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昔、祖母が白蛇を見たという話

お盆になると亡くなった祖母がよくしていた話を思い出します。

私の地元ではお墓参りは8月13日の夕方から夜にかけて行うのが一般的でした。今でこそまだ明るいうちからお参りすることも多いですが、子どもの時は暮れかけた頃提灯を持ってお寺の裏山にあるお墓に出掛け、お供えした蝋燭から提灯に火を移し、消えないように注意しながら帰り、その火で仏壇の蝋燭を灯したものです。

母方の先祖の墓に参った後、祖父母の家で叔父叔母いとこ達と過ごすのが毎年の恒例でした。そんな時、祖母がいつも語る話がありました。

祖母が嫁いでまだ若い頃、家の者が皆お墓参りに出掛けて行き祖母が留守番をしていました。すると、玄関先の薄暗い土間を大きな白蛇がずりっずりっと這って行ったというのです。大層驚いたそうで、長年その話を繰り返していました。

真夜中には、時々、家と繋がっている天井の高い納屋からどーんどーんと音が聞こえてきたとも話していました。祖母はそれが自分が見た白蛇が梁から落ちる音に違いないと言うのです。

誰もこの話を信じている様子はありませんでした。セメントの土間に大きな白蛇が這っている筈がない。納屋に住みついてましてや梁から落ちるわけがない。みんなそう言って本気にしませんでした。それでも祖母は何度もその話を繰り返したものです。

私もきっと錯覚だったのだろうと思ってきました。でも、小さい頃その話を聞くたびに、土間を這うその姿を想像して少し怯えたりワクワクしたり、梁から落ちてしまう不器用な大蛇を思い浮かべて痛くないかしらと心配したものです。

そして今も思い出すのです。その話をする祖母の真剣な姿と、みんなで聞いたあの頃を。

祖母が他界してから30 年以上経ちました。

あの白蛇は本当にいたのでしょうか。そして祖母にだけ姿を見せてくれたのでしょうか。いつか私も見ることがあるでしょうか。

今年は新型コロナで帰省出来ませんでした。そのせいか、いつもより深く鮮明にあの頃のことを思い出しています。

End

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