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【エッセイ】彼のラーメン

自分で言うのもだが、私はグルメである。元々食いしん坊であることに加え、母が外食好きで小さい頃から美味しいものは割と食べてきた。そのおかげで、早い段階から「これは良い素材を使っている」「味に奥行きがない」などわかるようになった。

さらに、私の美食好きに拍車をかけたのは結婚だ。元夫は経営者で、美味しいものをよく知っていてたし、社長夫人という立場に恥じないように教養や知識を広げるため、高級フレンチや会員制レストランを開拓するようになった。その頃に知り合ったグルメな方とは今も付き合いがあって、数年待ちのレストランなど、普通ではなかなか行けない店に誘ってくれる。その方のおかげで2ヶ月に1回は美食会に参加し、肥えた舌を維持している。

ちなみに、グルメだから料理が上手いというわけではない。人並みに作れるが、何せせっかちなので、料理に普段から時間をかけたくない。ありものでパパッと作るほうが性に合う。映える料理なんてやってられない。味付けは上手いほうだが、食材を切るセンスはあまりない。結婚時代に二つの料理教室に通ったが、通ったからといって先生みたいに上手くならなかった。料理もセンスだと痛感している。

今の彼は私のようにグルメではないが、味付けのセンスも食材を切るセンスも、盛り付けのセンスもある。凝った料理は作らないけど、料理自体が上手い。

付き合い始めの頃、彼が作ってくれたキムチ麻婆豆腐には衝撃を受けた。食べる前は「??」だったが、食べたらびっくり。キムチには全く違和感がなく、さっぱりとした食べやすい麻婆豆腐だった。美味しさもさることながら、作ってくれたことに感動した。男性に料理を作ってもらうことがほとんどなかった私にとって、男性が料理を作るという行為自体がたまらなく嬉しかった。

土日も働く私に「なんか昼作ろっか?」と言って、彼はよくラーメンを作ってくれる。袋麺または生麺タイプの普通の即席麺だが、いつも目玉焼きかゆで卵、野菜トッピングをたくさん盛り付けて振舞ってくれる。

今日は無性にしょっぱいラーメンが食べたくて、醤油豚骨の袋麺を彼にリクエストした。

彼には、味濃いめとオーダー。トッピングは、西友で買ってきたワンタン、栄養に偏りがないように小松菜を入れてもらうようにお願いした。目玉焼きは彼のマストトッピング。今日は映えよりもボリューム感強めのビジュアルだが、味は120点。食べ応え、味ともに大満足!

世の中に美味しいラーメンはごまんとあるが、私のために彼が作ってくれたラーメンに勝るものはない。本当に美味しいと思えるのは結局のところ、気持ちの込め具合なんだと思っている。

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