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「まるで本当の家族のように気にかけてくれた」フィリピン人英語講師の人間模様

「Always be grateful, even with small things.――どんな小さなことでもすべてのことに感謝してる」。今日は初めて先生の近所の人の話を聞きました。親のように、ずっと親身になって面倒を見てくれた人たちのことについて。

自分の家じゃないような居心地の悪さ

フィリピン人英会話講師。彼の話を聞き続けて2年以上がたちました。最初はすごくハートフルな家庭に育ったと感じていた先生でしたが、話を聞くうちにまったく逆だっということが分かってきました。

「実の父親も母親も大嫌いだった。とくに父親には死んでほしいとまで思っていた。でも、実際に父親が亡くなったあとに、ものすごく後悔した。だからせめて母親だけでも愛そうと決めた」。父親の死後、別の男性と再婚した母親は、義父となる男性に気を使い、彼の父親との間にできた子どもたちの面倒をあまり見てくれなかったといいます。そんな彼ら兄弟のことを心配してくれたのが近所の人だったそう。

まるで本当の家族のように気にかけてくれた

「僕は歌を歌うのが好きだけど、義父も母も、僕が家で歌うのを嫌がった。うるさくされたくなかったんだろうね。だから、僕はいつも海にいって歌の練習をしていたよ。ただ、ときどき近所の人が家に招いてくれて、ここで歌を歌っていいよといってくれたんだ。マイクを用意してくれたこともある。彼らはとても親切にしてくれたよ。

僕ら兄弟が十分な食事をしていないときは、食べるものもくれた。洋服がないときは洋服も貸してくれた。僕は、当時は子どもで何もできなかった。でも、今は大人になり、働けるようになったから、実家に帰る時はいつも近所の子どもたちのためにちょっとしたお菓子などを買っていくんだ。僕は、彼らの親がしてくれたことを覚えている。どんな小さなことでも、すごく感謝している」

そういえば、以前、彼はフィリピンでの誕生日会のことについて話したとき、近所の子どもたちをたくさん招いてお祝いをしたいといっていたことがある。それは、自分が子どもの頃に、近所の人たちにお世話になったからこそ、今その恩返しをしたいということだったのかもしれない。

血よりも濃いつながりが生まれることもある

以前、ほかの先生に話を聞いたとき、彼女の一番下の妹は血がつながっていないといっていた。どういうことか聞いたら、本当は妹は隣の家の子どもだけど、両親が忙しく赤ちゃんの時から彼女の家で面倒を見ていたそう。だから、今もずっと彼女の家族のことが大好きで、一緒に暮らしているのだそう。フィリピンでは貧困世帯も多く、それによってお互い助け合いの精神が育ちます。逆にいえば、助け合わないと生きていけない。そして、自分が大変な思いをしたからこそ他人の痛みにも敏感。フィリピン人の多くが共感度が高いのはそのためでしょう。とはいえ、個人主義で自分本位なところもあるのも事実。別にそれは悪いことではなく、相手に合わせすぎないことも必要だと思います。

同じ兄弟だけど、超えられない壁がある

彼は6人兄弟の長男。彼と彼の妹2人は実の父親と母親との子ども。ほかの3人は、義父と母親との子ども。いわゆる異母兄弟。

「母親は、義父との間にできたきょうだい3人に対しては、新しいおもちゃや洋服を買ってあげた。義父の稼いだお金だからね。義父は僕と2人の妹のために母がお金を使うのを嫌がった。だから、僕らのものを買うお金は、母親が働いたほんのわずかなものしかなかったんだ。だから、いつも我慢していた。

物心ついてから、母親からプレゼントをもらった記憶はないよ。妹が8歳の時の誕生日も、母は妹に”あなたはもう大きいからなにも必要ないわよね”といってなにも買わなかった。妹は泣いてた。

家族は、誰も僕にプレゼントをくれたことがない。兄弟たちはまだ子どもだからお金は稼げないからね。いつも僕がお金を送ってあげて、それで買うんだ。兄弟は仲がいいよ。僕は妹たちを愛してる。異母兄弟だけど、大切な家族なんだ。

僕が始めてカラオケ大会に出るとき、新しい洋服を買ってほしいと思った。でも、母は買ってくれなかった。だから、僕は自分が持っている服の中で一番いいと思えるものを着て出場したんだ。審査員の一人がゲイで、僕は彼を見た時にすごくワクワクした。なぜなら、僕はゲイで、彼もゲイだから僕のことを理解してくると思ったんだ。でも、違った。彼は僕を見て一言、ダサい服といった。すごく悲しかった。

僕だってかっこいい服を着たかったし、おしゃれをしたかった。でも、カラオケ大会に出るための洋服を用意してくれるような人はいなかった。でも、僕はそこでファッションがいかに大切かということを学んだ。だから大人になって洋服を選ぶことに情熱を持てるようになったし、モデルの仕事にもつけた。思い出は悲しいけど、そこから学ぶことはたくさんある」

妹たちを守りたい。父と母の役割をこなしていた

彼はいつも前向き。いろんなことがありすぎて、自分ひとりで受け止められないことも多かったと思いますが、とにかく妹2人を守るために必死に前を向くようにしてきたのだと思います。

以前、私が彼に「あなたは、父親とともに母親の役割もしていたの?」と聞いたら「そうだ」といっていました。父親が亡くなり、母親しかいない。でも、母親は新しくできた夫との間にできた子どもたちのお世話で手一杯。義父と彼ら子どもたちの関係が悪かったこともあり、母親はいつも義父の機嫌が悪くならないようにと気を使っていたようです。

時々彼は「母親は、僕よりも義父のほうが好きなんだと思う」と話していました。亡くなる直前まで仲がよくなかった元夫との子どもよりも、今の生活を支えてくれる義父とのことを優先させるのは、ある意味仕方がなかったのかなと思います。

プレゼントは金額じゃない。どれだけ相手のことを思っているか

「母親からは、プレゼントはもらっていない。でも、母親はネイルケアの仕事もしていたから、爪のケアをしてくれたことがあるよ。ネイルをしてもらったら指先がすごくきれいになるんだ。これは母親からのプレゼントだよ。プレゼントって物をもらうだけじゃないんだ。誰かのために何かをやってあげること。これだってすごく大切なプレゼントだよ。金額じゃない。

たとえば、恋人が僕に誕生日やクリスマスに高価なプレゼントを買ってくれる。でも、僕は家族に送金しないといけないから十分なお金を持っていない。だから高いものは買えないんだけど、それでも精いっぱいのことはしている。本当は、僕も同じように高いものを買ってあげたいと思うけど、それができないからね。

誰からプレゼントをもらう時は、すごくワクワクするよ。まるで子どもの時に戻ったみたいに。家族は誰も僕にプレゼントをくれなかったけど、だからこそ嬉しい。僕のことを考えて、どれがいいかな?って選んでくれたんだと思うと、それが嬉しいんだよ。お互いに、なにが好きで、どんなものに興味があって、それを知ったうえで選んでくれているってことが嬉しいんだ」

In life, you need to be blessed, and you need to be a blessing, as well.

レッスンの冒頭、何の話をしていたときか忘れたけど、彼がこんな言葉を書いてくれた。

In life, you need to be blessed, and you need to be a blessing, as well.

人生において、あなたは祝福される必要があり、あなたもまた祝福される必要がある。

私は、先生の話を聞き、話をすることで、ずっと避けてきた自分の問題と向き合うことができるようになりました。

「あなたの家族の、いい思い出を教えて。思い出せることだけでいいよ。どんなに後悔しても過去は変えられない。なぜならもう父親はいない。僕らは後悔してもなにもできないんだ。だからいいことだけを思い出そう。いい思い出がほんの少ししかなくても、それだけでも十分だ。妹たちはそれすらも覚えていない。幸せな気持ちで心を満たそう。聞いてくれてありがとう」

本当のことをいうと、今日はSDGsのレッスンをしようと思っていたけれど、またフリートークに(笑)。オンライン英会話は、英語を習得するのが目的ですが、その過程にはいろんな人との出会いがあります。これまで何人もの人にライフストーリーを聞いてきたけど、そのたびに思うことは、「もっと英語がうまく話せたらいいのに」ということ。英語を学びながら、その過程で出会った人たちの話に耳を傾け、noteに記録を残す。

英語学習ができるうえに、「もっとちゃんと話ができるようになりたい」とモチベーションも上がる。そういった意味では、オンライン英会話というのは、とてもいいシステムなのかもしれません。








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