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ぼくがノーと言うとき、きみはいつだってイエスと言った

船、飛行機、バナナ。

寒色の室内灯。

濡れた指を拭いた後、さらさらした紙に触ること。

綺麗じゃない騒音。

すぐ感情的になる人。

水道の水。

◆◆

昔は無理だったものが平気になることがときどきある。

水道水を飲めるようになったのはこの一年半のこと。

自分はたぶん、前よりたくさんの人と話せるようになった。
それは良いことでもあり、悪いことでもある。


◆◆

はっきりノーと言える人が羨ましかった。
苦手なものが多いのに、すぐに人と合わせてしまう自分がずっと嫌だった。

でも、イエスと言い続けた先の今も、悪いことばかりじゃない。

そう、たとえば水道水を飲めるようになった。
些細な日常を楽しめるようになった。
それは誰かにイエスと言ったからだった。

最近、ときどきはノーを言えている。
でもときどきだから、良いのかもしれない。

すべてにノーと返したら、元気な人とも話せなかったし、ミョウガの良さとかも気付けなかったし、

電車を降りたらものすごく寒くて、ぷるぷる震えながら帰る。
何かが足りない気がするし、十分揃ってる気もする。
もうビールは冷めてしまった。寒いから良いか。今日は郵便受けを見ない。窓は開けようかな。自転車よりも歩きたい。どこに向かおうか。どこに行ったっていいか。ほんとはあのとき何て言いたかったのか?

今の自分はどうしたい?

明日の君は何にイエスと言う?

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