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Large Arkと言います。一人バンドです Twitter : https://twitter.com/large_ark Instagram : https://www.instagram.com/large_ark/

最近の記事

春を待つ

 バイト帰りの空は当たり前のように真っ暗で、そう思っていたら、今日は少しだけ明るくてびっくりした。  いつのまにか季節の変わり目に差し掛かっている?そういえば昨日今日と天気も良く、風はなんだかいい香りがする。たまらなく懐かしくて、それでいて切なくて、いろんなことを思い出してやりきれなくなっちゃうような匂い。でも、この香りは好きだ。 一  朝、小さな子どもたちが引率の先生に連れられて、目の前をとことこと歩いていった。水色の帽子を被った一人の男の子が、こちらを見ながら、すごく

    • 僕がサナギだった日のこと

       12月4日、月曜日。  ほとんどの人にとって、名前のつかないいつもの1日だったと思う。  僕にとっては、2年前、4トントラックに乗って愛媛から大阪に引っ越し暮らし始めた、まさにその日なのだった。  ライブハウスに向かう電車の中で、最近では振り返ることも減った、地元で悶々としていたときのことを思い出す。  20代前半から中盤にかけての5年くらいを、僕は何をするでもなく、ただぼんやりと過ごしていた。実家に住み、死なない程度にお金を稼ぎ、夜な夜な車の中で歌を録る。自然の中で散

      • 今日も変わらず空は晴れ

        (この物語はフィクションです)  うるさいもの、ぎらぎらした色、冷たい部屋、硬い質感。  遠回しの会話、見え見えの打算、ただの悪口、むきだしの感情。  たぶん向こうも意味がないと分かっているが、一応時間を共に過ごすので、お互い空っぽの言葉を吐き合う。  我慢できなくなって、すごく切実に自分が感じていることを、ためしに尻尾だけ出してみる。そしたら「それってこういうことだよね?わかるよ」と、勝手に違う箱に仕舞われてしまった。  よくわからんけど、みんなが楽しそうなので、

        • 風穴を開ける、その2

          この間、和歌山のとある港を通りがかった。 かなりの郊外。周りは倉庫、工場、コンテナだけ。磯の香りと鼻をつく化学的な匂い。 港の縁では何人かのおじさんがあてもなく釣り竿を垂れ、それを巨大な鋼鉄のキリンが見守っている。 遠くの方で大きめの漁船がボー…と警笛の音を出し、見上げると、カモメが群れを成して同じ場所をぐるぐると回っていた。 ふと、地元の風景を思い出す。 自分の中で原風景と呼べる場所の一つが、工場地帯の海だ。地元の海はお世辞にも綺麗と呼べる場所ではなく(都会に比べたらま

          生活に足りない行間

          『Life Goes On』のアルバムを作っていたとき、「繰り返しの日常」のようなものについて、曲や映画や小説や、いろんな形で人の表現を見た。 そのころ僕は、実家で細々とアルバイトをしながら他人の表現を浴びるように摂取したり、夜な夜な一人で親の車を乗り回したり、その車内にコンデンサーマイクを立てて夜明けまで歌を録ったりしていた。エンジンの音も拾うので夏場でもエアコンは無し。長くてもせいぜい2、3時間程度だけど、終わるころには身体は汗でぐしょぐしょ。冬場なら自分の熱気で窓が真

          生活に足りない行間

          ぼくがノーと言うとき、きみはいつだってイエスと言った

          船、飛行機、バナナ。 寒色の室内灯。 濡れた指を拭いた後、さらさらした紙に触ること。 綺麗じゃない騒音。 すぐ感情的になる人。 水道の水。 ◆◆ 昔は無理だったものが平気になることがときどきある。 水道水を飲めるようになったのはこの一年半のこと。 自分はたぶん、前よりたくさんの人と話せるようになった。 それは良いことでもあり、悪いことでもある。 ◆◆ はっきりノーと言える人が羨ましかった。 苦手なものが多いのに、すぐに人と合わせてしまう自分がずっと嫌だっ

          ぼくがノーと言うとき、きみはいつだってイエスと言った

          風穴を開ける、その1

          くるりの「ハイウェイ」の歌い出しみたいな気分によくなる。 答えはなくて、今でもそこそこの頻度でその気持ちになる。 このことについて考えるとき、僕の中に、二種類の生きづらさが浮かび上がってくる。 一、何かがうまくいかなくてしんどい。 ニ、目の前のことはそこそこうまくいっているが、ときどき息が詰まりそうになる。 前者はそのうまくいかないことをどうにかするだけなので(しんどいけど)、ある意味単純。 厄介なのがニ、で、これはもう癖というか体質というか、そういう人間は延々と悩んで

          風穴を開ける、その1

          ベターじゃなくてグッドを

          「ならベストじゃなくてグッドを目指さんとな」 どういう話の流れだったか忘れたけど、あるとき友人が言ったこの言葉が強く僕の中に刺さっている。 ◆◆ ある映画監督が、「僕が絶対に守るのは予算と納期」と言っていた。 それを聞いた時、いろいろと合点がいった。監督の作品を見ていると一視聴者として、「この人なら、この作品はもっともっと磨いて違う形にできたんじゃないだろうか」と思うことがあった。 彼はインタビューで、自分はそのときの案件で、その枠でできることを最大限にやる、というこ

          ベターじゃなくてグッドを

          願い事

          小学校低学年のころ、ある七夕の日に、家族で短冊を書いて飾ることになった。 他の人が何を書いていたのかは覚えてない。 ただ、自分が書いた願い事は「新しい自分に生まれ変わりたい」だった。 それを見て母親がものすごく怒り、ものすごく泣いた。 なぜそのとき自分がそんなことを書いたのかはわからない。 でも思い返してみると、幼稚園から小学校の時点で、今でも悩むような人間関係のこととか、なんかうまくできないなぁとか、人はもっと簡単そうにやれてるのになぁとか、そういった思いを持つこ

          生活と創作

          夜勤明け。今日は夜までなにもない。 この前できた新しい曲のギターを録音し直す。 今までにない感じのができた気がする。 大阪に引っ越してから、新しい場所や人と関わったりで、学生のとき、一人でご飯を食べるのも忘れてPCに向かって延々と宅録してたあの時間が、本当にめっきり減った。 荒れ果てた生活だったけど、好きな音楽だけを聴いて、好きなようにギターを弾いて、好きなように曲を作ってた時間がたまらなく愛おしい。 最近、そんな時間がまた戻ってきた。 人と関わることも、日銭稼ぎに

          生活と創作

          千林大宮, 2022

          眠い、しんどい。 朝早めに起きて仕事。15時まで働いて上がり。でないとやばかった。立ったまま寝そうだった。体が悲鳴を上げている。心はよく分からない。 やらねばならない、ねばならない、ねばならない… 心も擦り切れてる気がする。あと数ミリずれたら崩れてしまいそうだ。 自分のための時間を少し入れよう。 別の用件があったが諦める。銀行に寄らないといけなかったので疲れた身体を引っ張って千林商店街へ。 …むしゃくしゃして、なけなしのお金でグリルシマダの上コロッケを買う。 100

          千林大宮, 2022