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読書日記 2023年8月その① 台湾漫画と書肆喫茶moriさん

少し前から、夜になると秋の虫が鳴く声が聞こえてきます。
日中はうだるような暑さが続いていますが、季節は少しずつ歩みを進めているんですね。

さて8月の読書日記その①。
台湾漫画を二作続けて読みました。

まずはこちら、『守娘』(シャオナオナオ/KADOKAWA)
(ナオナオさんの漢字がパソコンで出てこないのですが、下の画像のような文字です)

『守娘』。絵が美麗。

清朝時代の台湾を舞台にした、怪奇物語。
この時代、女性は抑圧されて自由はなく、親の言う通りに結婚し、結婚すれば夫に逆らわず、頑張って男の子を産むのが使命。
主人公の潔娘(ゲリョン)は、そんな生き方を強いられることに疑問を持ち、自由に生きたいと望んでいます。
そんな彼女が、ある日、川で見つかった女性の遺体に供養の儀式を行う女性霊媒師・繍娘(シュウリョン)に出会います。
彼女の弟子にしてほしい、と頼み込む潔娘。
そこからさまざまな事件に関わっていくことになるのですが……。

オカルト的要素とミステリ的要素どちらも入っていて、とても好みの物語でした。
そして女性たちの生き方、という意味では現代にも通じるところがあるな、と。
繍娘の隠されていた過去と正体は、悲痛の極み。
ここまで極端なことは今の世の中ではないだろうと思いつつも、似たようなことはまだまだ起きているのでは。
決して単なる「遠い昔の外国のお話」とは言い切れないな……と感じました。
そんな中、あれこれ迷ったり戸惑ったりしながらも、自分らしく力強く生きていこうとする潔娘が爽やかで魅力的でした。

続いてもう一作、『幽霊はどこへ?』(韋蘺若明/KADOKAWA)

『幽霊はどこへ?』 可愛い絵柄です。

こちらは現代の台湾が舞台。
男子高校生・秋冬(チュウドン)は、幼い頃に母親を交通事故で亡くしたのをきっかけに、幽霊が見えるように。
いつか母の幽霊に会いたいと願いつつ、自分では好きなところへ行けない幽霊たちを運んであげる「幽霊バス」となっていました。
そのことは誰にも秘密にしていたのですが、同じように幽霊が見える同級生女子・晶晶(ジンジン)にバレてしまいます。
そこに、記憶喪失のおじさん幽霊・鳳(フォン)や、犬の幽霊・ラギ、そのほか同級生たちも加わってきて、ドタバタな物語が展開していきます。
幽霊モノではあるのですが恐さはほとんどなく、キャラクターがみんな個性的で(犬のラギが特に可愛い)、お話も楽しくてグイグイ引き込まれてしまいました。
といっても、幽霊モノ=人の生き死にに関わるお話。
やはり深刻なエピソードもありますし、ラストでは思わず涙してしまうところも……。
良き漫画でした。

ところで、この二作は両方とも、ブックカフェ「書肆喫茶mori」さんにて購入しました。
大阪は谷町六丁目にある、海外漫画専門のブックカフェです。

路地裏に現れる隠れ家的お店。これはちょっと昔の写真。オープン当初かな?

このお店に行くようになるまで、海外漫画やバンドデシネは全く未知の世界でした。
が、店主さんにオススメしてもらって色々読むうちに、だんだんとその魅力に開眼していまいりまして。
特に今は台湾漫画が好きです。
と言っても、まだそんなにたくさん読んではいないのですが……。

今、ほかに手元にあるのは、
こちら、『綺譚花物語』(星期一回収日、原作・楊双子)『緑の歌』(高妍)

『綺譚花物語』
『緑の歌』

『綺譚花物語』は日本統治下時代の台湾が舞台。
『守娘』からは少し時代が下っていますが、まだまだ女性には自由がない。
そんな中での、少女たちの交情や恋心が繊細に描かれています。
幽霊が現れたり台湾の神様が現れたりと、不思議な世界と現実世界とが自然な感じで融合しているのも魅力的。
短編4編を収録しており、最後の1編だけ現代物でした。
台湾では現在、同性婚が可能となっています。
そうした時代の変化も背景にしての、女性同士の恋の始まりの物語。
この1編で本が締めくくられるのはとても良かったなと感じました。

『緑の歌』は現代物で、青春物語ですね。
初々しすぎるくらいに初々しい主人公が可愛らしいです。
夢に向かって努力したり、ほのかな恋をしたり。
思わず応援したくなっちゃいます。
背景の本棚に村上春樹の本が描き込まれていたり、といった小ネタ発見も楽しい。

そう、この『緑の歌』の作者さんもそうですが、台湾の漫画は、日本の文化に影響を受けている漫画家さんが多いそうで。
そのためか、ほかの文化圏の海外漫画より、日本の読者にもとっつきやすい気がします。
でもやはり、日本の漫画とはテイストや雰囲気がちょっと違う。
そんな微妙なズレみたいなものが、なんだか面白いです。

また、『守娘』や『綺譚花物語』のように、台湾独自の信仰や習俗を扱っている作品は、民俗学好きとしても、とても興味深い。
加えて、『綺譚花物語』では、日本と台湾の歴史的関係を考えさせられる部分もありました。
奥深い台湾漫画の魅力、これからも探求していきたいな、と思っています。

ちなみに、書肆喫茶moriさんにはそのほかの海外漫画もたくさん揃っています。
古民家を改装された店内はとてもオシャレ、かつ、ずらりと漫画が並んでいる本棚は実に見ごたえが。

フード類やドリンクもとても美味です。

これも少し以前の写真ですが。ロシア風クレープのブリヌイと……ジュースの名前は忘れてしまいました…

私にとっては、行けば新しい発見があったり、おいしいお茶やスイーツでほっこりできたりと、とても大好きなお店です。
ここしばらく行けてなかったのですが、最近、お店の四周年記念イベントにお邪魔してきました。

イベント特別メニューや、ほかのお客様からの差し入れワイン。

イベント用に用意してくださったお料理もおいしかったですし、店主さんの海外漫画や映画のあれこれトークもとても楽しかったです。
また次回は、ゆっくり漫画を読みに訪れたいなあと思いました。

海外漫画なんて興味ないな~、という方も、もし谷六方面へ行かれる機会があればぜひどうぞ。
私のように、海外漫画にハマっていってしまうかも(笑)。
(了)







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