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【エッセイ】嫌よ嫌よも好きのうち

旅行から帰ってきて、愛猫がますます甘えん坊になった。

ペットホテルに預けている間がよっぽど寂しかったのか、ごはんをほとんど食べなかったという。再会して抱っこしたときは背骨が以前よりも出ていて、3日間でこんなに痩せてしまうのかと驚いた。

人は寂しすぎたり、愛に枯渇したりすると、自分の殻にこもって孤立しやすい。それは猫も同じだ。旅行から帰ってきた日はかなり拗ねていて、私たちに寄り付かなかった。こんなに寂しい想いをさせやがってと、私たちが憎らしかったんだと思う。孤立は寂しさのサインなのだと、あの時に痛感した。

だから、帰ってきてからは一緒にいる時間をなるべく多くしようと意識している。それに応えるかのように、愛猫も私と彼にすり寄ってくることが増えた。

よく鳴くようにもなった。日中は在宅勤務の私にやたらと鳴いてくる。けれど、何を求めているのかわからない時もある。おやつをあげたりトイレを掃除したり、ボールで遊んだりしても鳴いてくるのだ。全ての要望を叶えただろうと思っても鳴いてくる時がある。

愛猫がどうしてほしいかわからない時、きっと寂しいのかなと思ってしまう。旅行の一件でなおさらそう思う。そこで、私は最大限の愛情表現・ラブラブチュッチュダンスを行う。

ラブラブチュッチュダンスとは、愛猫を抱え、リズミカルに左右に揺れながら「ラブラブチュッチュ〜ラブラブチュッチュ〜」と繰り返し歌い、最後に愛猫に思い切り頬ずりするというもの。私の十八番だ。以前からしているが、寂しい想いをさせたお詫びとして、今まで以上に気持ちを込めて歌い踊っている。

しかし、これに関しては愛猫の反応は以前と変わらない。私の腕の中から冷めた目つきで見つめてくる。大体半目だ。うっとりしてくれることはない。これまでなかったし、これからもきっとないだろう。

けれど、これをされなかった旅行期間中は物足りなかったんだろうと思う。まさに、嫌よ嫌よも好きのうちなのだ。そうに違いない。だから私はこれからも愛猫に最大限の愛情表現として、ラブラブチュッチュダンスを贈る。


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