる。
だんだん自分は寝転んでいるのか、道を歩いているのか分からなくなってくる。
いや起きているんだ。そう
夢の引越し便 #3-②
【ヒトミは青春時代の僕に一番影響を与えた女性である。
それはまるで青空に浮かぶ雲のように、突然どこからか出現し、形を変え、印象を変え、そして突然消えていった。僕は彼女に影響を与えることができたか疑問に思っている。本来、人と人が時間を共有するとき、お互いに何かしらの影響を与え合い、受け合うはずなのだが、ヒトミは僕から何かを得たようには感じられないのだ。それはきっと僕が受けたヒトミからの影響の大きさに