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ぼく

 はじめましての方もそうではない方もこんにちは。アイトピア通りで”きゅう“という障害福祉施設の所長をしています、北村誠悟と申します。

 先日、何気なく見たNHKのEテレの番組が谷川俊太郎の作品「ぼく」の特集でした。"子どもの自死”という目を背けたくなるようなことをテーマに書かれたこの作品を絵本にして世に出すまでのドキュメンタリーです。

 東日本大震災をきっかけに”死“をテーマにした絵本シリーズを手がけるようになった編集者が、谷川俊太郎に作品を依頼。出来上がった作品に新進気鋭のイラストレーターが挿絵を入れていきます。

 コロナ禍の中、制作は進みます。谷川俊太郎が作品の中で描いた「ぼく」は何気ない日常を幸せに過ごしています。家族にも友人にも恵まれ、何一つ不幸はありません。でも、自分で死ぬのです。その理由は誰もわかりません。

 「ぼく」が生きてきた日常をイラストが表現していくことで、「ぼく」の日常がかけがえのない愛おしいものだったことがはっきりとしていきます。ぼんやりとした輪郭でどこか遠くに感じる「ぼく」が身近に感じられるようになっていきます。しかし、最後まで「ぼく」は”なぜ“自分で死んだのかは明確にはなりません。

 ドキュメンタリーの中で、谷川俊太郎は、今の世の中が意味や答えを求めすぎているのではないか、といったことを話しています。"子どもの自死”も、その理由の半分以上はわからず、周囲の人間や環境の影響かどうかも不明確だそうです。

 ”わからないこと”は世の中にたくさんあります。むしろ、わかることの方が少ないようにも感じます。しかし、そのぼんやりとしたものに向き合い続けることが大切なのではと感じました。

2022.3
きゅう所長の雑記 おれのがヤバイ

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