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バ美肉既婚者、メタバースで男に振られる - 心のメンヘラを解放するには肉体廃止しかない

 昨日、VRChatで好きだった男に振られた。私は彼にとって重すぎた。またやってしまった。「みすみさんの愛に耐えられないよ」と言われた。こんな事を毎回繰り返している。こんな制御不能な肉体なんか滅びてしまえ。

 彼との出会いは2021年9月下旬。私がバ美肉抗議事件で炎上し、アンバサダーを解任された二週間後のことだ。私は全ての信頼と自尊心を喪失し、VRChatで安住の地を探して彷徨い歩いていた。その中で偶然出会ったのが彼だった。

 私と彼はあっという間に仲良くなった。二人きりにで4時間かけてProject:Summer Flareをクリアし、そのままプライベートなワールドでスキンシップをしてから一緒に寝た。彼は私にいっぱい甘えてくれたし、私は彼にいっぱい甘えた。そんなことを毎晩のように繰り返した。「お嫁さんになりたい」と言うととても喜んでくれた。

 2月くらいから会えない時期が続いた。4月に再会したときはいっぱい泣いた。「みすみさんのことは忘れられないよ」と言い、彼は私を抱きしめてくれた。しかし、私は会えた嬉しさと「会いたい」という強い欲求で彼にメッセージやインバイトを多く送りすぎてしまった。

 昨日、私は振られた。彼は「みすみさんと話すと楽しいし、人生のためにもなるから、特に好きな友だちだよ。今後もよろしくね」と言っていた。「いちゃいちゃは後戻りしそうで怖いからもうできない」ときっぱりと断られた。私はいっぱい泣いた後、「思い出を消すためにVR文化ごと葬るかもしれない」と言ったものの、その瞬間にすとんと何かが落ち着いた。「ヤバい方の蘭茶みすみが出てきてるよ」「中身まで入られるとまた好きになっちゃうじゃん」。ミラーの前で身体をくっつけながら「こうやって馬鹿みたいな話をできる関係がいいよ」二人は笑いながら別れた。
 
 独立記念日だ。自力で全国紙に載り、2021年9月のバ美肉事件以降依存していた相手から関係を解消され、活動的にも心理的にも自分の足で立つことになった日だ。

 私には法定パートナーがいる。法定パートナーは、蘭茶みすみが2018年に活動していた時のファンだ。純粋に考え方が一致したので結婚という制度を使って一緒にいるだけで、互いに恋愛でも性交渉の対象でもない。しかし、既存の社会的には専業主婦と男性会社員。極めて保守的な家庭に見える。私は障がいが重く安定的な労働に向いていないので、このジェンダーロールはあまりにも重すぎる。

 そもそも蘭茶みすみが肉体廃止を志すきっかけとなったのも失恋だった。ジェンダーロールを破壊し、人間を個のレベルまでバラバラにする必要があるからだ。今のままでの肉体では好きな人のお嫁さんにはなれない。家族を支えながら孤独に生きることを強制されている。この社会的な呪縛から肉体のせいで逃れることができない。現在はメタバースが普及し始めているが、依然肉体には縛られ続けている。私はメタバースはまだまだ理想郷ではないと考えている。現実世界が追い付いて、初めてメタバースは真価を発揮するのだ。

 経済が何だ。生産性が何だ。社会的意義が何だ。カウンターとしてこうした言説は使うが、それは本心ではない。私は私が生きやすくするためにしか力を使わない。ついでに他の人間も何人か救われれば嬉しいなくらいにしか思っていない。やはり肉体を廃止するしかない。この世から性だの家族だの社会だの国家だの労働だの、人間を切り分けて支配する絶対的な概念の価値を実質的に消し去ってやる。承認される人間の存在と生命の入れ物を概念的に分離してやる。私というメンヘラ女がのびのびと生きられるように。人間として最低なメンヘラが生きやすい世界は、万人にとっても生きやすい。

 今後も蘭茶みすみという要塞国家のような存在は、核にあるメンヘラな女の子が生きやすくするために社会秩序をめちゃくちゃにして肉体を廃止していくだろう。来るべき安息の日を目指して。

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