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Trip|私のフィンランド探訪記 〈08.カラフルな街並みをつくる、ドアと窓〉

フィンランドの美しい自然とデザイン、そこに暮らす人々に魅了され、その魅力を発信する活動を行うイラストレーター・フォトグラファーの入海ヒロさんがお届けする、“読む”フィンランド旅。

電車やバスに乗ると、車窓から見える家のドアや窓、ベランダに惹かれます。そのドアの向こうにどんな人が住んでいて、どんな暮らしをしているのか、想像することが楽しいのです。フィンランドに行ってもそれは同じ。散歩しながら、遠出した先で、あちこちのドアや窓を写真に収めました。今回はフィンランドで撮ってきた、住宅のエクステリア、ドア・窓コレクションをお届けします。


赤い壁の家

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まずは、ホストファミリーの親戚宅のエクステリア。森の道を奥へ進むと現れる、赤くて可愛らしい家。この家に住むおじさんは、体格が良くあごひげを生やし、まるでアニメの中の牧場のおじいさんのようです。彼が自分で建てたというその家は、想像していた「フィンランドの田舎の家」そのもの。家の中には大きな白い手作りの暖炉があり、歩くと軋む木の床には手作りのテーブルと長いベンチ、壁には古いラジオがあり、窓にはギンガムチェックのカーテンが掛かっていました。あまりの可愛らしさに写真を撮ることを忘れて、しばらくうっとりとしたものです。

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こちらはそのおじさんが建てたサマーコテージのドア。デッキブラシも装飾の役割を果たしているように見えます。実用的だし、ポイントにもなって、真似したくなりますね。

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フィンランドでは、赤い壁の家を多く見掛けました。独特なレンガ色は、赤土から取れる塗料で、日本では「ベンガラ」と呼ばれています。日本のお寺などでも使われている塗料でもあるので、懐かしさを感じるのはそのせいかもしれません。ベンガラは古くから家屋の塗装として使用され、木造の家を長持ちさせる効果があるそうです。雪が降り、冬が長いフィンランドに適した塗料なのでしょう。冬の真っ白な雪原にレンガ色の家がくっきりと浮かび上がるその光景は、フィンランドの景色を象徴するもののひとつですね。


ドアコレクション

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フィンランドの住宅街では、いろいろな色のドアがパレットのように並んでいました。こちらはすっきりと洗練された印象の玄関ドア。白にパステルブルーの優しい組み合わせです。丸い窓とマリンテイストの色、海が好きな人が暮らしているのかもしれません。フィンランドの戸建て住宅の多くは、冷えた外気を家の中に取り込まないために、玄関のドアの内側にもう1枚ドアがあります。1枚目のドアを開け、靴を脱ぎ、2枚目のドアを開けて家の中に入ります。

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こちらは先ほどとは逆の配色のドア。1階にリビング、2階には子ども部屋があるのかも?窓辺に飾られている雑貨や植物をちらりと見て、そこに住む人物像を思い描いてみるのも散歩の楽しみのひとつです。

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少し奥に入った静かな場所にあった家のドア。空間の色や雰囲気に合うリースが印象的です。

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日本ではあまり見かけないドアや壁の色は思わず写真に収めたくなります。手入れの行き届いた玄関。植えられた植物や、置かれた花のお世話をするお母さんの姿が思い浮かびます。

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優しい色の組み合わせ。こういう色彩感覚が新鮮で、街を散策しているだけで美術館巡りの気分です。

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集合住宅のドアは、個人住宅よりも重厚な印象。シンメトリーに配置された黒い鉢に赤い花がレンガの壁やドアとマッチした、上品な印象のエントランスです。


窓コレクション

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ドアに続いて、窓のフォトコレクションをご紹介します。こちらは、遠足気分が味わえる島、セウラサーリの教会の窓。よく見ると小さなガラスの組み合わせで窓に模様ができています。窓の形や屋根のデザインに丸みがあって、まるでお菓子でできた家のよう。

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ダイヤの模様のある窓。部屋の中に落ちる影を、この部屋の主は楽しんでいることでしょう。

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ヘルシンキ中心部では、1階フロアが半地下になっている建物によく出会いました。少し低い位置にある窓。庇と窓枠、プランターの組み合わせが懐かしい雰囲気ですね。

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一時滞在していたアパートの踊り場の窓。高さのある窓と白樺の組み合わせは、密かな憧れだったので毎日癒されていました。段数多めの階段の中、一息つくきっかけをくれる窓です。


グリーンのある窓辺

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窓辺には、必ずと言って良いほどにグリーンが飾られていました。こちらは、元病院だった建物の一角。ギャラリーや資料館、アトリエのある施設です。大きな窓のそばには小さなラウンジスペースがありました。植物がいくつも飾られて、真っ白な空間に温かみが添えられています。

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滞在したアパートにも白い窓にグリーンがありました。窓は二重になっているので、冬は外の寒さを感じずに過ごせます。

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白い壁と背の高い窓、グリーンの組み合わせで、明るく感じる部屋の中。フィンランドの家で見る、日差しをたくさん取り込む大きな窓が好きです。


番外編

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こちらは、以前フィンランド滞在中に訪れたデザインマーケット会場の窓。元々は工場として使われていたこの場所は、建物数階分が吹き抜けになったような天井の高さ。私が今まで見た中で最大級の白い窓です。

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屋根を切り取っただけの写真ですが、レンガの煙突、屋根の角度、壁の色、紅葉し始めた葉…、全てが美しく調和した光景のように思います。

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LAPUAN KANKURITヘルシンキ店の窓。壁の色と黄色いベンチ、植物の組み合わせが優しくて、お店の雰囲気が感じ取れます。


旅先では、街に並ぶいろいろな家のエクステリア、ドアや窓を見ているだけで、ちょっとした美術館巡りをしているような気分を味わえます。フィンランドに行ったら、そこに暮らす人々に想いを馳せながら、街歩きを楽しんでみてくださいね。

栗原さん

Instagram:@hiroro2_suomi
twitter:@hiroro_drawing

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