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二十四節気の養生法【2024 立春】

 2/4~2/18までが「立春」です。いよいよ春の訪れですね。
暦便覧には「春の気たつを以て也 」とあります。
二十四節気では、「立春」は一年の始まりと考えます。「」は始まりという意味で、閉蔵といって万物が閉ざされていた冬から、万物が生まれる春の始まりを示しています。始まったとこなのですぐに万物が生まれるわけではありませんが、まだ凍った土の下では小さな芽が今か今かと生温かい春風が吹くのを待っています。少しづつ昼間が長くなり、太陽も暖かくなり、気温や日照、降雨量が増えることを感じられるようになります。
 テレビで「暦の上では今日から春」などと言い、「こんなに寒いのに春と言われても実感がわかないな」と愚痴りたくなりますが、天地を覆い万物を支配する「気」は、冬の「寒」から春に「風」に変わっています。 

 昨日は節分で、豆まきをして鬼を追い払い、恵方を向いて恵方巻を黙って一本丸かぶりした方も多いでしょうか? 恵方巻なんて知らないよとおっしゃる方もいらっしゃるかもしれませんが、恵方巻はともかくとして、立春は二十四節気では一年の始まりと考えます。運気学(気学)でも立春を一年の始まりの日と考えるので、お正月に初詣に行きそびれたという方は、本日以降に恵方(ご自宅から向かって東北東)にあるお寺でも神社でも教会でもモスクでも…ご自分のパワースポットに出かけて良い気をいっぱい補充して今年一年の無病息災を祈念してください。
 禅寺では立春の日に玄関に「立春大吉」と書いて玄関や門に貼る習慣があります。四文字とも左右対称なので、表からみても裏から見ても同じように見え、入ってきた鬼が勘違いして出ていくという厄除けの意味があるそうです。

立春大吉

今月の癒しの庭園 「重森三玲庭園美術館」

重森三玲庭園美術館

 今月のお庭は、昭和を代表する庭園家重森三玲が晩年を過ごした邸宅で、購入後に自ら作庭や茶室を設けたりした居宅を現在庭園美術館として公開されている「重森三玲庭園美術館」をご案内します。
 京都大学の東側にある吉田山の山すそに広がる吉田神社の旧表参道に面して明治35年(1902年)に建てられた立派な長屋門を構えた邸宅が「重森三玲庭園美術館」です。現在、書院と庭園、茶室を事前予約制の美術館として一般公開されています。

重森三玲旧宅

 もとは吉田神社の名高い神官の邸宅であったものを、昭和18年(1943年)に重森三玲氏が譲り受け主屋を住居として、書院と茶室を客人をもてなす場として、後半生を過ごした自邸です。
 予約時間になると立派な長屋門が開き、中に入るとさらに小さな門があり、そこから中に入って受付をします。
現在、館長として美術館を管理されているのは三玲氏の孫であり美術家の重森三明氏で、庭や建物などの説明などもしてくださいます。

書院と庭園の入口

 主屋は非公開ですが、書院は公開されていて中に入ることも可能です。内部の撮影は禁止ですが、中から外のお庭を撮影することは許されており障子戸を額縁に見立てて写真を写すことが出来ます。
書院は寛政元年(1789年)築と伝わる江戸中期の建物で、15畳の間で背面側に大きな床の間と違い棚が備わります。また写真には写っていませんが、天井からぶら下がった提灯形をした照明は三玲氏と親交のあったイサム・ノグチ氏の作品だそうです。

重森三玲邸 無字庵庭園

 書院から望める南側のお庭は、神仙郷の「蓬莱」の世界をイメージした枯山水庭園。青碧の美しい阿波青石で三尊石組みを中心に景石が配され、粗目の白砂で表現された州浜模様は波が力強く縁側に打ち寄せてくるようです。

阿波青石の三尊石組み

 三尊石組みの手前にある平らで大きな石は、もとの庭園から残るもので、かつて吉田神社の神官や公家の来客者がこの上に立ち神社に向かって礼拝を行った礼拝石がそのまま活かされています。

鞍馬石の敷石を州浜をあしらい、砂紋で波を表現している

 石組と白砂と苔の緑のコントラストが美しく、また曲線で水の流れや波が表現された美しい庭園です。苔の手入れは非常に手間がかかるそうで、しっかり手入れしていないと3年ほどで枯れてしまうそうで、新しい芽が育つにはさらに3年ほどが必要なのだそうです。

緑と白のコントラストや曲線が美しい

 書院の縁側に沿って東側に回るとそこにも小さな祠があるお庭があります。その奥には三玲氏自身が設計したお茶室「好刻庵(こうこくあん)」が建ちます。さらに書院背面の室をお茶室「無字庵(むじあん)」に改修され、その間にも小さな坪庭「無字庵庭園」が配されています。

お茶室 好刻庵

 「好刻庵」と名付けられた茶室は、昭和44年(1969年)三玲氏が設計し新たに建てられたものだそうです。三玲氏の元にはさまざまな客人が訪れ、自らお茶をたてておもてなしされていました。
 有名な「東福寺」の「八相の庭」にも見られる市松模様は、ここでは青と銀を用いて大胆な波が描かれいます。
天井から吊り下げられた八角の照明も遊び心があって印象的です。

 好刻庵と無字庵の間にもこじんまりとした坪庭「無字庵庭園」があり、ここでも阿波青石で枯山水が表現されます。

無字庵庭園

 今回はお寺のお庭ではありませんが、昭和を代表する庭園家でさらに生け花や日本画、茶道なども研究された重森三玲氏のお庭をご案内しました。
昨日は近くの吉田神社で節分祭にもたくさんの市民や観光客がお詣りし、無病息災を願い邪鬼を追い払って諸人の不幸を除き、人々の幸福と平和な生活をお願いしました。
早く厳しい冬が去り、温かくて穏やかな春が来て欲しいですね。

吉田神社 節分祭

二十四節気の養生法【2024立春】

少しずつ春の気に合わせましょう

二十四節気って…?

 二十四節気では一年は立春からスタートすると考えます。
二十四節気については【2023立春】に詳しく記載していますので、興味のある方はそちらもご覧くださいね。
冬はなぜ寒くて、夏はなぜ暑いんだろう?などについてもわかりやすく解説しています。

二十四節気

春の養生法

 春三月…此謂発陳。天地倶生、万物以栄。夜臥早起、広歩於庭、被髮緩形、以使志生。生而勿殺、予而勿奪、賞而勿罰。此春気之応、養生之道也。逆之則傷肝、夏為寒変、奉長者少。
                   (黄帝内経素問・四気調神大論)
 春三月(立春から立夏の前日までの三ヶ月間)は、これを「発陳」という。天地のすべてのものが生まれ栄える。夜は寝て朝早く起きて、庭をゆったり歩く。髪や服はゆったりして、志(目標)に心を向ける。生まれても殺さず、与えても奪わず、罰せずに誉める。これが春の気に応じた養生の道である。これに逆らえば「肝」を傷め、陽気が沈んだままになって夏に冷えの病になる。…と2300年ほど前の前漢の時代に出来たとされる中国最古の医学書「黄帝内経 四気調神大論」に書かれています。

 春は「」の気がどんどん多くなり、冬眠していた万物は活動を開始し、新しい芽が出て命が生まれる季節です。春の主気は「」で、東から暖かい風が吹き山々を青く変えていきます。五行では「」に属し気質は「曲直」と言って曲がりくねりながらも、根は地中を縦横無尽に広がり栄養を吸収し、幹は天に向かい、枝葉は横に横に伸び広がる特徴があります。

春の五行色体表

春は気候変化が大きいのが特徴

 中医学では、「天人合一」「天人相応」という言葉があり、人体の生理機能の状態と季節の気候変化は密接に関係していると考えられています。
 春は2/4の立春~5/4の立夏の前日までの三ヶ月間ですが、早春と晩春では気温の変化や雨の量など気候の移り変わりが非常に大きいのが特徴です。
 日本は国土面積は小さいですが、北緯は最北の45度から最南の20度と非常に長いので全国平均というふうには出しにくいですが、私の住む京都市のデータで見ますと、2月~4月の平均気温や平均降水量、また1ヶ月間の日照時間なども他の3か月に比べるとその差が大きいのがわかりますね。
 それだけ変化が大きいので体調管理も難しく、どうしても体調を壊しやすい時期ですので、小まめな体温調整や雨具の用意など変化に対応できるように準備することが大切です。三寒四温のように日々の急激な変化に順応できず陰陽のバランスを乱し自律神経を失調する方も多くなります。
皆さまの地方の気象データを見てみて、気温や降水量の変化を把握しておくことも大切です。

春は気候変化が大きい

春は腠理(そうり)が緩む

 腠理とは?
皮膚表面のシワやスジなどでまた皮膚と筋肉の間を指すこともあり、外邪が体内へ侵入を防いだり、体内の余分な気・血・津液を体外に排泄して体温調節をしたりする役割を担っています。
 春になって気温が上がり温かくなってくると、引き締まっていた腠理と呼ばれる皮膚表面のシワやスジが緩み寒邪などの外邪が体内に侵入しやすくなります。
 中国では春捂秋凍(しゅんごしゅうとう)と言い、春になったからと言って早くから薄着をしたり、秋になったからと言って早くから厚着をするのは健康を害するとされます。孫思邈の著した唐代の代表的な医書『千金要方』には『春の服装は下は厚く上は薄く』をすすめ、また清代に書かれた高齢者の生活指針の古典『老老恒言』には「春の氷はまだ解けておらず、下半身はむしろ暖か過ぎるぐらいに保温し、上半身は着るものを少し減らすようにして陽の気を養うこと」とあります。
 まだまだ寒の戻りなど突然寒い日もあるので、早くから腠理を緩めて寒邪が入り込まないよう特に脚下や下半身はしっかり保温するように心掛けましょう。逆に初夏のように暖かい日もありますので、そんな時に厚着をしているとこれまた腠理が緩んで汗をかき、そのあと冷えて寒邪や風邪が侵入します。その日の気候や状況に応じて小まめに調節することが大切です。

まだまだ温補腎陽が大切

百病の長『風』

 春一番と聞くと私たち世代ではキャンディーズの唄を思い出しなんとなく爽やかな風というイメージですが、漁師さんにとっては船の転覆にもつながる恐ろしい突風のことだそうです。
気象庁によると立春から春分までの間で前日よりも気温が高くなった日に南寄りの最大風速7m/s以上の風が吹いたときを「春一番」と定義されています。
 春の気候の特徴は強風が吹くことで、秋の台風と同じように「風邪(ふうじゃ)」となって私たちのカラダや生活に悪影響を及ぼします。
空気が生温かくなって空から降ってくるものが氷から水に変わり、徐々に雨が多くなります。湿度が高くなったり急に冷え込んだりすると感冒(カゼ)にかかりやすくなり、関節痛や頭痛、昔の古傷や手術あとが痛くなったりしやすくなります。

春の養生テーマは養陽防風

 春の養生テーマは『養陽防風 』です。春はよく風が吹くので「風邪(ふうじゃ)」による病気が起こりやすくなります。
 風邪は百病の長と言い、また黄帝内経 素問 風論編には風邪による病気や症状は多種多様だと書かれています。
今回はこの風論篇を中心に風邪や風病を学びましょう。

中医学的「風(フウ)」について

 (フウ)は自然現象で六気の一つで、それ自体は正常な気候です。素問 陰陽応象大論には「自然界には四季五行の変化があり、この変化が万物の生・長・収・蔵を促し、風・寒・暑・湿・燥・火という気候を生む」と記されています。
春の主気は「風」で、春には陽気が生まれ、東からの柔らかく温かいが万物を暖め、すべてのものが生まれ育まれます。しかし風気が過ぎると風邪(ふうじゃ)と呼ばれる六淫(風邪・寒邪・暑邪・湿邪・燥邪・火邪)になりカラダや生活に悪影響を及ぼすのです。

風邪(ふうじゃ)の性質

 素問 玉機真臓論に「風邪(ふうじゃ)は、多くの疾患を引き起こす重要な発病因子であり、百病の長と呼ばれる。風寒邪気が人体に侵入すると体毛がまっすぐに立ち、腠理が閉じて発熱する」と記されています。
 気が流れると風が生まれ、気は形がないので陽に属し、故に風もまたに属します。そして流動性があり軽・揚(上がる)・走(動く)・散の性質があり、迅速に動きさまざまに変化する特徴があります。

 風邪(ふうじゃ)は陽位を襲い陽経を侵し、頭痛・めまい・しびれ、顔面浮腫・面癱(顔面神経痛)・目が痒く涙が出る・鼻が詰まってくしゃみが出る・咽喉が痒く咳が出る・風疹、首筋や背中の上部がゾクゾクするなど頭部や顔面部などカラダの上部や感覚器官の症状の多くは風邪の影響によると考えます。
 このように風邪(ふうじゃ)に侵されるとまずカラダの上部に影響を受け、悪寒・悪風・発汗・震えなど衛表失和の症状が現れるのです。

 また風邪(ふうじゃ)はアチコチに良く動く性質があり、症状が移動したり変化したりしやすい特徴があります。風邪(ふうじゃ)が寒邪や湿邪と結びつくと痹証(ひしょう)と呼ばれるしびれが起こり、それがアチコチに移動するのも特徴です。
 そしてまた、症状がさまざまに変化し、体が震えて止まらないとか、痙攣やこわばる、ツルなどは風邪によるものが多いです。

 風証は、風邪による症状で、カラダが揺れ動き、症状が早く変化したり、震え、痙攣などはすべて風邪による風証と考えられます。
 風病とは、風邪により臓腑の機能が失調することにより発症する症状で、震え、痙攣、ひきつけ、筋肉痙攣、筋肉が攣る、眩暈、などがありひどくなると混迷や半身不随などを引き起こします。
めまいやカラダが揺れるなどの症状は肝風内動と言い、この肝風が内動して風邪に中(あた)ることを中風と言います。現代の病名では脳卒中や脳血栓などの脳血管疾患で半身不随や片麻痺、言語障害、手足の痺れや麻痺などの後遺症が残りやすいので注意が必要です。

 中医学では、この外から来て身体に害を及ぼす六淫の風邪を外風と言い、一方、自分のカラダの中の陰陽失調、臓腑失調、気機異常などによって発生する風を内風と言います。
外風は動きが早くどこにでもすぐに行き、気血を損傷して経脈が流れなくなり痹証・中風・眩暈・頭痛などを引き起こしたり、口元や目元が歪んだり、湿疹や蕁麻疹などの痒みを引き起こします。

 もう一つの内風は、陽気の異常で、自分のカラダの中から発生し、肝陽が養えなくなって肝陽化風が起こると考えます。次回はこの内風について学びたいと思います。

風証

黄帝内経 素問 風論編

2300年ほど前の漢代に出来たと言われる黄帝内経には、すでに風邪や風病について詳しく書かれています。

黄帝問曰、風之傷人也、或為寒熱、或為熱中、或為寒中、或為癘風、或為偏枯、或為風也。其病各異、其名不同。或内至五蔵六府。不知其解。願聞其説。
黄帝が、
「風邪が人を傷つけると、悪寒発熱したり、熱中(熱症状)になったり、寒中(寒症状)になったり、癘風(ハンセン氏病)になったり、偏枯(半身不随)になるなど、さまざまな風病になり、病も異なり病名も同じでない。ひどくなると五臓六腑に至ることもあるがその理由がわからないので詳しく説明して欲しい。」と尋ねます。

岐伯対曰、風気蔵於皮膚之間、内不得通、外不得泄。風者善行而数変、腠理開則洒然寒、閉則熱而悶。其寒也則衰食飲、其熱也則消肌肉。故使人怢 慄而不能食。名曰寒熱。風気与陽明入胃、循脈而上、至目内眥。其人肥、則風気不得外泄。則為熱中而目黄。人痩、則外泄而寒。則為寒中而泣出。風気与太陽倶入、行諸脈兪、散於分肉之間、与衛気相干、其道不利。故使肌肉憤昔而有瘍。衛気有所凝而不行。故其肉有不仁也。癘者、有栄気熱胕、其気不清。故使其鼻柱壊而色敗、皮膚瘍潰。風寒客於脈而不去。名曰癘風。或名曰寒熱。
岐伯(黄帝の臣下の医師)が答えます。
「風邪は皮膚と肌肉の間に入り、体内にも通ぜず体外にも排泄されません。風邪は素早く動き、またさまざまに変化します。腠理が開いていればゾクゾクと寒く、閉じていれば熱くて悶々とする。寒(冷えると)では飲食が衰え、熱では肌肉が痩せる。それ故に感覚がマヒして食べられなくなりそれを寒熱(悪寒発熱)と言います。
風邪は陽明経を通じて胃に入り、上に上がると目に入る。太っていると外に排泄されず熱中となって目が黄色くなる。痩せている人は陽気が寒とともに外に排泄され寒中となって涙が出る。風邪が太陽経(膀胱経)脈に入ると背兪穴(五臓六腑のツボ)から侵入して肌肉の間に散らばり衛気を通さなくなる。故に肌肉が腫れてデキモノとなる。癘者は栄気が熱を帯びて清らかでなく鼻柱が崩れて色が悪くなり皮膚が潰瘍になる。これは風寒の邪気が去らないためで癘風(ハンセン氏病)と言う。」

以春甲乙傷於風者為肝風。以夏丙丁傷於風者為心風。以季夏戊己傷於邪者為脾風。以秋庚辛中於邪者為肺風。以冬壬癸中於邪者為腎風。
風中五蔵六府之兪、亦為蔵府之風。各入其門戸所中、則為偏風。
風気循風府而上、則為脳風。風入係頭、則為目風、眼寒。飲酒中風、則為漏風。入房汗出中風、則為内風。新沐中風、則為首風、久風入中、則為腸風飱泄。外在腠理、則為泄風。故風者、百病之長也。至其変化、乃為他病也。無常方。然致有風気也。

「春の甲乙日に風邪に傷つけば肝風となる、夏の丙丁日に風邪に傷つけば心風となる、盛夏の戊己日に傷つけば脾風となる、秋の庚辛日に風邪に中れば肺風となる、冬の壬癸日に中れば腎風となる。
五臓六腑の背兪穴が風邪に中れば、それもまた臓腑の風病となる。その門戸に中れば偏風(半身不随)となる。
風邪が風府から脳に入れば脳風となる。頭に入ると目風となり目が冷える。飲酒して風邪に中れば漏風となり、房事で汗をかき風邪に中ると内風となり、髪を洗ってすぐに風に中ると首風となる。風邪に中って長引くと腸風(下血や切れ痔など)や飱泄(下痢)となり、腠理にあれば泄風となる。故に風邪は百病の長であり、さまざまに変化して、他の疾患を引き起こす。これは常に一定ではないが、すべて風邪により発生した病である。

帝曰、五蔵風之形状不同者何。願聞其診及其病能。
黄帝「五臓風の症状はどのように違うのか?その診断と症状をお聞かせ願いたい」

岐伯曰、肺風之状、多汗悪風、色皏 然白、時咳短気。昼日則差、暮則甚、診在眉上、其色白。心風之状、多汗悪風、焦絶、善怒嚇、赤色。病甚則言不可快。診在口、其色赤。肝風之状、多汗悪風、善悲、色微蒼、嗌乾善怒、時憎女子。診在目下、其色青。脾風之状、多汗悪風、身体怠惰、四支不欲動。色薄微黄、不嗜食。診在鼻上、其色黄。腎風之状、多汗悪風、面痝 然浮腫、脊痛不能正立。其色炱、隱曲不利。診在肌上、其色黒。胃風之状、頸多汗悪風、食飲不下、鬲塞不通、腹善満。失衣則[月眞]脹、食寒則泄。診形痩而腹大。
岐伯が答えます。
肺風の症状は、汗が出て風に当たるのを嫌い、顔色は薄い白色で、時々咳をして呼吸が浅く息苦しい、日中は良いが、夜になるとひどくなる。眉間の色が白い。
心風の症状は、汗が出て風に当たるのを嫌い、舌や唇が乾燥して津液が絶え、よく怒ったり驚いたりし、顔色が赤く、ひどくなると流暢に喋れない。
口や舌が紅い。
肝風の症状は、汗が出て風に当たるのを嫌い、気が滅入ったり起こったりする、顔色は少し青く、咽喉が乾燥してイガイガし、怒りっぽく、しょっちゅう女子を憎む。両目の下が青くなる。(女子を憎むとは、肝気が衰え好色でなくなるという意味)
脾風の症状は、汗が出て風に当たるのを嫌い、身体や手足がだるくて怠惰、手足を動かしたくない、顔色は少し黄色で薄く、食欲がない。鼻先が黄色い。
腎風の症状は、汗が出て風に当たるのを嫌い、顔面がむくんでパンパンに腫れ、腰背が痛くて長く立っておれず、顔色はすすけたように黒く、精力も無くなる。頤(下あご)の上が黒い。
胃風の症状は、頸部に汗が出て風に当たるのを嫌い、飲食物が通らず、横隔膜が塞がって通じず、便秘して腹が膨満し、薄着すると腹が腫れ、冷たい物を食べると下痢をする。体が痩せていて肌が大きい。

首風之状、頭面多汗悪風、当先風一日則病甚、頭痛不可以出内。至其風日、則病少愈。漏風之状、或多汗、常不可単衣。食則汗出、甚則身汗、喘息悪風、衣常濡、口乾善渇、不能労事。泄風之状、多汗、汗出泄衣上、口中乾上漬。其風不能労事、身体尽痛則寒。
首風の症状は、頭面部に汗が出て風に当たるのを嫌い、風邪の吹く一日前に症状が悪化し頭痛がして部屋から出られないが風の吹く当日は症状が少し良くなる。
漏風の症状は、飲酒したり食事すると汗を多くかき、いつも厚着して、食事をすると汗が出て、ひどければ全身に汗をかき、喘息になって風に当たるのを嫌い、汗をかいて衣服が常に湿り、咽喉が乾燥して水を飲みたがり、肉体労働が出来ない。
泄風の症状は、汗が多く出て衣服が湿り、口の中が乾燥し、上半身は水に浸かったようになるが、そうした風邪患者は肉体労働が出来ず、身体中が痛くて冷える。」

帝曰、善。
黄帝は「わかった」と。

黄帝内経 素問 風論編

風邪に対する薬膳

 風邪による風証や風病の治療は、疏散去風と言い風邪を外表(皮膚表面)から疏散させます。
外風は軽く燥の性質もあり血分を傷つけやすいので「風の治療はまず血を治める」と言って去風散邪と同時に調血(行血・活血・涼血・養血)して血の巡りを調えることが大切です。
 調血の食材は黒ごま、やま芋、さつまいも、にんじん、ほうれん草、大豆、椎茸、昆布、海苔、紫蘇、生姜、梨、さくらんぼ、ぶどう、苦瓜、花生、烏骨鶏(鶏肉)、赤身魚(まぐろ、かつお)、赤身肉(牛肉、鹿肉)など。薬膳食材ではなつめ、龍眼、金針菜、枸杞の実、紅花 、山査子、玫瑰花、百合、蓮の実、緑豆、薄荷、桂皮など。
 去風散邪の食材は、生姜、ねぎ、シソの葉、にんにく、ニラ、ごぼう、セリ、セロリ、らっきょう、りんご、香菜、三つ葉、ミント、橘、豆鼓、わさび、花椒、白胡椒など、薬膳食材では乾姜、枸杞の実、桑の葉、白茯苓、黒きくらげ、丁香(丁子の花の蕾)、陳皮、松の実など。

 生姜と葱と鶏のお粥や炒め物枸杞子と桂皮(シナモン)のお粥やお茶香菜と白胡椒の鶏肉炒め紫蘇と山葵のサラダ桑の葉と橘の薬膳茶などで食べてみてはいかがでしょう。去風散邪と調血の食材を使っていろいろなお料理をお楽しみくださいね。

去風散邪と調血の食材

京都伝統中医学研究所の"立春におすすめの薬膳茶&薬膳食材"

1.「滋陰養血」の薬膳茶&食材

■陰を補い血を養うオススメの薬膳茶&薬膳食材は、
 薬膳茶ではなつめ薬膳茶、カラダ潤し茶、健やか茶、増血美肌茶など
 薬膳食材では新彊なつめ、金針菜、竜眼、枸杞の実、松の実、玫瑰花、桂花、茉莉花など。 
 薬膳鍋セット四物鍋スープ、手足冰凍改善鍋、冬の美肌薬膳鍋は、薬膳食材もセットになってオススメ。
肝を過剰を調えるオススメの薬膳茶&薬膳食材は、
 薬膳茶では理気明目茶、五望茶、なつめ薬膳茶なつめ竜眼茶など
 薬膳食材では黒きくらげ新彊なつめ枸杞の実竜眼金針菜紅花玫瑰花など。

2.感冒におすすめの薬膳茶&薬膳食材

辛温解表…からだを温めて邪気を追い出す
 薬膳火鍋
手足冰凍鍋からだを温める黒のお茶なつめと生姜のチャイ黒薔薇茶紅花竜眼玫瑰花桂花など
辛涼解表…余分な熱を冷まして邪気を追い出す
 理気明目茶
五望茶菊花百合など
どちらのカゼにもおすすめなのが、やはりなつめ薬膳茶です。弱った胃腸を調え、気血を補い、疲れた体を癒してくれます。

3.漢方入浴剤

 ヨモギがたっぷり入ったほっこりポカポカあたため乃湯もこの季節の養生にオススメ。ヨモギの香りが浴室中に広がり漢方の香りで癒され、ヨモギの成分が染み出たお湯にしっかり浸かってココロもカラダも温まりましょう。

中医学や漢方の知恵を毎日のくらしに活かして、体質改善や病気の予防に役立てて下さい。

薬膳茶や薬膳食材などの商品は各ショップでお買い求めいただけます。
薬膳茶&薬膳食材専門店 京都 楽楽堂 https://www.kyotorakurakudo.com
京都伝統中医学研究所 楽天市場店 https://www.rakuten.co.jp/iktcm/
京都伝統中医学研究所 ヤフー店 https://store.shopping.yahoo.co.jp/iktcm/

 中医学や漢方の知恵を毎日のくらしに活かして、体質改善や病気の予防に役立てて下さい。

次回は、2月19日「雨水」ですね。空から降ってくるものが雪から雨に変わる頃。少し寒さが緩んでくる頃ですね。
まだまだ寒い日もありますから、春捂と冬の養生もしてお過ごしください♪ 

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