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「読」だけなのに満たれてる「胃」|『白雪美香は彼氏ができない!』|#創作大賞感想文

ただいま絶賛お祭り中です。猫暮です。

え、外から祭囃子でも聞こえてきているのかって?
そうじゃあありません。
note創作大賞2024ってことで、文章たちが静かにどんちゃん騒いでいるんです。

ごはんがパンパンに詰まったイカ焼きの香りもないし、キリンの首みたいな長さをしたソーセージが列をなしているわけでもない。
ぐるぐるとポールダンスしながらスモークされるドネルケバブもないですし、明らかに糖分の配分ミスってるリンゴ飴も視界に入ってません。
それどころか、私のテーブルの上に食べ物らしい食べ物は0です。

もちろん、縁日を連れ添って歩くような、浴衣姿の映えるパートナーも横にはおりません。

でも、不思議と今の私はおなか一杯ですし、恋愛欲求みたいなものも十分に満たされています。


Q.なぜでしょう?

A.猿萩レオンさんの『白雪美香は彼氏ができない!』を読んでしまったからです!!!!!!!

あらすじ

福岡市在住のユキミこと白雪美香しらゆきみかは、雪見だいふくを擬人化したような色白のもちもちとした25歳女性。イケメン好き。食べることが大好きで、ダイエットが苦手。妄想癖があり、元気いっぱいな独身女性である。

ユキミは彼氏が欲しいと考えているが、ぽっちゃりとした体型のせいで彼氏ができないと悩んでいた。
そんな中、ユキミはマッサージ師の足利琥太郎あしかがこたろうに一目惚れをし、ダイエットを決意する。

果たしてユキミのダイエットは成功するのか。
そして、琥太郎と付き合うことはできるのか。


満腹感のエチュード!

食べること大好き!
イケメン大好き!
そんな自分自身も大好きなユキミちゃんが、ひたすらに恋愛街道を突っ走る爽快感あるストーリー!

何より、食の描写へのこだわりがすさまじいのです。何を思ったのかダイエット促進委員会と全国グルメリポートツアー促進委員会がガッチリと握手してしまったの如く、相反する想いがユキミの頭の中で不合理を起こしまくっています。

この作品を読んでダイエットに成功している人がいたならばソイツはもう人間を越えちまってんだろう…ってくらい暴力的なグルメ描写が続いています。

食べた時の全身から迸ってるであろう幸福物質が見えます。
え?もう感じたことをただ描写しただけですが、なにか?と言わんばかりに読者の胃に咆哮をあげさせてきます。
多分レオンさんには「食の喜び」のカタチそのものがクッキリと見えている。その表現力が群を抜いていて、3食分しか設定していなかったはずのお腹アラームがしきりに誤爆するんです。
…なんで今わたしのテーブルの上に食べられるものが一つもないの…新手の拷問かこれ…。

でも、逆に考えます。
猫暮はそこまで食べることにこだわりがないからこそ、ユキミちゃんによって感じることの出来ない感覚を補完してもらっている。
つまり、代わりに食べてもらって、全身の喜びを表現してもらい、それを私が摂取している。
「食」をショートカットしてダイレクトセロトニンさせられてます。

これってすごいことです。
自分にはない感覚を拡張してもらってる感じです。
多分、私が後天的に食に対して情熱を持っても拘りを持っても、先天的に本当の「食」の喜びには、足元も及ばない気がするのです。

さらに、その食を表現するって力も必要です。
体全身で感じていたことを表現するべく、あの手この手で読者の胃腸を喜ばしてきますし、旨味を伝搬させてやろうという意思(というか野望)が伝わってくる。普段投稿されているエッセイからも薄々感じていたではありますが、並大抵のこだわりではありません…!
食べることも、飲むこと、書くことも大好きなレオンさんだからこそ書ける、唯一の食系恋愛小説なのかも。

もしもレオンさんが「悪即斬」でお馴染み、るろ剣の「斎藤一」だったら「食即書」って感じの方向性で世直ししているかもしれません(?)


青ヒゲのハラハラ感

物語にnoteが絡んでいく仕組みも面白いと思いました。
創作大賞の作品の題材としてnoteを持ち出すの、ピッタリです。
思わず「その手があったか!」と唸ってしまいます。

そうして題材にしたnoteに登場する癖の強そうなキャラクターが、青ヒゲペローです。ワンピースで懸賞金にでも掛けられてそうな名前の彼は、はじめこそ実在が疑われるほどの偏屈っぷり。
ユキミも、その親友であるチョコとケイキも「こんな人いるの~?」って面白がりながら彼のnoteに目を通す。
(…やばい登場人物のニックネーム書いただけでまたお腹が…と、それは置いといて)

でも、その青ヒゲがどうにも不穏な空気を纏いだす。なにやらただ事じゃない「事件」が起こっているのではないかとユキミが不安に思い始めるも、まわりは、え~ユキミは素直可愛いね~だのなんだのと茶かれては相手にしない。
自分の心に浮かんだ胸騒ぎをかたくなに信じるユキミ。
今思えば、これこそが自己肯定感の高さを示すユキミのエピソードというか心情描写でもあり、私もそれに感応してか不穏な空気を肌で感じていました。物語の中盤は、ずっとハラハラさせられていた気がします…。

「え!これってまさかのミステリー+恋愛モノなのか!?」と妄想を巡らしてから、単なる恋愛トキメキ感情とは違う動悸が止まりませんでした…。

「小説100質問」の記事にてレオンさん、ミステリー苦手~なんて書かれてましたけれど、え、読者目線めっちゃ惹き込むミステリー展開されてましたよ…!
苦手なジャンルであってもこの臨場感を演出できるの、すごくないです?

私はパソコンで読んでいたんですが、ユキミが犠牲者がでているかもしれない…って示唆した時の、私の前のめり具合を見て頂きたかった…。なんかモニターから引力が発生してました。吸引される猫暮。

ミステリーものも書いてみたいと、記事の中でもさらりと紹介されていました。次回作でミステリーを採用されるのであれば、駆けつけ一杯…じゃなかった、駆けつけ一読させていただきますので、なにとぞ…!


推せる自己肯定感の持ち主、ユキミちゃん

自己肯定感が鬼低い私からすると、自己肯定感アゲアゲなキャラクターってたまに鼻についてしまうことがあるのです。それが完璧な人間像を持っていたら尚更で、するとあんまり物語だったり、その人への共感が薄れて入り込めなくなってしまうんです。

しかし、この物語のユキミちゃんは一味違います。最初は、彼女に対してうーん?と思いつつも、読み進めるうちにこの純朴な自己肯定感のとりこになってしました。

私自身、面食いでも、食べるの大好き~ってわけでもないのに、読んでいる内にユキミのマシュマロの一部になったような気分になるんです。
猫暮は、自己肯定感が高い人に近づくとすぐに取り込まれてしまう癖があります(その後に血糖値スパイクばりの反動で堕ちるのが特徴的)

こう、なんというかテンプレートではない、芯からある自己肯定感がナチュラルに馴染んでいるんです。そうして、すんなりと受け入れられる純朴さこそ、ユキミの魅力なのかもしれません。
たとえ直接的なイメージがなくとも、そのもっちゃりボディから魅力があふれでています。
琥太郎そこ代われ…!私がうっまい寿司屋連れてってやんだ…!

対面したりリアルな方から影響を受けることはあれど、物語の登場人物から立ち昇っているのを如実に感じるって、なかなかない体験です。それほどユキミのキャラクターが確固たるものとして描かれている証拠なのかもしれません。

ネタバレになっちゃうからあんまり言及できないけど、どのキャラクターもパーフェクトじゃないからこそ、その人間味に憧れるし共感できるし、トコトン推せると思ってしまう…!みんな読んで…!


まとめ!

もう、描写から味がしました。

ずっと目から摂取してます。何も食べてないはずの胃袋が拍手喝采してます。夜に見るものじゃありません。一周回ってホラーです。なにこの満腹感。ありがとうございます。最高です。もしかしたらこの作品はお酒のつまみとして最大限の効用をもたらすかもしれません。美味しんぼとクッキングパパと翔太の寿司と鉄鍋のジャンに並べて居酒屋の雑誌コーナー(?)に配置すべきです。

最近、執筆活動に勤しんでいたこともあり、あまり記事を読みに行けていませんでした。創作大賞が落ち着いてら、反動でたくさん読んでしまいそう…!
ただし、レオンさんのエッセイを覗く時、横にササっと食べられるものを置いておかないと……おなかの獣にやられてしまうかもしれませんヨ。


レオンさん、とっても素敵な作品、ごちそうさまでした!




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