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「史実」として受容されるフィクション(偽史)

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フィクション(偽史)があたかも「史実」のように受け入れられている事象を扱った記事のまとめ
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「藤井聡太に熱狂する将棋ファン」の史実との違い。より感動できる将棋界のストーリーとは

「藤井聡太に熱狂する将棋ファン」の史実との違い。より感動できる将棋界のストーリーとは

最近ある1つのnoteが話題となりました。

上記のnoteには将棋ファン以外の方々にもわかりやすく感動を伝えるために、藤井二冠の立ち位置を際立たせ、ストーリー性を高めるための脚色が数多く施されています。
いわば映画や大河ドラマのような、事実を元にしたフィクションのようなものです。
多くの人に将棋の魅力を伝えた記事でしたが、一方で過度な藤井神格化に違和感を覚える声もありました。
今回の記事では元記

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俗情と結託した偽史 魚豊『チ。』 宗教的情熱で「真理」に至った科学者達

アニメ化が決定し第26回手塚治虫文化賞大賞なども受賞している『チ。-地球の運動について』は既に超長文の批判記事がある。

参考文献に明示されてない本も交えて要約&補足すると、
・ プトレマイオスが大成した天動説は当時の最高の観測結果に基づいたものであり、地動説はそれに対して「惑星の逆行を自然に説明できる」ことしか勝っている点が無かったから否定されたに過ぎない

・コペルニクスが地動説を唱えた時点で

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【ネタバレ】ななせ悠『続く道 花の跡』は「名も無き人々に紡がれた歴史」ではなく「歴史を紡ぎながら忘却された人々」を描いた作品である

【ネタバレ】ななせ悠『続く道 花の跡』は「名も無き人々に紡がれた歴史」ではなく「歴史を紡ぎながら忘却された人々」を描いた作品である

既にITmedia NEWSなどでも解説されているように、これは日本初のコンピュータ「FUJIC」の史実に基づいた作品である。
ラスト2ページはこのように締めくくられる。

「新しい技術によって無くなった職業(計算手)はもう誰も知らない」と語られる。

そして「そこにいた誰かのこと」も忘れられると語られるが、ここには論理的飛躍がある。何故なら新技術によって職業が無くなることとそれに携わってた人が忘

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