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夢の引越し便 #0

一つとても気になる問題がある。
それは、「忘却」である。
世に出回る記憶喪失ドラマのように、何もかもを忘れ、特異な人物として扱われるならいざしも、私はなんとか正常な人間として機能し、社会から何かしらの結果を期待されて生活を送っている。だが、全ての記憶を失った人間より私の方がよほど始末が悪い。なぜなら、私の忘却が多くの裏切りや責任逃れや別れや破滅を呼び起こすのだから…。

この物語は、一つの私の美化された記憶だ。
ある一定の時間を経ることによって私の内部からゆっくりと剥がれ落ちる記憶。誰かに伝えなくては、もしくは書き留めておかなければ存在していたことすら忘れてしまう。それを「夢」や「憧れ」や「空想」や「欺瞞」や「自己陶酔」と呼ぶのであれば、それらはあまりにも空しいものになってしまう。私の記憶を現実の世界に留めておくことを最たる目的とし、私は語りたいと思ってしまったのだ。
もちろん、その行為が「私を救う」以外に何の意味も持たないということを十分理解したうえで。

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