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仄暗い雨の朝。コーヒーと黄金糖

朝から雨が降っている。
休日の雨は大好きだ。
目を覚ますと少しうす暗い。遠くでサアサアというかすかな音がする。
いつもより空気中に水分が多いせいか、ちょっとだけ重たい。
空気も、自分の身体も。

時計を見ると9時20分。
また鼻風邪をひいた息子が隣でぽかんと口を開け、僅かに苦しそうな呼吸音で眠っている。
ごめんね、喉乾いたね。
息子を起こし、急いで麦茶を飲ませると、息子は半分寝たままストローを口に含む。目を閉じたまま。
匂いだけで食べ物のありかを探る小動物みたいだ。

遅く起きた朝、ほの暗い空と雨音。
朝寝坊をそっと見逃してくれるような優しさが雨の朝にはある。
お気に入りのマグカップにドリップコーヒーを注ぐと、いつもよりコーヒーの香りが濃くたゆっていく気がした。

息子は一人、ソファーの上で子猫のように、静かに体を丸めたり伸ばしたり。眠そうな息子の様子をぼんやりと目の端でとらえながらコーヒーを口に含む。

静かな雨の日、コーヒー。

先日母から届いた小包の中に昔懐かしい黄金糖が入っていたことを思い出す。あの綺麗な黄金色の宝石みたいなキャンディー。
雨の日に飲むコーヒーはいつもよりわずかに苦く感じ、久しぶりに食べた黄金糖は思い出よりもわずかに甘く感じた。

カラカラと口の中で甘い黄金糖を転がす。
雨の日に黄金糖はよく似合う。

コーヒーの合間に、風邪を引いた息子の鼻水を柔らかい保湿ティッシュで拭ってあげる。
ティッシュを綿棒のように細く丸めて顔の前に近づけると、息子はすっと自分の鼻を私に差し出す。
拭ってもらえると鼻の不快感が軽減することを彼は既に知っている。

午後息子の世話を夫と交代して、雨音を聞きながらソファーでうたた寝をした。
ふっと目を覚ますと、朝と全く変わらぬうす暗い空と静かな雨の音にしっとり冷たい空気。時が止まっていたのではないかと思わず錯覚してしまいそうになる。
朝寝坊も午睡も、全ての怠惰も。
ほの暗いベールで丸ごと包んで見逃してもらえる、そんな赦しを感じる雨の休日が好きだ。


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基本的に休日の雨って、神様か何かからの人類に対する休めっていうメッセージだと思ってるんだけど…違うかな?

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