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「夜道を歩く時、彼女が隣にいる気がしてならない」読書感想

今回の本は、和田正雪さんの「夜道を歩く時、彼女が隣にいる気がしてならない」です。

青春恋愛ホラーという、盛沢山な小説ですがしっかりと各要素がパートごとに際立っています。

主人公の米田は、オカルト雑誌編集部で働く大学生ライター。
そして乃亜という、異界へ行くことを夢見る「赤い女」。
実話怪談記事の執筆もおこなう米田は、夏休みに奇妙な祭りの風習があるという話を聞いて、後輩の実家がある山奥へ向かう。

まずは怪談だと思って躊躇せずに、気になった方は読んでみてほしい。
全体的には青春小説のライトな空気でサクッと読める。
主人公が「幽霊なんて信じない」とドライに言ってのける性格なのが、その空気感を保っている要因かもしれない。
しかし、読み終えて思うのは、しっかり怪談が軸としてあるということだ。

田舎の奇妙な祭りに参加するというメインディッシュと、もう一つはデザートのような現代の都市伝説。
片や「これぞ怪談話」といった風習や言い伝えからくる重苦しい雰囲気が、しかっりとこのメインパートに入ると表現されている。

そしてもう一方は、現代の怪談。こちらは自分の恐怖感を敏感に刺激してくる。前者の「どこか山奥の集落で行われている祭り」といった、不気味さはあるものの日常との距離感がある話とは違い、直接的に恐怖という刃物がチラつく。それでも、この段階ではすでに読者と登場人物のあいだに築かれた信頼感があることで、恐怖だけでないほかの感情も一緒に歩いてくれるからそんなに心配しないでほしい。

もしも、この小説を読みたいと思っているのだったら今年中に読むことをお勧めしたい。
なぜかというと、描かれている話がまさに「令和の現在」と非常にマッチした内容になっているので、旬の食べ物は美味しいうちに食べるのがいいと思う、そういった理由だ。怪談や都市伝説は、時間を経てさらに旨味が出てくることもあるとは思う。でもそれは、その時になってみないと分からないのも確かなことだと思う。
時代を懐かしみながら読む物語もいいかもしれないが、今回は是非、新鮮なうちに楽しんでもらいたい物語だと思いました。

書店に並ぶ帯には、「僕の彼女は、怪談になった」とあり、わたしはこの言葉が気になったので手に取った。
表紙のイラストも素敵なものでした。ブルーの中に緑が混ざったような淡い色にふんわりとした少女のイラストは、作品をあまり暗い話にしないよう一役買っているようでした。
気になる方は、読んでみてください。

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