二十四節気の養生法【2024 寒露】
今日、10/8から「寒露」です。暦便覧には「陰寒の気に合って、露むすび凝らんとすれば也」とあり、本来ならいよいよ冷たい露が結び、菊の花が咲き始め、北からは雁が冬を過ごすために飛来し、山の木々が紅葉の準備をし始める時候になるのですが…今年はどうなんでしょうね?
朝夕はめっきり涼しくなってきましたね。でも日中は30℃近くになるところもありますが、今日は昨日に比べてかなり気温も下がり涼しくなるようです。お天気が急変したり寒暖差が大きくなりますので、お出かけの際などは上着や傘などを用意するなど気をつけてお過ごしください。
自然界の気は陽から陰、熱から寒に変わり、ますます陽気が潜み陰気が旺盛になります。私たち人間も天人合一の観点から陽気を大切に保養し、むやみに漏らさないように心掛け、陰精を養うことがこれからの厳しい冬を健やかに過ごす秘訣になります。
スポーツの秋になり全国各地で学校や地域の運動会が開催されたり、文化の日で文化祭や学園祭など楽しい催しがあったり、秋の収穫を感謝して五穀豊穣の秋祭りなどイベントも多くなってきますね。普段、運動しないお父さんが張り切り過ぎてケガをしたり、飲み過ぎて体調を壊さないよう気をつけて愉しみましょう。
運動会などはコンクリートの床や板間などに長時間座って観戦することも多く、お尻から寒邪が侵入して坐骨神経痛になったりしやすいです。簡易座布団やタオルやまたお天気によってはパーカーなどの上着なども用意したほうが良いですね。
今月の癒しの庭園 建仁寺「西来院庭園」
今回は、建仁寺塔頭「西来院」をご案内します。
ただいま2028年に750年遠忌を迎える西来院開山蘭渓道隆禅師の遠忌事業として、本堂改修工事、本堂前枯山水庭園の作庭、玄関前庭園の作庭、水盤を配した中庭の作庭、二曲一双の屏風絵、本堂天井画が完成し、今年の12月31日まで特別公開されています。
建仁寺は以前【2023 立夏】ご紹介しましたが、その中にある塔頭の「西来院」をご案内します。西来院は、日本に禅宗を広めるために鎌倉時代の中期に南宋から渡来した僧で建仁寺11世の「蘭溪道隆(らんけいどうりゅう)の寺」として室町時代の応永年間に創建されたお寺だそうです。
花街で有名な祇園花見小路の突き当りにある建仁寺の北門を入ってすぐ左手にあるなだらかな石段を登ったところに西来院の山門があります。
山門をくぐって石畳の通路を進むと、一面の苔庭に景石が配された「九華青蓮」(きゅうかしょうれん)と名付けられた玄関前庭庭園があります。
ここには蘭の花がたくさん植えられていて「蘭の寺 西来院」とも呼ばれるそうです。境内には1000株を超える蘭が植えられており、今は季節外れですが蘭の花が咲く頃には満開になりとても綺麗でしょうね。
その頃にまた訪れたいものです。
石畳の左手に玄関入り口があり受付をして室内に入ります。禅寺らしくだるまさんの衝立がお出迎え。そして緋毛氈が敷かれた上に一人用の豪華なソファが置かれてあり、ここに座ってゆっくりと玄関前の苔庭庭園「九華青蓮」を眺められます。じつは山門を入るとすぐにハンドドリップコーヒーで有名な「ブルーボトルコーヒー」のキッチンカーがあり、ここでコーヒーを買って持って入って美味しい珈琲をいただきながら庭園を観賞することが出来ます。しかもコーヒーを買うと拝観料が100円OFFなんですよ!
なんともうれしいサービスです。
ソファーの横の小さな階段をあがるとそこにも緋毛氈が敷いてあり、こちらに腰かけてコーヒーを飲みながらお庭や床の間の掛け軸などを観賞できます。禅寺やお茶席の掛け軸などでよく見かける「喫茶去」とは、唐代の禅僧、趙州従諗(じょうしゅうじゅうしん)の言葉で、現代では「肩ひじ張らず、まぁゆっくりお茶でも飲んでおいきなさい」という意味だそうです。
ひとしきりソファーに座ったり、緋毛氈の上に座って苔庭を眺めたあと、その奥にある本堂にすすみます。
本堂からは見事な額縁庭園が眺められます。
縁側には等間隔にお座布団が用意されてあり、ここに座ってゆっくりお庭が眺められます。
本堂の前庭は「峨眉乗雲」(がびじょうううん)と名付けられ、白砂で描かれた砂紋に苔山と蘭渓道隆禅師が修行された、中国峨眉山の巨石が配され見事な枯山水庭園が描き出されています。
ここでも縁側に腰かけてゆっくり吹いてくる秋風にまだ青々とした椛が揺られているのを眺めたり、前の木から聞こえる鳥の囀り声に本当に心(こころ)が癒されリラックスできます。
正面の椛が紅葉すると、また雰囲気が変わりとても見ごたえがある景色になるでしょうね。
「甘露門」側から立て向きに眺めた「峨眉乗雲」庭園。たくさんお座布団が用意されており、時々外国からの観光客や一人旅の人が来られて縁側に腰かけてお庭を眺めておられます。でも本山の建仁寺に比べると観光客も少なくゆっくりお庭を愉しめます。
本堂の南側に広がる「峨眉乗雲」と東側の庭園を両方を額縁庭園として眺めることが出来ます。贅沢ですねぇ。
まだまだ木々は緑を保っていますが、少しずつ秋の気配が漂って来ています。
東側のお庭も、苔庭の間を本物の水が流れるように白砂で砂紋が描かれ風情が醸し出されています。こちらの縁側にも腰かけてゆっくりお庭が眺められます。鳥の鳴き声だけが響き、とても贅沢なひとときです。
「峨眉乗雲」の縁側の上に掲げられた西来院の額縁。蘭渓道隆禅師の掛け軸。
こちらのお寺は、すべて撮影が許されていて、なんと天井に描かれた白龍図も本堂の畳の上に寝転がって観ることもOKなんですよ。
聖護院の蓮の襖絵でもご紹介した壁画絵師の木村英輝氏制作の「登竜門」と名付けられた屏風絵。
本堂の天井全面に描かれた「白龍図」は、中国のビジュアルアーティスト陳漫(Chen Man)氏により制作され、奉納されたそうです。
写真ではわかりにくいですが、手前と奥に二匹の龍が描かれているんです。畳の上に寝転がって観上げると、妙心寺などの本堂の天井に描かれた龍とは違って、すぐ目の前に間近に迫って来てとても見ごたえがあります。
本堂を囲んだ中庭があり、丸い水盤と四角い石造りの井戸が配され竹の緑が美しいコントラストを描いています。この縁側でも座ってゆっくり楽しめます。
午前10時開門ですが、開門と同時に伺って、かなり長い時間滞在し、ゆっくり愉しませていただきました。苔や竹、椛の緑と白砂のコントラストが目を癒し、小鳥のさえずりが耳を癒し、心地良い秋風が頬を癒してくれます。
本堂前の「峨眉乗雲」庭園の中央にある椿に大きな実がなっています。右は玄関前庭園の「九華青蓮」の苔に生えた小さな松。小さい松ですが見事な枝ぶりというか松の葉が密生していて力強い息吹が感じられます。何百年後かには立派な松に育っているのでしょうか。
玄関前の苔庭庭園「九華青蓮」の石畳の奥に「甘露門」があり、門の中に本堂前の枯山水庭園「峨眉乗雲」が覗き見えます。
玄関は写真を撮っている場所の左手です。
今年12月31日までの特別公開なので、京都にお越しの際にはぜひお立ち寄りください。
建仁寺塔頭 西来院
寒露の養生法
昔から「つるべ落とし」と言われるように、この頃から日の暮れが早くなり、空気は少しずつ冷たくなってきて、風が吹くと落ち葉が舞うようになり気分的にも物寂しさを感じるようになってきます。情緒が不安定になり感傷的になりやすいので、気持ちをポジティブに良い心理状態を保つように意識して、憂鬱や不安になる気持ちを発散させ、楽観的で明るい気持ちを育むことは昔からこの季節の養生法として大切にされてきました。
遠くで一人暮らしをしている家族や友人などがいる場合は、お互いに意を配り、忙しいからと放ったらかしにせず、今の時代ならたやすく電話やメールが出来るので小まめに連絡を取り合ったり、ちょっと落ち込んでるみたいかなと感じた時などは時間を作って食事を共にしたりして気を紛らせることが大切です。
秋は落ち込みやすい季節
秋は物悲しく落ち込みやすい季節とされますが、なぜそうなのでしょうか?そして、どうすれば防ぐことが出来るのか中医学的な考え方を見てみましょう。
中医学では、秋の五志は「悲・憂」とされ、秋は「悲しみの季節」とも言われ、気分が不安定になり気分が落ち込みやすくなると考えます。
愁い(うれい)という漢字は秋の下に心という字を書きますが、『物さびしさを感じて心がしずむ。思いなやむ。悲しむ。うれえる。』というような意味があります。秋の心(こころ)というのは、昔からこのような感じだったのでしょうかね。
なぜ秋は気分が落ち込みやすくなるのでしょうか?
中医学では、秋は「収斂」(しゅうれん)と言い、自然界では万物が内側に収束していく時期と考えます。陽気が旺盛な春や夏には外向きに発散や拡散していた気が、夏至を境に陽気が潜み陰気が旺盛になり、秋になるとますます自然界の気は内向きに収斂します。
本来は、この収斂の気に合わせて、私たちもいつまでも夏と同じように気を発散させていないで、厳しい冬を乗り越えるために大切な気を体内の奥深くに潜ませ、大切な気を漏らさないように心掛けることが大切です。
しかし、この収斂作用による内向きの気が過剰になり過ぎると、憂鬱感や孤独感を強く感じたり、気分が落ち込みやすくなるのです。
また五行論では宇宙の構成要素を木・火・土・金・水の5つのエレメンツ(要素)に分類されますが、「従革」という気質や特性を持つ「金」のグループに、秋、収、燥、悲・憂なども同じ気質を持つものとして配されます。
秋は空気が冷たく乾燥する季節であり、秋の五気「燥」が邪気に変わって「燥邪」になったり、また「秋は急」と言われ天候が急変しやすく変化が激しいので、昼夜の寒暖差も大きくなってきますが、肺はこの変化に敏感で衛気が不足して免疫力が低下していると燥邪や寒邪が体内に侵入しやすくなります。これらの邪気が侵入すると気虚や気滞になり、肺の「気を主る」働きが低下し、五志の「悲・憂」が多くなり悲しみや寂しさ、憂鬱感が生じやすくなります。
また、季節の変化に伴って、脾の働きが低下すると、クヨクヨと思い悩んだり物事を考え過ぎたりして消化不良や食欲不振などを招き、感情にも悪影響を与えます。
西洋医学の視点では、ハッピーホルモンと言われるセロトニンというホルモンが、気分の安定や幸福感をもたらしてくれると考えられていますが、そのセロトニンが減少することで気分が不安定になり落ち込みやすくなると考えられます。セロトニンは、日中に太陽の光を浴び、光が目の網膜に到達すると太陽光に反応して、視床下部のセロトニンニューロンが活性化され、セロトニンが分泌されますが、秋になって日の出が遅く日の入りが早くなると日照時間が短くなってくると、これに伴って脳がセロトニンを十分に生成できなくなるため、気分の落ち込みや憂鬱感を感じやすくなるのです。
また、ビタミンDはセロトニン生成に影響していますが、日光が不足するとビタミンDの生成が低下し、これも気分の落ち込みや憂欝感を感じる可能性があると考えられています。
このように秋の季節の変化によってセロトニンが減少すると、気分が沈みやすくなり、「冬季うつ」と言われる季節性の気分障害(SAD: Seasonal Affective Disorder)など、秋や冬に特に憂鬱感が強まる状態があることがあります。
さらに、秋は多くの人にとって、夏の活動的な時期から冬の準備を始める時期になります。活発だったイベントなどの社会活動が減り、一人で過ごす時間が増えるため、孤独感や憂鬱感が強く感じられるようになったり、秋は過去の出来事や、懐かしいものに思いを馳せることが多くなりやすく、感傷的な気持ちが強くなることもあると言われます。
これらのことが組み合わさって、秋には気分の落ち込みやすさが問題になります。
気分の落ち込みはどんな証?
2300年前に編纂された最古の医学書、『黄帝内経・素問、陰陽応象大論』に「悲傷肺」とあり、「悲」という感情が肺を傷つけることがすでに示されています。逆に肺が弱ると、悲しみの感情が強まりやすくなり、これが秋に気分が落ち込みやすくなる原因として昔から認識されてきました。また、同じく『黄帝内経・素問、四気調神大論』にも「秋三月,此謂容平。天地以急,地気以明。早臥早起,與鶏俱興,使志安寧,以緩秋刑,收斂神気,使秋気平。無外其志,使肺気清,此秋気之應,養収之道也。逆之則傷肺,冬為飱泄,奉藏者少。」(秋の3ヶ月、これを容平という。天地の気は急なり、地の気は澄み渡る。早寝早起きをして、鶏と共に起きる。精神を安定させ、秋の冷たさを和らげ、精神と気を収斂し、肺気を清らかに保つことが大切だ。これが秋の気に応じた養生の道だ。従わないと肺を傷つけ、冬に下痢しやすくなり、正気の貯蔵が少なくなる。)とあり、肺を清らかに保つことが、情緒の安定に繋がると説明されています。また『黄帝内経・霊枢』には「肺者,主気,悲哀憂愁則傷肺」とあり、悲しみや憂いが肺に直接的な影響を与えることが述べられており、気分の落ち込みが肺と密接に関わっていると認識されています。さらに、明代の中医師 陳実功によって編纂された医学書『蘭室秘蔵』にも「肺主気,悲哀則肺損,故当防其志,使志安寧。」(肺は気を主り、悲しみは肺を損なう。ゆえに、これを防ぐには情志を安定させ、精神を落ち着かせることが大切である。)と書かれています。
これらの記述から長い中医学の歴史では、肺を潤し、感情を安定させることが、秋の養生には特に重要視されてきたことがわかります。気分の落ち込みを防ぐためには、肺を滋養し、精神を安定させることが不可欠だとされています。
秋の気分の落ち込みは、中医学ではどのような「証」(体質)と考えるのでしょうか
1.肺気虚(はいききょ)
肺は、五志の「悲・憂」という感情に関係し、特に空気の乾燥や夏の暑さや疲れなどにより体力が消耗すると肺気虚になることがあります。
肺気が不足すると、五志に影響し、抑鬱感や憂鬱感が強まり、気分が落ち込む、息切れや疲労感、咳が出る、呼吸が浅いなど呼吸器系の症候が現れ、寂しさを感じやすくなり、気力が湧かないのが特徴です。
2.心気虚(しんききょ)
心(しん)は「神志を主る」働きを担っていますが、過度のストレスや精神負担、過労などが重なると、心気が不足し、神志を主れなくなり、精神的に不安定になり、気分が晴れない状態が続き、憂鬱や不安感、気分の落ち込みや不眠、寝つきにくい、夢をよく見るなどの症状が現れます。
3.肝鬱気滞(かんうつきたい)
ストレスやイライラ、怒りといった感情を抱え続けると、肝気の流れが滞り、気分が詰まったように感じるようになり、胸の張りや肋間の脹痛、食欲不振、頭痛、女性の場合は月経不順も見られることがあり、気分の落ち込みやイライラしたり、ますます怒りっぽくなったりします。
4.脾気虚(ひききょ)
脾は、五志の「思」という感情と関係し、長期間、物事を考えすぎたり、クヨクヨ思い悩んだり、またこだわりが強いなどの情志や食事の不摂生によって脾の働きが弱まると、気分が塞ぎ、倦怠感や食欲不振、消化不良、下痢など消化器系の症状が見られ、憂鬱な気分が続くことが特徴です。
5.腎陽虚(じんようきょ)
腎は、腎精という生命エネルギーを蓄える臓であり、腎陽が不足すると、体全体のエネルギーが低下し、気分が落ち込み、寒がり、手足の冷え、腰や膝の痛み、性欲の低下などが現れます。
総合的な考え方
気持ちの落ち込みや情緒の不安定は、一つの臓腑の問題だけでなく、五臓の不調が影響し合って起こることが多いです。 特に肺・心・肝のバランスが崩れることで、感情のコントロールが出来にくくなり、気分が落ち込みやすくなります。中医学では、気・血を補い、流れを調えて、五臓のバランスを調えることで、これらの症状を改善することを目指します。
気分の落ち込みと同時に呼吸器系の症状があれば肺気虚証、動悸や不眠などがあれば心気虚証、イライラしたり自律神経の失調などがあれば肝鬱気滞証、消化器系の症状があれば脾気虚証、冷えや腰膝、泌尿生殖器系の症状があれば腎陽虚証が考えられます。この状態を放置して長期間継続すると、状態はさらに悪化し鬱証などの精神疾患に繋がりますので、早めに対処することが大切です。
秋の気分の落ち込みを防ぐための養生法
秋は、空気が冷やされ乾燥が強まる気候的な特徴があり、肺が乾燥しやすくなります。肺は、「喜潤悪燥」と言い、潤っていると調子が良く乾燥してくると体調が悪化しやすい臓です。五行論からも秋、肺、悲・憂と関連性が強いので肺を潤し健やかに保つことで、気分の落ち込みを予防できます。
肺を潤す食材を多めに摂りカラダの内側から乾燥を防ぎます。激辛の食べ過ぎやお酒の飲み過ぎはカラダを乾燥させるのでほどほどにしましょう。
また、秋が深まり寒さが増してくると、カラダを温めるスープやお茶を摂ることも効果的です。
出来るだけ気分がポジティブになるように意識し、感情をムリに抑え込まず、気のおける友人や家族と話したり、一人で過ごす時も推し活やお笑い、楽しい気分になるドラマや映画などを見たり、楽しい音楽やアロマやお香などでリラックスできる時間を持つことが大切です。特に、悲しみを抱え込まず、自然に発散させるように工夫することが重要です。
ヨガや気功などで呼吸法を取り入れ、秋は深い呼吸を心がけることが推奨されます。深い呼吸は、肺の働きを補い呼吸を助けて外から清気を取り入れ、気の巡りを調え、気分の落ち込みやストレスを緩和するのに役立ちます。腹式呼吸は、お腹を膨らませながら鼻からゆっくりと深く息を吸い、しばらく息を止めて、そのあと口をすぼめてゆっくりと口から息を吐き同時にお腹をへこませてゆきます。両手を重ねておへその下の丹田に置き、息を吸いながら丹田に「気」を送り込むイメージで行うとより効果的です。呼吸法を実践することで、心身のリラックス効果が高まります。呼吸が調うと、肺の働きが良くなって来て、関連する気分の落ち込みも解消し気持ちも落ち着きます。呼吸法は型ややり方にこだわる必要はありません。自分が心地良いと感じるやりやすい方法で深い呼吸をするだけでも十分効果があります。
寒くなってきて冷えを感じるようなら、冷えから守り温を補う温補腎陽が必要です。お風呂にゆっくり浸かることで、全身を温めることで、リラックス効果が高まります。足湯や足つぼマッサージをすると、全身が温まり気の巡りが良くなり、心も落ち着きます。
秋の気分の落ち込みを防ぐためには、肺を潤し、適度な運動や呼吸法、日光を浴びること、温かいケア、質の良い睡眠、アロマセラピーなど、心身全体のバランスを保つことが重要です。意識して積極的にこれらを日常生活の中に取り入れることで、秋の気分の変動を和らげ、心身の健康を維持することができます。
落ち込みを予防する薬膳
滋陰潤肺、養陰生津の食べ物を摂り、肺の働きを健やかにすることで気分の落ち込みを改善します。またハッピーホルモンと言われるセロトニンの生成を扶け、養血の食べ物で血を補ったり、肝腎を補って気の巡りを調え、体を温めることで気分の落ち込みを改善します。
滋陰潤肺、養陰生津してくれる食べ物
誰かが「ゴホン」といえば梨と言われるほど梨は家庭の常備果実、その他小松菜、アスパラガス、ハチミツ、レンコン、ぎんなん、やま芋、サツマイモ、黒ごま、オリーブ、びわの葉、柿、柿の葉、アロエなどがおすすめ。
薬膳食材では白きくらげ、ナツメ、クコの実、百合根、松の実、杏仁(アーモンド)などがおすすめです。
セロトニン生成を助ける食材
セロトニンは「幸せホルモン」として知られ、気分の安定にとても大切です。セロトニンの生成には、トリプトファンやビタミンB6などが必要です。バナナ、牛乳、ヨーグルト、チーズ、卵、ナッツ類はトリプトファンやビタミンB6を多く含み、セロトニンの生成をサポートしてくれます。
セロトニン生成にも必要なビタミンDは、サーモンや卵黄などに多く含まれます。
血を補い、気を巡らせる食材
血は、中医学では精神意識活動の基礎物質としてとても精神状態にとても関係していると考えます。血を補うことで、意識が明瞭になり精神活動も充実し、気分の落ち込みを改善できます。
養血の食べ物はにんじん、ほうれん草、落花生、ぶどう、ライチ、レバー、イカ、タコなどがおすすめです。
薬膳食材の金針菜はほうれん草の20倍の鉄分を含むと言われ、竜眼は心血を補う食べ物として昔から食べられてきました。
腎を補い温陽補腎する食べ物
黒きくらげ、黒豆、黒ゴマなど黒い食材やクルミ、牡蠣、エビ、やま芋、羊肉、などは腎を補い、なつめは脾を健やかにして気血の生成を扶け、枸杞の実は肝腎を補い、疲労感や気分を安定させ落ち込みを改善します。
10/11(旧暦9/9)は旧重陽節です。10/13が七十二候の「菊花開」で菊の節句になります。台湾や中国など中華圏では古来とても重要な祝日です。
九は陽で最も大きな数字でおめでたいとされる一方、それが重なる九月九日は陽気が強すぎるとされ邪気を祓う日とされました。菊は邪気を払う力をもつ霊草と信じられており、ちょうどこの頃に見頃を迎えるので重陽節に菊花を観賞したり、菊の形に作った月餅を食べたり菊の花を漬け込んだ酒を飲んで、無病息災や不老長寿を願ってきました。
重陽節は、古くからさまざまな伝説があります。
後漢の頃、汝河の両岸で伝染病が流行り多くの犠牲者が出て、汝河には疫病神が棲んでおり毎年伝染病を巻き散らすと言い伝えられ、ある男が仙人に疫病神を退治する方法を教え請いました。その年の9月9日に疫病神が現れると聞き、仙人に教えられた通り村人を山に避難させ伝染病にかからないため茱萸(グミ)の葉を配って菊花酒を飲ませ、自分一人で退治に出かけました。疫病神は菊酒とグミの香りにが鼻をつき、やがて男に剣を突き刺され打ち取られ、それ以降伝染病は起こらなくなったという言い伝えがあるそうです。そのため「グミ節」とも言われるそうです。
また、800歳まで生きたとされる仙人彭祖(ほうそ)も菊を薬として常用していた話や菊花が咲き乱れる谷川沿いの小さな村の人々は菊花の雫が零れ落ちた谷川の水を常飲しており、その生気を得て100歳を超える健康長者ばかりだったなど、菊は百草の女王・神仙界のシンボルとされ、そのエキスを飲めば長寿不老の効能がある、と信じられてきたり、など重陽節や菊花にまつわる伝説がたくさんあります。
そして10/17は満月、今年最も地球に近い満月で「スーパームーン」と呼ばれる大きなお月さまが見れるそうです。英語では鹿などの狩猟が始まる頃になり「ハンターズムーン(Hunter's Moon/狩猟月)」と呼ばれます。
そして、そして10/20日からは、もう秋土用に入ります。その18日後にはなんともう立冬!?日中は30℃近くあるのにもう冬だとは考えられませんよね。土用になりますので「脾」の養生もお忘れなく。
京都伝統中医学研究所の"寒露”におすすめの薬膳茶&薬膳食材"
少しずつ秋が深まってきています。日中はまだまだ暑いですが、朝晩はグッと気温も下がり、寒く感じるぐらいになってきました。これからは寒暖差が大きくなるので、小まめな温度調整が必要です。自分の今の体質に合った食材を選び、寒熱虚実のバランスを調えましょう。養生の基本は肺の乾燥を防ぎ、健やかにする滋陰潤肺と養陰生津です。前回お話しした衛気を補い免疫力を高めて、厳しい冬に備えるカラダづくりをしていくことが大切です。
1.「滋陰潤肺」肺の乾燥を防ぎ陰を補うための薬膳茶&食材
秋におすすめの食材は、肺を潤いを与え、呼吸器の働きを健やかにする食べ物です。また、秋は「収斂」の季節でもあり体内の気を収める食材が推奨されます。夏の疲れを癒し、厳しい冬を乗り越える心身をつくることが秋の養生法になります。
オススメの薬膳茶&薬膳食材は、
薬膳茶では、カラダ潤し茶、増血美肌茶、五望茶、野ばらとなつめの美顔茶、なつめ薬膳茶、なつめ竜眼茶など、
薬膳食材では、白きくらげ、百合、蓮の実、新彊なつめ、枸杞の実、桑の実、はと麦、黒きくらげ、金針菜、竜眼、紅花などがオススメ。
薬膳スィーツ
白キクラゲのスィーツセット、白キクラゲのスィーツセットに梨やリンゴなどを加えるとさらに滋陰潤肺効果がアップします。子どもも大好きな手作りスィーツです。
全部食べる薬膳茶 桑の実茶も陰を補い滋陰補血、生津、補肺止咳、滋養肝腎の効果があります。
2.入浴時におすすめ漢方入浴剤
寒湿タイプにオススメ
日ごとに寒くなりカラダが冷えるようになってきます。気分の落ち込みを防ぐためにも、カラダをしっかり温めることが大切です。
ヨモギがたっぷり入った「ポカポカあたため乃湯」もカラダが温まりココロの緊張もほぐれ気の巡りを促進し、気分の落ち込みを防いでくれます。
ヨモギは漢方で艾葉(ガイヨウ)と言い、古来から擦り傷や切り傷など出血時に止血薬などとして使われたり、浄血や造血、デトックス作用(むく みの改善)、冷え性改善、美容効果があり、最近では「よもぎ蒸し」なども流行っていますね。
薬膳茶や薬膳食材などの商品は各ショップでお買い求めいただけます。
薬膳茶&薬膳食材専門店 京都 楽楽堂 本店公式サイト
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次回は、10月23日「霜降」ですね。まだまだ霜が降りる頃とは思えませんが、朝晩の寒暖差には十分注意してお過ごしください!
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