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【エッセイ】足裏

彼とは家事を折半している。

私は床掃除と洗濯物、トイレ掃除を担当。彼は皿洗い、ゴミをまとめて出す係だ。洗濯物は最初から彼にお願いされた。自分で私の下着を干したら、私を女として見られなくなると。なんじゃそりゃ。

まぁいっかと思い、洗濯物は引き受けた。私はゴミ出しが面倒だから彼にお願いした。お互い嫌な家事を相手に任かせて、それぞれの役割を全うしている。家事で喧嘩することはない。我が家はいたって平和だ。


……と言いたいが、一つだけ不満がある。

彼はスリッパを履かない。


帰宅すると早々に服を脱ぎ、靴下も脱ぐ。
仕事を終えた40のおっさんの足裏は皮脂でベトベト。

そのまま歩かれるとフローリングに皮脂がつく。酸化すると落ちにくくなる。たとえ1日でも。

遠目から見ると、うっすら曇って見える。クイックルワイパーハイパーで拭いても足裏汚れはなかなか落ちない。床掃除が嫌になるのはこれ。足裏汚れは床掃除のテンションをことこどく下げる。

同棲してから1年ちょっとは言わずにいたが、今夏の猛暑は彼の足裏汚れをパワーアップさせた。さすがに我慢できなくて、スリッパを義務化した。


最初は履いてくれた。最初は。
履かなくなったのは、半月前くらいからだ。
履かなくなった原因は、これまた彼の足裏だ。

夏場の足裏は強烈な異臭を放つ。スリッパに臭いが染み込み、酸化すると不快さを増した臭いとなる。彼が履いてないときはスリッパから異臭が放たれた。異臭問題だ。ファブリーズをびしょびしょになるくらいかけたが1回では済まず、もう1回行った。2回行ってやっと鎮静化した。

しかし、こんなスリッパを誰が履きたいだろうか。いや、履きたくないだろう。彼用は二足あるから一足腐ったとしても問題ないが、この異臭問題によって彼のテンションは下がったようだ。

今はまた裸足が復活し、足裏汚れは日々生まれている。どんなに拭いても現れる。嫌がらせのようだ。さすがにムカついたので言ってやった。

「もう、スリッパ履いてよ!」

「履いてるよ!あれ、見えないの?透明のスリッパ履いてるよ!」

なんだそりゃ。裸の王様か。見えないスリッパなんていらないんだよ!!

その横で、ベランダで外遊びを楽しんできた愛猫がスタスタ歩く。足を拭くために捕まえようとしてもスルリとかわしてダッシュで逃げる。もちろん、愛猫の足跡も廊下につく。うちのメンズは自由気ままだ。


今年の夏はこんな感じで、毎日足裏汚れとの闘いだ。また明日も拭き掃除が待っている。

足裏汚れとの闘いは終わらない。

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