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羊角の蛇神像 私の中学生日記

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すこし特殊な中学生時代の思い出
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#いじめ

羊角の蛇神像 私の中学生日記⑰

羊角の蛇神像 私の中学生日記⑰

死闘の果てに不吉な弾力を頭部に感じた。

両手を封じられた絶命絶命の私は、そのままの体勢でジャンプして、Wくんの顔面へ頭突きをしたのだった。

Wくんは膝をつき、自分の口から溢れ出る赤いものに触れて、次にその手を某然と見つめていた。
私もまた、ぼんやりとしていたと思う。
状況を理解し、その恐ろしさを咀嚼するのに時間がかかった。受け入れ難い事実を受け入れなければならない時、私たちの体感時間は速度を落

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羊角の蛇神像 私の中学生日記⑯

羊角の蛇神像 私の中学生日記⑯

アトラクション「Lくん、顔どないしたん!」

翌日、本館へ行くと、他の寮の子がでこぼこになった私の顔を見て驚きの声をあげた。事情をたずねてくれたり、いたわってくれる友だちもいた。
Aくんと同じ学校から来た2年生がふたりいて、彼らはすぐに状況を察したようだった。

私は脱力した笑い顔で曖昧な返事をするだけだった。

この頃の記憶を辿ると、遊園地のアトラクションのように非日常的ないざこざだけが思い出さ

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羊角の蛇神像 私の中学生日記⑮

羊角の蛇神像 私の中学生日記⑮

ぼくは窓ガラスを破る私たちの寮に、不穏な空気が立ち込めていた。

Aくんは私のことをひどく憎んでいるようだった。
私の一挙一動に感じる彼の苛立ちは、ヒリヒリとした重い空気として私に伝わるのだった。
厳しく詰め寄るようなこともあった。

寮には居室が3つあった。6畳か8畳ほどの和室の、1番手前が私の部屋だった。
奥の部屋ほど寮長先生たち家族の居住スペースは遠くなる。

先輩たちが奥の部屋に集まって、

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羊角の蛇神像 私の中学生日記⑭

羊角の蛇神像 私の中学生日記⑭

人の尿を浴びるAくんは、数日後に再び無断外出をして、寮はまた私ひとりになった。
程なくBくんという3年生が戻ってきた。

Bくんは、かわいい人だった。
いつも悪戯をしたり、冗談を言っては、周囲を和ませる優しい人だった。

鑑別所に入るような悪事に手を染めた彼らだったが、友人として関わっていると、皆それぞれに良い所があった。
外の世界では、私たちは全く別の属性の子どもたちだった。
盗んだバイクを改造

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羊角の蛇神像 私の中学生日記⑤

羊角の蛇神像 私の中学生日記⑤

空気の読めない私とは、具体的にどんな子どもだったのだろうか。
その辺りを詳しく思い出し、整理していきたい。

バトルフィールドの戦士たち 1このシリーズを書いて良かったと思うことがある。
それは、当時のことを文章化する中で、色々な気づきがあった点である。

私はずっと、私が学校に行けないことを「集団」や「群集心理」に耐えられない違和感を覚えたからだと考えていた。しかし、それは正しい分析ではなかった

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